先進医療特約とは?必要性・メリットと検討する上での注意点

医療保険やがん保険の特約として、必ず名前が挙がるのが「先進医療特約」です。

ただし、どんな医療が対象となるのか、この特約を付けたらどんな良いことがあるのか、といったことを含め、いまいちよく分からないと思います。

この記事では、先進医療とは何か、どのくらいお金がかかるのかといったデータを紹介した上で、先進医療特約について、付けることのメリットの有無や検討する上での注意点を説明します。

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保険の教科書 編集部

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はじめに|先進医療特約とは

先進医療特約とは、「先進医療」にかかる技術料を、一定の限度額まで、全額保障してくれるものです。多くの保険会社では限度額を2,000万円に設定しています。

保険料は、年齢により多少異なりますが、だいたい月100円~300円前後と、低くなっています。

なぜこのような特約があるのでしょうか。これを付ける必要性・メリットはどれほどあるのでしょうか。そもそも「先進医療」とは何かということから説明します。

1.先進医療とは

先進医療とは、厚生労働省がその治療効果と安全性をある程度認めた新しい治療法・手術法です。

現状、健康保険適応対象ではありませんが、将来的に健康保険の対象とすることが検討されている段階のものです。

種類によっては、全国でごく限られた数か所、特殊なものになると1か所でしか受けられないものもあります。

1.1.先進医療の種類と概要

具体的な先進医療の種類とそれぞれがどんなものかについては、厚生労働省公式サイト「先進医療の各技術の概要」で確認することができます。

2020年10月1日時点で80種類あり、先進医療A(23種類)と先進医療B(57種類)に分かれています。

先進医療Aと先進医療Bの区別は以下の通りです。

「未承認の医薬品・医療機器を使うか」と、「人体への影響が懸念されるか」の組み合わせで決まります。

先進医療A

  • 未承認の医薬品・医療機器を使わない医療技術(安全性・有効性が高い)
  • 未承認の医薬品を使うが、その医薬品による人体への影響が極めて低い医療技術

先進医療B

  • 未承認の医薬品・医療機器を使う医療技術(医薬品による人体への影響が極めて低いものは除く)
  • 未承認の医薬品・医療機器を使わないが、安全性・有効性について今後も慎重な観察や評価が必要とされる医療技術

1.2.先進医療は「技術料」が全額自己負担となる

先進医療と認められた治療法は、今後、公的な医療保険の対象にするかどうかのテストをしている段階にあります。そのため、先進医療を受ける場合、「技術料」が全額自己負担となります。

では、先進医療を受けたらどの程度の額を自己負担することになるのか、入院して先進医療を受けるケースで見てみましょう。

たとえば、以下の費用が発生するものと仮定します。

  • (A)先進医療の技術料:100万円
  • (B)先進医療の技術料以外の費用(診察・検査・投薬・注射・入院など):100万円

このうち、「(B)先進医療の技術料以外の費用」は公的医療保険の対象なので、一般成人なら3割の負担となります。さらに、高額療養費制度が適用され、1ヶ月あたりの自己負担額の上限があるので、医療費の負担は大幅に軽減されます。

これに対し「(A)先進医療の技術料:100万円」は公的医療保険の対象とはならず、その全額を自己負担しなければなりません。

この例では(A)先進医療の技術料を「100万円」としましたが、決して大げさな額ではなく、種類によっては数百万円にもなる場合もあります。

1.3.先進医療を受けるには高額な費用が必要となることもある

このように、先進医療は、その技術料の全額が自己負担となってしまいます。しかも、治療の種類によっては非常に高額です。

以下、先進医療の種類(一部)と平均費用をまとめた表をご覧ください。

技術名 年間実施件数 1件あたりの平均費用(技術料) 実施医療機関数
高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術 147 ¥302,852 4
陽子線治療 1,295 ¥2,697,658 15
神経変性疾患の遺伝子診断 60 ¥20,697 5
重粒子線治療 720 ¥3,089,343 6
抗悪性腫瘍剤治療における薬剤耐性遺伝子検査 201 ¥37,900 12
家族性アルツハイマー病の遺伝子診断 8 ¥30,000 1
腹腔鏡下膀胱尿管逆流防止術 13 ¥260,800 2
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術
(※現在は先進医療から除外)
33,868 ¥678,497 883
技術名 年間実施件数 1件あたりの平均費用(技術料) 実施医療機関数
高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術 147 ¥302,852 4
陽子線治療 1,295 ¥2,697,658 15
神経変性疾患の遺伝子診断 60 ¥20,697 5
重粒子線治療 720 ¥3,089,343 6
抗悪性腫瘍剤治療における薬剤耐性遺伝子検査 201 ¥37,900 12
家族性アルツハイマー病の遺伝子診断 8 ¥30,000 1
腹腔鏡下膀胱尿管逆流防止術 13 ¥260,800 2
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術
(※現在は先進医療から除外)
33,868 ¥678,497 883

(参照元:厚生労働省「令和元年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」)

このうち、特に高額なのは「陽子線治療」・「重粒子線治療」です。いずれも有効なガンの治療法として注目されています。

一方で、治療費が低額のものもあります。たとえば、表に挙げた中で「神経変性疾患の遺伝子診断」は、平均費用が20,697円とそれほど高くありません。

また、この表には含まれていませんが、厚生労働省の資料「令和元年6月30日時点における先進医療Bに係る費用」によれば、大腸がんの治療の1つでがんの再発予防などのために行われる「術後のアスピリン経口投与療法」は、平均費用が938円ときわめて安価です。

