小規模企業共済で退職金を準備する5つのメリットと3つの注意点

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中小企業の経営者・役員の方が老後の生活資金を準備する手段として、小規模企業共済があります。

小規模企業共済は、中小企業の経営者・役員の方が個人で加入し積立をするものです。

ある程度の長期間きちんと掛金を支払い続けていれば、着実に、払い込んだ額以上のお金が受け取れるようになります。

また、あなたと会社の双方にとって節税になるというメリットがあります。その結果、加入せず掛金の額を単に貯蓄する場合と比べて、手持ちのお金が60%くらい増やせることもあります。

ただし、掛金を減額した場合や中途解約した場合にデメリットを被るおそれがあることも忘れてはいけません。

この記事では、小規模企業共済の5つのメリットを分かりやすく説明した上で、3つの注意点についてもお伝えします。

はじめに|小規模企業共済とは

小規模企業共済は独立行政法人:中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。なお、中小機構は他に、中小企業倒産防止共済も運営しています。

加入資格

加入資格は下図の通りです。多くの中小企業の経営者(社長・個人事業主)と役員、そして個人事業主の共同経営者をカバーしていると言えます。

加入資格

※「常時使用する従業員」には家族従業員・臨時従業員・共同経営者は含まれない

掛金の設定と増額・減額

掛金は、月1,000円~7万円の間で、500円刻みで決めることができ、増額・減額も可能です。

ただし、後でお伝えしますが、掛金の減額はデメリットが大きいので、最初から払い続けられる額にしておくことが重要です。

加入手続は簡単

加入手続は以下の通り、金融機関か委託事業団体(商工会、商工会議所、中小企業団体中央会、事業協同組合、青色申告会)を通じて簡単に行えます。

小規模企業共済加入手続

※1:「委託事業団体」は商工会、商工会議所、中小企業団体中央会、事業協同組合、青色申告会

※2:金融機関を通じて加入手続をする場合は掛金は同時に払い込む。「委託事業団体」を通じて加入手続をする場合は掛金は改めて金融機関から払い込む

1.小規模企業共済のメリット

小規模企業共済を活用する場合のメリットは以下の5つです。

  1. 個人の側で所得税の節税になる
  2. 会社の側で最大84万円の掛金を実質的に損金算入できる
  3. 契約者貸付制度を利用できる
  4. 36ヶ月(3年)以上加入していれば掛金総額より多くの共済金を受け取れる
  5. 共済金(退職金)を受け取る時の税負担が軽い

メリット1.個人の側で所得税の節税になる

掛金は経営者・役員が個人で支払うことになりますが、所得税の計算上、掛金の全額がその年の所得から控除されます。つまり、掛金の分には所得税が課税されません。

これに対し、単に預金するだけだと、毎年、所得税が引かれた額しか貯められません。

ですので、小規模企業共済に加入して掛金として払うほうが、税金が安くなる分、得をするということです。

もしあなたの年間の所得が1,000万円だとすると、月7万円(年84万円)積み立てれば、年間367,000円の節税になります。

これを30年間続けると総額11,010,000円になります。

メリット2.会社の側で最大84万円の掛金を実質的に損金算入できる

会社の場合、掛金の分をあなたの役員給与に上乗せして支給することができます。そして、それは法人税の計算上、給与として損金に算入されます。

掛金は最大で月7万円(年額84万円)で設定できます。

したがって、実質的に掛金全額を会社の損金に算入できるのと同じですので、節税の効果があります。

ただし、あくまで給与の一部ですので、社会保険料はかかります。

 メリット3.契約者貸付制度を利用できる

小規模企業共済の加入者は契約者貸付が活用できます。借入限度額は掛金の100%程度です。

また、利率は年0.9~1.5%と低く、また、めんどうな審査等はなく、すぐにお金を受け取ることができます。

メリット4.36ヶ月(3年)以上加入していれば掛金総額より多くの共済金を受け取れる

共済金(退職金)として受け取れるのは、以下の表の通り、「共済金A」「共済金B」「準共済金」の3種類です。

また、解約した場合に受け取れる解約手当金があります。

〈法人の経営者・役員〉

請求事由(法人)

〈個人事業主〉 ※共同経営者についてはこちらを参照

請求事由(個人事業)

「共済金A」「共済金B」

「共済金A」「共済金B」については、3年以上加入すると、掛金総額より多くの共済金を受け取ることができるようになります。

どれほど増えるかというのは、「基本共済金」と「付加共済金」とに分けて計算されます。

詳しい計算方法はややこしいので深入りしませんが、興味のある方はこちらをご覧ください。

もしあなたが40歳ならば、月7万円で30年間積み立てると、掛金合計は25,200,000円になります。

そして、70歳の時に退任すると、29,482,600円を「共済金B」として受け取れます。約17%増えています。

また、「メリット1」でお伝えしたように、30年間で節税できる額は11,010,000円ですので、これを足すと、40,492,600円で、掛金合計25,200,000円の約61%増ということになります。

