
先進医療と聞くと、「最先端・最高峰」の医療技術や今話題の「再生医療」などを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
先進医療は簡単にまとめると厚生労働省が定める「高度な医療技術を用いた治療」のことで健康保険等の適用が認められている技術のことです。
つまり新しい技術であっても厚生労働省が認可していなければ、先進医療の定義に当てはまりませんので、先進医療として認められません。
先進医療の中には高度の技術を要する外科療法や放射線療法、移植・再生療法などの他にも抗がん薬などの薬物療法、免疫療法などさまざまな治療法があります。
治療だけでなく、検査・診断・治療法を判断する評価においても先進医療となっている技術もあります。
今回の記事では先進医療の治療費がどれくらい掛かるのか、そしてどのような治療が受けられるのかなど見ていただくと先進医療に関することが全てわかるようになってますので是非最後までご覧ください。
1. そもそも先進医療って?
厚生労働省が定める高度な医療技術を用いた治療のことで、健康保険等の適用が検討されている技術のことをいいます。
ただし、この先進医療の治療は厚生労働大臣が定める医療施設で行われる場合に限ります。しかも、先進医療にかかる技術料は全額自己負担となってしまいます。
先進医療の治療は主にがん治療に使用される場合が多く、がん治療に関して常に新しい最新の治療技術が開発されています。
2. 進化する先進医療
先進医療は厚生労働省が認可して治療になるので、医療技術の進歩に伴い日々進化していきます。進化するに連れて先進医療を受ける人が増加しています。
下の図をご覧ください。
(参照元:厚生労働省「平成29年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告」)
1984年に「高度先進医療」及び「先進医療」が制定され、保険診療との併用が認められました。
この2つは2006年に統合され、現在の「先進医療」という名称になりました。
上記のように新しい「先進医療」が始まってから先進医療技術数にあまり大きな変動は見られませんが、実施医療機関数、先進医療に係る総額は年々増加傾向にあります。
2-1. 先進医療技術が通院で受けられる
先進医療は必ずしも入院を必要とせず、病院の外科やクリニック(診療所や医院)などで受けられるものもあります。
外科やクリニックで受けられる先進医療の例として、以下があげられます。
・歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法
・多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術
3. 先進医療は91種類ある
平成30年12月1日現在、第2項目先進医療【先進医療A】は28種類、第3項目先進医療【先進医療B】は63種類の先進医療があります。
保険診療への導入されることが決まり先進医療でなくなる技術や、さまざまな要因により保険診療への導入には適さないと評価された場合は、承認取消され、先進医療から削除される技術もあります。
もちろん、新たに承認追加される技術もあるため、承認技術は随時変動していきます。
最新の先進医療の情報は厚生労働省のホームページ「先進医療の各技術の概要」から見ることができます。
4. 先進医療の費用は?
先進医療は高額になるというのはなんとなくイメージできると思いますが、実際にどれくらいの費用が掛かるのかを詳しくお伝えしていきますのでご覧ください。
4-1. 先進医療に係る費用は全額自己負担
先進医療を受けた時の費用は、患者さんは一般の保険診療の場合と比べて「先進医療に係る費用」を多く負担することになります。
1.「先進医療に係る費用」、つまり技術料は患者自身が全額負担することになります。
この「先進医療に係る費用」は医療の種類や病院によって異なります。
2.「先進医療に係る費用」以外の通常の治療と共通する部分、すなわち「診察・検査・投薬・入院料等」の
費用は一般の保険診療と同様に扱われます。
●(例)総医療費が100万円、うち先進医療に係る費用(技術料)が20万円だった場合(70際未満の一般所得者の例)
4-2. 先進医療の技術料は?
先進医療は91種類(平成30年12月1日現在)ありますが、代表的な技術料をお伝えしていきます。
先進医療の技術料は以下のようになります。
(参照元:厚生労働省「平成29年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告」)
がん治療で認知度が高い「陽子線治療」は平均276万円以上かかる一方で、前眼部三次元画像解析は平均約3,500円と高額な医療費でないことがわかります。
5. 先進医療はどのくらいの人が受けているの?
TOP5:実施件数が最も多い先進医療は?
