履行保証保険とは?補償内容に関する基礎知識
- 2022年4月28日更新
公共工事を受注し、行う時は、『履行保証保険』に加入することが多いでしょう。ただ、どんな保険なのか、名前からはなかなかイメージしにくいのではないでしょうか。
履行保証保険とは、公共工事を受注した業者のための保険で、工事をきちんと履行できなかった場合に、注文者(国・地方公共団体)に発生する損害を代わりにカバーしてもらえる保険です。
公共工事は、期日までに履行しなかった際に国民・住民に迷惑がかかります。
たとえば、水道等のライフラインや、堤防等の防災のための施設の工事の工期が遅れた場合を思い浮かべてください。最悪の場合、市民生活の安全が脅かされます。
したがって、このリスクを代替してくれる履行保証保険は、とても重要な存在なのです。
この記事では、履行保証保険の補償内容と加入上の注意点について、ポイントを押さえて分かりやすく説明します。
公共工事に関わる可能性がある人は、必要な知識ですので、是非、最後までお読みになってお役立てください。
保険の教科書 編集部
最新記事 by 保険の教科書 編集部 (全て見る)
- 小規模企業共済の掛金の増額と減額まとめ【減額時のデメリットに注意】 - 2023年5月26日
- 加入前に知っておくべき!医療保険のしくみとは - 2023年4月7日
- 老後の仕事|幸せな老後を送るために準備するべきこと - 2023年3月10日
目次
1.履行保証保険とは
履行保証保険の契約者になるのは、官公庁等から公共工事を受注した業者です。
請負業者は、自身に落度があって公共工事を期日までに完成できなかった場合、注文者に対し、以下の2つのうちどちらかをしなければなりません。
- 金銭的保証
- 役務的保証
これらの言葉は小難しくて聞き慣れないと思いますが、簡単に言えば、「金銭的保証」は工事を完成させる代わりにお金を支払うという意味で、「役務的保証」は代わりに他の業者に工事を完成させるという意味です。
このうち、履行保証保険の出番は、「金銭的保証」です。
履行保証保険に加入していれば、契約保証金を支払わなければいけない状況が生じた際に、請負業者に代わって保険会社が保証金を支払ってくれるのです。
なお、履行保証保険の対象となる「被保険者」は注文者です。なぜなら、注文者の損害を担保する保険だからです。
2.履行ボンドと履行保証保険の違い
履行保証保険と似たものに、「履行ボンド」というのがあります。この2つは微妙に違うものですので、違いを簡単に説明します。
「履行ボンド」は、請負業者が工事を履行しなかった場合に、保険会社が「金銭保証」か「役務保証」のどちらかを履行してくれる制度です。
履行ボンドと履行保証保険の大きな違いは、履行保証保険は「金銭的保証」だけですが、履行ボンドなら「金銭的保証」と「役務的保証」の両方に対応できるということです。
発注者が「役務的保証」を希望した場合でも、履行ボンドなら、保険会社が代替業者を見つけて工事を履行させるということです。
どちらを選ぶか指定するのは、通常は注文者です。したがって、請負業者は注文者にどちらを選ぶか意向を聞く必要があります。
3.保険金の支払いの方法は2種類
履行保証保険の保険金の支払い方法は、以下の2通りに分かれています。
- 予め決められた額を支払う方式(実額てん補契約)
- 実際の損害額を支払う方式(実損てん補契約)
3.1.一般的なのは「実額てん補契約」
この2つの方法のどちらを選ぶかは注文者にかかっていますが、一般的なのは、決まった額が保険金額として支払われる「実額てん補契約」です。なぜなら、この方法は面倒な計算をする必要がなく、単純明快だからです。
3.2.「実損てん補契約」
もう1つの方法の「実損てん補契約」についても一応説明しておきましょう。
これは、実際の損害額が保険金額として支払われるものです。
たとえば、5,000万円の工事が2,000万円分まで終わった状態で不履行になった場合を考えてみてください。この場合、契約上は残りの部分の代金は3,000万円です。
もしも注文者が別の業者に残りの工事を行わせて代金が3,500万円だった場合、注文者は500万円多く代金を支払うハメになったということです。これが「実際の損害額」です。
4.加入の際に記載しなければならない項目
履行保証保険に加入するためには、工事に関する契約内容に関する以下の情報を伝える必要があります。
- 工事件名(契約書に書かれているもの)
- 工事現場の住所(契約書に書かれているもの)
- 請負金額(消費税含む)
- 発注者の名前(契約者に書かれているもの)
- 発注者の住所(契約者に書かれているもの)
- 請負者の名前(契約者に書かれているもの)
- 請負者の住所(契約者に書かれているもの)
- 契約締結日
- 予定工期
