医療保険の見直しを考える時に知っておきたいこと


医療保険の見直しを考えている方に理由をうかがうと、大体2つに分かれます。
1つは、営業マンに言われるままなんとなく加入してしまったから、という理由です。
もう1つは、契約自体が古くなっており、今でも有効か、今のライフスタイルに合っているか不安に感じている、という理由です。
とはいえ、予備知識なしに見直しを行うことはおすすめできません。
この記事では、医療保険の見直しの際に知っておきたいことをまとめて紹介しています。
1.医療保険の見直しでおさえておきたいポイント
いざ医療保険を見直すと言っても、ポイントを押さえないと、正しく見直すことはできません。
ここでは、まず医療保険の現状をふまえて、見直しの際におさえておくべきポイントを解説します。
1-1.そもそも医療保険とは?
見直しにあたって、そもそも医療保険とはどんなものか簡単におさらいしておきましょう。
医療保険の基本の保障内容は、入院と手術の費用です。「入院日額●円」「手術1回●円」という形で保険金を設定します。
その上で、追加で「特約」を付ける形をとります。特約の中で、最近は「先進医療特約」を必ず付けることが多くなっています(その他の特約については後ほど改めてお伝えします)。
1-2.医療保険の必要性は乏しくなっている
このように、医療保険は基本的に入院・手術の費用をカバーするものです。しかし、実のところ、昨今医療保険の重要性自体が乏しくなっている感は否めません。
その原因として、主に次の2つが挙げられます。
- 入院期間が短期化し、治療方法が多様化している
- 公的な保険で入院費用・手術費用の大半がカバーできる
以下、1つずつ簡単に解説します。
1-2-1.入院期間が短期化し、治療方法が多様化している
以前は、重い病気の治療といえば、長期入院し、手術も複数回に及ぶことがあるのが一般的でした。そのため、主に入院費用と手術費用を保障する従来の医療保険が有効でした。
しかし、昨今では以下のように、入院期間が年々短期化しており、しかも、入院・手術以外の治療の比重が大きくなっています。
【退院患者の平均在院日数】
- 1990年:44.9日
- 1993年:41.9日
- 1996年:40.8日
- 1999年:39.3日
- 2002年:37.9日
- 2005年:37.5日
- 2008年:35.6日
- 2011年:32.8日
- 2014年:31.9日
- 2017年:29.3日
(厚生労働省「2017年 患者調査(退院患者の平均在院日数等 P.14)」)
1996年までは平均40日以上だったところ、2017年には30日以下に減っています。
現在は、日帰りもしくは数日の短期入院で帰宅し、在宅での治療を続けるといったケースも珍しくありません。
また、手術以外の治療方法が選択されるケースも多くなっています。
このような現状では、入院費用と手術費用の保障がメインとなる従来の医療保険は、時代に合わなくなってきています。
1-2-2.公的な保険で入院費用・手術費用の大半がカバーできる
しかも、入院費用と手術費用は、公的な医療保険で大部分をカバーしてもらうことができます。
というのは、まず、医療費の負担は3割に抑えられています。
また、「高額療養費制度」によって、以下のように1ヶ月あたりの医療費の上限が抑えられています。
【70歳未満の場合/平成27年1月診療分から】
| 所得区分 | 自己負担限度額 | 多数該当 |
| ①区分ア (標準報酬月額83万円以上の方) (報酬月額81万円以上の方) |
252,600円+(総医療費-842,000円)×1% | 140,100円 |
| ②区分イ (標準報酬月額53万円~79万円の方) (報酬月額51万5千円以上~81万円未満の方) |
167,400円+(総医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
| ③区分ウ (標準報酬月額28万円~50万円の方) (報酬月額27万円以上~51万5千円未満の方) |
80,100円+(総医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
| ④区分エ (標準報酬月額26万円以下の方) (報酬月額27万円未満の方) |
57,600円 | 44,400円 |
| ⑤区分オ(低所得者) (被保険者が市区町村民税の非課税者等) |
35,400円 | 24,600円 |
| 所得区分 | 自己負担限度額 | 多数該当 |
| ①区分ア (標準報酬月額83万円以上の方) (報酬月額81万円以上の方) |
252,600円+(総医療費-842,000円)×1% | 140,100円 |
| ②区分イ (標準報酬月額53万円~79万円の方) (報酬月額51万5千円以上~81万円未満の方) |
167,400円+(総医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
| ③区分ウ (標準報酬月額28万円~50万円の方) (報酬月額27万円以上~51万5千円未満の方) |
80,100円+(総医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
| ④区分エ (標準報酬月額26万円以下の方) (報酬月額27万円未満の方) |
57,600円 | 44,400円 |
| ⑤区分オ(低所得者) (被保険者が市区町村民税の非課税者等) |
35,400円 | 24,600円 |
(参照元:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」)