(参照元:厚生労働省「平成29年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告」)
5-1. 先進医療で実施件数が最も多いのは「白内障治療」
先進医療でよく知られているのが、がん治療の「重粒子線治療」や「陽子線治療」ですね。
この2つの実施件数はあわせて年間約4,000件程で治療費用は300万円程度かかります。
しかしながら先進医療実施件数として最も多いのが、白内障治療で実施される「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」です。
年間の実施件数は約4000件程で、費用の平均は約60万円ほどです。
5-2. 白内障と老眼を同時に治療!「多焦点眼内レンズ」
ではこの「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」とはどのようなものなのでしょうか。
この先進医療が行われるシーンとしては白内障の手術です。
白内障の手術は、濁った水晶体を超音波で砕いて取り出し、人工のレンズ(眼内レンズ)を入れるという方法が用いられています。
そこで使われる眼内レンズは2種類あります。
1. 単焦点眼内レンズ(標準的な治療法として用いられている)
2. 多焦点眼内レンズ
このレンズが要になります。
2種類のレンズの特徴を簡単にまとめてみました。
5-2-1. 単焦点眼内レンズ
この「単焦点眼内レンズ」は文字通り遠方か近方のどちらか1点のみにしか焦点が合わないというものです。
遠方に焦点を合わせると、老眼ではない患者さんでも白内障治療を受けた後は、近くを見るために老眼鏡が必要になります。
つまり、手術後急に不便な生活を強いられてしまうこともあります。
5-2-2. 多焦点眼内レンズ
「単焦点眼内レンズ」に比べ「多焦点眼内レンズ」では、遠方と近方の両方に焦点を合わせることが可能です。
つまり、多焦点眼内レンズによる白内障治療を受けることで、結果的に老眼も治すことができます。
若い人が糖尿病などの合併症により、白内障になってしまった場合、それまではどの距離もピントを合わせて見ることができたのに、手術後は老眼になってしまい、急に不便な生活を強いられてしまいます。
高齢者の方はもともと老眼だったとしても、遠くのものは見えるけど、近くのものが見づらい…という困った状況がしばしばあると思います。
そんな生活の質(QOL = クオリティ・オブ・ライフ)の改善に貢献するのが多焦点眼内レンズなのです。
6. 先進医療を受けるとき3つの手順
先進医療は一般的な保険診療を受けるなかで、患者自身が希望し、かつ医師がその必要性と合理性を認めた場合に行われます。
もし先進医療を受ける際には、以下の流れになります。
6-1. 手続き
先進医療を受ける場合でも、病院にかかるときの手続きは一般の保険診療の場合と同じです。
被保険者証を窓口に提出しましょう。老人医療対象者は健康手帳も持参して一緒に窓口に提出します。
6-2. 同意書に署名を行う
先進医療を受けるときは、治療内容や必要な費用などの説明を医療機関でうけます。
説明内容について十分に理解・納得した上で同意書に署名をして治療を受けることになります。
6-3. 領収書はたいせつに保管しておく
先進医療を受けると以下の支払いが生じます。
・先進医療に係る費用
・通常の治療と共通する部分についての一部負担金
・食事についての標準負担額 など
もちろんそれぞれの金額を記載した領収書が発行されますが、この領収書は税金の医療費控除を受ける際に必要となりますので、必ず大切に保管しておいてくださいね。
7. 先進医特約は本当につけたほうがいいの?
7-1. 先進医療の実施人数はごくわずか
先ほど先進医療の年間実施件数を見てもうお気付きの方もいると思いますが、先進医療を受ける可能性は限りなく低いです。
国立がん研究センターの「2018年のがん統計予測」によれば、2018年がんと診断される患者数は約100万人。
また厚生労働省の「平成26年 患者調査の概況」によれば、がん(悪性新生物)を理由に入院・もしくは外来で治療中の患者数はあわせて約300万人です。
実施件数第5位の「※重粒子線治療」は年間1,558件で多いように見えますが、これは上記患者数の約2,000人に1人程度の割合となります。
年間実施件数が3番目に多い「※陽子線治療」(1628件)でも、上記患者数の約1,200人に1人の割合です。
以上のことから、先進医療を受ける可能性は限りなく低いと考えていいと思います。
放射線を用いてがんの病巣をピンポイントで狙いうちする治療法。
正常な細胞へのダメージを抑えながら治療することができる、最先端の治療法。
がんに対して用いる放射線治療法のひとつ。
陽子といわれるプラスの電気を帯びた粒子(水素の原子核)を用いてがん細胞を破壊します。
7-2. 保険料は60円から100円前後
先進医療特約の保険料は60円~100円前後と金額が低く設定されています。
先進医療を受ける可能性は低いですが、先進医療の治療を受けたときは高額な医療費が全額自己負担になります。
例えば「※重粒子線治療」を受けた際には約300万円もの治療費がかかります。
これから新規に医療保険やがん保険に加入するのであれば、先進医療特約をつけてもいいと思いますが、現在の保険を解約してまで加入する必要はないと思います。
7-3. 自由診療に備えられる保険もある
がん治療の選択肢を広げるという意味であれば、先進医療ではなく、「自由診療」が気になるという方もいるのではないでしょうか。
7-3-1. 自由診療とは?
健康保険等を使用せずに治療を受けることを自由診療といいます。
厚生労働省が承認していない治療や薬などを使用すると自由診療となり、治療費が全額自己負担となります。
特にがん治療の場合、未承認の抗がん剤など自由診療の治療も多くあります。
自由診療が適用になる場合は必ず医師の方から説明があります。
7-3-2. 保険診療と自由診療の違いとは?
保険診療は、健康保険が適用になる通常の治療のことで、通常自己負担は3割で高額療養費制度により、上限から超えた部分は払い戻しが受けられます。
自由診療は健康保険が適用にならず、全額自己負担になる治療で、本来健康保険が適用される治療も含め、すべて全額自己負担となります。
自由診療は特に子供が成長するまでの間や、治療のためにあらゆる手立てを尽くしたいという方には、検討する価値があると思います。
まとめ
いかがでしたか?
保険は「必ずしも加入しなければいけない」というものではありません。
備えておけば、いざというとき大きな助けとなる「お守り」です。
今回は「先進医療」をテーマにお話をさせて頂きましたが、保険に関することで分からない・相談したいことがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。