また、新規で加入する場合には、引受の限度額を決めなければなりません。したがって、そのために、次の書類の提出が求められることがあります。
- 決算書の写し(直近の3期分)
- 経審結果通知書(直近の3期分)
- 工事経歴書
- 現在契約中の損害保険証券等のコピー
- 会社概要等、会社に関する資料
まとめ
公共工事は計画通りに完成させることが理想的ですが、実際には望んだ通りの形で工事が行われない可能性もあります。
そうなってしまった場合の負担をおぎなってくれる履行保証保険は、重大なリスクに対応する大事な選択肢です。
公共工事に関わることになった場合には、請負業者も注文者も、不履行による損失への対策について真剣に考える必要が出てきます。
その時に備えて、履行保証保険について理解を深めておきましょう。
履行保証保険についてお悩みの事業者様へ
【無料Ebook】損害保険の保険料を最大50%以上削減できる具体的方法
私たちは、他社にはない独自のノウハウで、数々の会社様の損害保険の保険料を削減してきました。
まず、論より証拠、以下はその事例のほんの一部です。いずれも補償内容はそのままに、保険料の大幅な削減に成功しています。
- ・不動産業(事業用火災保険) : 112万円⇒52万円(-54%)
- ・建設業(建設工事保険等) : 212万円⇒150万円(-30%)
- ・アパレル業(貨物保険) : 120万円⇒96万円(-20%)
- ・病院(賠償責任保険等) : 173万円⇒144万円(-17%)
- ・運送業(自動車保険) : 5,800万円⇒5,000万円(-14%)
この無料Ebookでは、私たちがお手伝いしたコスト削減の事例をご紹介します。
そして、業種別に、むだのない最適な保険の選び方をお伝えします。
ぜひ、今すぐダウンロードしてください。
すぐに知りたい方は、0120-957-713までお問い合わせください。
関連記事
-
火災保険の「風災」とは、台風等、風に関係した被害に対する補償です。ただ、「風災」と聞いてどんな場合がこれにあたるのか答えられる方は少ないと思います。 この記事では、火災保険の中で「風災」の補償を取り上げ、その概要や、実際どんなときに補償が発生するか、
-
火災保険は、建物だけでなく家財も補償対象になります。 ただ、どういう損害を補償してもらえるのか、どこまでの範囲の物が補償対象となるのか、いくらまで補償してもらえるのか、なかなかイメージがつかないことと思います。 そのため、火災保険に加入する際に
-
火災保険の建物評価額とは?損害を確実にカバーするのに不可欠なこと
火災保険を契約する際には、補償の対象とする建物の価値をあらわす「建物評価額」を算出する必要があります。 ただ、どのように求めればよいのかや、建物評価額からどのように保険金額を設定すればよいか知らない方が多いのではないでしょうか。 また、古い火災
-
火災保険は、最長10年までの長期契約ができます。その際、保険料はまとめて払い込むことになります。 しかし、仕事の転勤など、急な引っ越しをする必要が出てきた時に、同時に火災保険も解約しなければなりません。そういった場合、どんな手続が必要なのか、また、残
-
「火災保険の保険金で、自己負担なしで屋根修理ができる」と勧誘する業者をよく目にします。 それをきっかけに、屋根が損傷した場合に、火災保険で修理ができないか検討する方も多いようです。 結論から言うと、屋根修理の費用を火災保険でカバーできるとは限り
-
企業の福利厚生制度を手厚くすることは、従業員の勤労意欲と安心感を高めることにつながります。 それにより、生産性向上や長期の継続雇用につながるだけでなく、人材採用の強化の後押しも期待できます。 企業の福利厚生制度の1つにGLTD(団体長期障害所得
-
万が一、津波によって自宅が損害を受けた場合、その補償をしてくれるのはどのような保険でしょうか。 「津波保険」のような専用の保険があるわけではなく、地震保険のみです。しかも単体では加入できないものです。 この記事では、津波による自宅への損害を補償
-
経理処理を行う際、火災保険の保険料をどう仕訳すればよいか、迷うことがあると思います。 火災保険の保険料は、複数年契約の場合、自宅兼事務所の場合、積立型の場合等、それぞれ仕訳の方法が異なります。 この記事では、それぞれのケースにおける火災保険の保
-
2024年1月1日に発生した能登半島地震から、2か月が経とうとしています。 工場、店舗、倉庫等を保有している企業が大地震の被害に見舞われると、建物ばかりでなく、機械等の設備・什器、資材、商品等も含め、損害額は甚大なものになります。 そんな中、企
-
警視庁がまとめた「犯罪統計資料(令和2年1~12月分【確定値】」によれば、住宅に対する窃盗事件は2020年の1年間で44,093件です。日本全国で1日あたり約120件もの住宅への窃盗が発生していることになります。決して他人事ではありません。 自宅が盗