「準共済金」

「準共済金」については、掛金と同額が受け取れます。

「解約手当金」

解約手当金は、引退や廃業などの共済金・準共済金の受取事由がないのに、途中で「やーめた」と解約することです。

240ヶ月(20年)以上加入していれば、掛金を支払った月数に応じて、掛金合計額の100%~120%の額を受け取ることができます。

なお、加入期間が239ヶ月以下の場合は、元本割れしてしまうので注意が必要です。詳しくは「注意点1」をご覧ください。

メリット5.共済金(退職金)を受け取る時の税負担が軽い

共済金の受取方法は、原則として、一度に全額を受け取れる「一時金」方式とされています。

しかし、法人が解散した場合の「共済金A」と、身体の障害・死亡・65歳以上で引退した場合の「共済金B」については「一時金」方式と「年金」方式のどちらかを選ぶことができます。また、場合によっては「一時金」方式と「年金」方式を併用することもできます。

一時金方式の場合は、退職金を受け取るのと同じなので、「退職所得」として控除を受けることができます。その結果、所得税の負担が軽くなります。

他方、年金方式の場合は、「退職所得」ではなく「雑所得」として扱われます。ただし、「公的年金等控除」を受けることができるので、結局、所得税の負担が軽くなります。

2.小規模企業共済の3つの注意点

小規模企業共済の注意点は以下の3つです。

  1. 加入後約20年経たずに解約すると掛金の全額が返ってこない
  2. 掛金を減額すると減額分は運用されず放置される
  3. 事業保障の役割が乏しい

注意点1.加入後約20年経たずに解約すると掛金の全額は返ってこない

小規模企業共済を解約した場合に返ってくるお金(解約手当金)は、最初の1年目は1円も支払われません。

また、解約手当金が掛金の100%に達するのは240ヶ月後(20年後)です。

そのため、それより前に解約すると、掛金の全額を取り返すことができません。

注意点2.掛金を減額すると減額分は運用されず放置される

掛金の減額は、所定の手続をとることにより可能です。

しかし、掛金を減額するのはおすすめできません。

どういうことかというと、減額した分は、その後全く運用されないまま放置されることになります。しかも、その分を「解約手当金」として取り返そうとしても、上に書いたとおり、加入後240ヶ月目にならないうちは、掛金総額より少ない額しか受け取れません。

つまり、掛金を減額すると、減額分について解約手当金を受け取っても、そのまま積み立てておいても、どちらも損してしまうことになるのです。

したがって、後で減額しなくて済むように、最初から無理のない掛金を設定する必要があります。

運用されないまま放置

注意点3.事業保障の役割が乏しい(法人保険との比較)

経営者・役員の退職金を準備する手段としては、小規模企業共済以外に、法人保険逓増定期保険長期平準定期保険全額損金定期保険等)を活用する方法があります。

生命保険であれば、退職金の資金を積み立てるだけでなく、あなたの身に万一のことがあった時には会社が保険金を受け取り、会社の資金にできるのです。

しかし、小規模企業共済は、経営者個人の引退後の生活資金等を積み立てる機能に特化したものです。そのため、事業保障の役割は期待できません。

まとめ

小規模企業共済は、掛金を月額1,000円~7万円の間で設定することができます。そして、3年以上加入していれば払い込んだ掛金よりも多くの額を共済金として受け取れます。

その上、あなた個人も会社も両方とも税負担を軽くすることができます。つまり、掛金支払段階では経営者・役員個人に所得税がかからない上、会社の側でも実質的に掛金の全額、年間最大84万円を会社の損金に算入したのと同じ効果を得ることができます。

しかし、加入後約20年未満で解約してしまうと掛金の全額が返ってこず、また、掛金を途中で減額すると減額分は運用されずにずっと放置されてしまいます。

そのため、掛金の額を決める段階で慎重に判断して適正な額を設定しないと、損をしてしまうおそれがあります。

また、法人保険と違って、あなたの身に万一のことがあった場合の保障の役割は期待できません。

小規模企業共済は、個人も会社も節税のメリットがあり、しかも最後まで掛金を払い続けると増えて返ってきます。なので、ぜひおすすめしたいものです。ただし、以上の注意点も理解した上で、適正な掛金額で加入するようにしましょう。

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出岡 大作

出岡 大作

行政書士資格保有。保険や税金や法律といった分野から、自然科学の分野まで、幅広い知識を持つ。また、初めての人にも平易な言葉で分かりやすく説明する文章技術に定評がある。
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