とはいえ、紹介した陽子線治療・重粒子線治療をはじめとして、年間の実施件数が多い治療法・手術法は数十万円・数百万円という負担になることが多くなっています。

1.4.確率は低くても、誰もが先進医療を受ける可能性がある

先進医療は、基本的には、受ける可能性が低いものと言えます。

なぜなら、担当の医師が合理性・必要性を認めた場合にしか受けられませんし、実施している医療機関の数自体が限られていることが多いからです。

たとえば、上で紹介したがん治療の「陽子線治療」「重粒子線治療」の実施件数は2つ合わせても年間2,015件にすぎません。

厚生労働省がまとめた「平成29年(2017年)患者調査の概況」の「5 主な傷病の総患者数」によればがん(悪性新生物)患者の数は178.2万人なので、この数字を基に単純計算すれば、がん患者のうち「陽子線治療」または「重粒子線治療」を受ける人はだいたい900人に1人しかいないということになります。

また、先進医療全体で見ると、上述した厚生労働省の資料(「令和元年6月30日時点における先進医療Aに係る費用」「令和元年6月30日時点における先進医療Bに係る費用」)によれば、2018年7月1日~2019年6月30日の1年間に行われた先進医療の件数は39,178件です。

日本の総人口は約1億2,615万人(総務省統計局「人口推計-2019年(令和元年)9月報-」参照)なので、1年間で先進医療を受けるのは0.03%、つまり3,000人に1人もいなかった計算になります。

しかも、この数は今後さらに大きく減少することが予測されます。

なぜなら、上の表の最下段の「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」が2020年4月に先進医療から除外されたからです。

「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」は、先進医療の年間総件数39,178件のうち33,868件と、実に約86%を占めていました。

このように、先進医療を受ける確率自体は決して高くはありません。

しかし、先進医療の中には陽子線治療、重粒子線治療など、受けようとすると数百万円単位の費用がかかるものがまだあります。

それらを受ける可能性があり、かつ、その可能性に低額で備えられるならば、先進医療特約を付ける価値は十分にあるということになります。

※「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」の今後

「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」は、簡単に言えば、白内障になった場合に、眼球のレンズを性能の良いレンズに取り換えるものです。

2020年に先進医療から外された結果、扱いがどう変わったかということについて、簡単にお伝えします。

現在は、「選定医療」というものに変わりました。少々ややこしいのですが以下のような扱いです。

  • レンズの代金:全額自己負担
  • 技術料:全額自己負担
  • 手術代・入院費用:公的医療保険適用(3割負担)⇒民間の医療保険の手術給付金・入院給付金の対象

ただし、選ぶレンズの種類によっては、「自由診療」という扱いになり、技術料だけでなく手術代・入院費用も含め全額が自己負担になる場合があります。事前に確認しておく必要があります。

2.新規加入なら先進医療特約は付けるべき

以上を踏まえ、先進医療特約を付けるべきでしょうか。結論から言えば、これから医療保険やがん保険に加入するならば、付けることをおすすめします。

特約自体の保険料は低く、月100円~300円程度です。

先ほど、先進医療の技術料が高いとお伝えしたので、意外に思われるかも知れません。

なぜこれほど安いかと言うと、やはり、先進医療を受ける可能性自体が非常に低いためです。

ただし、そうは言っても、たとえばがんなどの病気になった時、万が一先進医療を受けることになっても特約で高額な技術料を負担してくれることが分かっていれば心強いでしょう。また、精神的な負担も軽減できます。

そのため先進医療特約は、医療保険やがん保険に加入するならば、付けることをおすすめします。

3.今の保険に先進医療特約が付いていない場合は?

中には、現在医療保険やがん保険を契約しているものの、先進医療特約を付けていないという方もいます。

3.1.中途付加が可能な場合

そこで、保険会社によっては、加入中の保険に先進医療特約を追加できることがあります。「中途付加」と言います。

その場合、保険料はせいぜい月100円~300円前後なので、付けることをおすすめします。

3.2.中途付加が不可な場合

では、先進医療特約を中途付加できない場合はどうすれば良いでしょうか。

その場合は、現在の医療保険やがん保険を乗り換えは慎重に考えなければなりません。

なぜなら、医療保険やがん保険は契約した年齢によって保険料が大きく変動し、場合によっては年齢が10歳上がるだけで保険料が2倍程度に跳ね上がってしまうことも珍しくありません。そのような場合、先進医療特約を付けるためだけにわざわざ保険を掛け替えるのは、合理的とは言えません。

一方、現在加入している医療保険・がん保険が10年間の定期契約でちょうど見直すタイミングであったり、先進医療特約の有無だけでなく他にも契約内容などに不足を感じていたりする場合には、掛け替えを検討しても良いと考えられます。

まとめ

医療保険やがん保険に付けられる「先進医療特約」は、先進医療にかかる技術料を、一定の限度額まで、全額保障してくれるものです。

先進医療は、技術料が国の公的医療保険の対象外で、自己負担になる治療法です。

統計上、先進医療を受ける確率自体は非常に低いのですが、誰もが受けることになる可能性があります。仮にその必要が生じた場合には技術料が全額自己負担となり、その負担は非常に高額となることが多いのです。

保険料は月100円~300円程度と非常に安価なので、万が一の際に備えて付けしておくことをおすすめします。ただし、先進医療特約を備えたいがために既存の保険を解約して掛け替える場合は、年齢がアップしたことで保険料が上がることがあるので、慎重に検討するようにしてください。

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