この表を見ると、たとえば、標準報酬月額が月額28~50万円の世帯なら、毎月の医療費は「80,100円+(総医療費-267,000円)×1%」の範囲内で収まります。
仮に医療費が100万円かかったとしても、自己負担額は87,430円ですむ計算です。
そのため、民間の医療保険に加入しなくても、経済的に困窮してしまう事態に陥る可能性は高くありません。
2.医療保険はどのように見直すべきか
このように、入院費用と手術費用を保障する従来の医療保険は、優先度が低いと言わざるを得ません。
では、医療保険はどのように見直すのがよいのでしょうか。方向性としては、以下の2つです。
- より優先順位の高い保険へ切り替える
- 特約で保障を充実させる
以下、1つずつ簡単に解説します。
見直しの方向1|より優先順位の高い保険へ切り替える
まず、より優先度の高い保険へ切り替えるという方法です。
医療保険がカバーするリスクよりも大きなリスクに備えた保険を選ぶのです。例として3つの保険を紹介します。
通院での治療が長引く可能性があるがんに備える「がん保険」
国立がん研究センターの「最新がん統計」によれば、生涯でがんになる確率は「2人に1人」に及ぶとのことです。
そんな中、がんになると入院や手術でなく、通院での抗がん剤・放射線治療が長期化するケースが多くなっています。
入院・手術に備える医療保険ではこの費用を賄えない上に、長期化すれば高額療養費制度があったとしても、自己負担は決して小さくありません。
また最近では、がん治療のため公的な医療保険がきかない「自由診療」を選択する人も増えています。
最近のがん保険では、発生した医療費を全てカバーするタイプや、がんと診断された場合に使い道が限定されない一時金を支払うタイプなどがあり、これらのリスクに備えることができます。
詳しくは「がん保険の必要性を60歳より前と後に分けて考える」をご覧ください。
働けない間の収入の一部をカバーする「就業不能保険」と「所得補償保険」
重い病気になった場合、入院しているか否かに関わらず経済的に困るのは、働けなくなって収入が途絶えてしまうケースです。
会社員・公務員であれば、病気等で働けなくなると報酬の約2/3にあたる傷病手当金を1年半の間受け取れる傷病手当金の制度がありますが、その後の公的保障は最低限の障害年金しかありません。
また、自営業者・個人事業主は、傷病手当金のような制度もありません。
就業不能保険と所得補償保険は、いずれも、働けなくなった場合に毎月給料のように一定額を受け取れて、収入の一部を保障してくれる保険です。
ただし、以下の違いがあります。
- 就業不能保険:長期にわたり仕事への復帰自体が困難な状態に陥ってしまった場合
- 所得補償保険:一時的にドクターストップがかかって働けない状態になった場合
なので、会社員・公務員であれば就業不能保険に加入し、自営業者・個人事業主であれば就業不能保険と所得補償保険の両方に加入することをおすすめします。
なお、両者の違いについて詳しくは「収入保障保険と所得補償保険・就業不能保険の違いと使い分け」をご覧ください。
介護が必要になったときに備える「介護・認知症保険」
内閣府の「令和元年版高齢社会白書」によれば、日常生活で家族などの助けを必要とする要介護者は、65歳~74歳までは2.9%であるのに比べ、75歳では23.3%に上昇するとのことです。
少子高齢化が進む昨今、介護が必要になったり認知症になったりすると、家族に対して大きな経済的負担を強いてしまう可能性もあり得ます。
介護・認知症保険には、一定の介護状態になった時や認知症と診断された時に、まとまった金額の一時金を受け取れるものや、「年●万円」という年金形式でお金を受け取れるものがあります。
見直しの方向2|特約で保障を充実させる
医療保険の中には、医療保険より優先すべき保険を特約として追加できるタイプがあります。
このタイプの医療保険では、単体で1つ1つの保険を契約するより安く保障を備えられることもあり、注目したいところです。
医療保険を見直す際には、特約がどのくらい充実しているかもチェックするとよいでしょう。
以下、一例としてこのタイプに該当するA社の医療保険の契約例を紹介します。
- 契約者:40歳男性
- 入院給付金:3,000円/日(10日目までは一律3万円)
- 手術給付金:3万円(入院中)、1.5万円(外来)
- 先進医療特約:あり
- がん診断一時金:100万円(1年に1回限度、2回目以降は入院が条件)
- 終身介護保障特約:終身年金36万円、認知症介護一時金100万円
- 保険料:5,690円/月
この例では、入院給付金が3,000円/日、手術給付金が3万円(入院中)・1.5万円(外来)と低く抑えています。
その代わりに、特約を充実させています。
まず、がんと診断された際には、「がん診断給付金」として100万円を受け取れます。
次に、「終身介護保障特約」があり、要介護2と認定されると36万円/年の年金を一生涯受け取ることができます。また、要介護2でかつ認知症であればさらに100万円の一時金を受け取れます。
このように、医療保険の特約を充実させる方向性もあります。
まとめ
入院期間の短期化や治療の多様化によって、入院と手術の費用の保障がメインの従来の医療保険は、時代に合わなくなっている感は否めません。
また、入院と手術の費用であれば、公的保険によってその大半をカバーしてもらうことができます。
医療保険の見直しの際は、より重要度の高いがん保険などへの切り替えを検討するか、あるいは、医療保険を選ぶにしても、重要度の高い保障を特約として付けることをおすすめします。



