自動車保険の他車運転特約とは

友人など、他人の自動車を運転中に万が一事故を起こしてしまった場合、自動車を貸してくれた人の保険を使うことになれば、さらにその相手に迷惑をかけてしまうことになります。

そんな時に役立つのが他車運転特約です。

他車運転特約とは、他人の自動車を一時的に借り運転しているときに事故を起こしてしまった場合に、自分の自動車保険で補償を行うための特約です。

この記事では、他車運転特約について、誰が対象となるのか、どんな場合が対象となるのか、どのような補償を受けられるのか等を解説しています。

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保険の教科書 編集部

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1.他車運転特約とは

友人などから自動車を借りて運転中に事故を起こしてしまった場合、修理や事故相手への損害賠償をするのに持ち主の自動車保険を使うのは避けたいものです。

なぜなら、持ち主の自動車保険の等級がダウンし、次の更新で保険料が高くなってしまい、迷惑をかけてしまうからです。

そんな時、自分の自動車保険に他車運転特約が付いていると、自分の自動車保険を使えるので、自動車を貸してくれた友人に迷惑をかけずに済みます。

1-1.他車運転特約の対象となる自動車の種類

他車運転特約を付けることができる自動車の車種は、以下にあげる「自家用車」に限ります。

自動車保険で「自家用8車種」と呼ばれる分類にあてはまる自動車です。

  1. 自家用普通乗用車
  2. 自家用小型乗用車
  3. 自家用軽四輪乗用車
  4. 自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン超2トン以下)
  5. 自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン以下)
  6. 自家用小型貨物車
  7. 自家用軽四輪貨物車
  8. 特種用途自動車(キャンピングカー)

プライベート用に使う自動車のほとんどは、この条件に当てはまります。そして、他車運転特約は、多くの保険会社では加入時に最初からセットされています。

1-2.補償内容|自分の自動車保険と同じ

他車運転特約の補償内容は、自分で契約している自動車保険の補償内容と同じです。

たとえば、友人の自動車を破損して修理費用がかかる場合に、自分自身の自動車保険に自動車の損害に対する補償(車両保険)がついてなかった場合、修理費用は他車運転特約で補償してもらえません。

1-3.対象となる運転者の範囲

他車運転特約の対象者は、原則として、記名被保険者、配偶者、同居の親族、別居の未婚の子です。

たとえば、一人暮らしをしている大学生の息子が、同級生の自家用車を運転中に事故を起こしてしまった場合、他車運転特約を使うことができます。

ただし、保険料を安くする目的で、補償の対象を「本人限定」「本人と配偶者限定」等に設定した場合、そこから外れた家族は他車運転特約の対象外です。

1-4.対象となる自動車の範囲

他車運転特約が使えるのは、記名被保険者や記名被保険者の配偶者または同居家族以外の人が所有する自動車を運転して事故を起こしてしまった時です。

つまり、アカの他人はもちろんのこと、別居している家族の自動車を運転していて事故を起こした場合も、他車運転特約を使えるのです。

たとえば、実家へ帰省した際に、親の車を運転して事故を起こしたような場合も対象となります。

レンタカーも対象

レンタカーも他車運転特約の補償対象です。

旅行先でレンタカーを借りて運転する場合、オプションでレンタカー用の自動車保険に加入することになります。

もし、交通事故を起こしてしまったら、まずはそのオプションの自動車保険が使われることになります。しかし、交通事故の内容によっては、オプションの自動車保険で賠償額を賄いきれないことがあります。

そんな時、他車運転特約によって、レンタカーの保険で足りない分を、自分の自動車保険でカバーできるのです。

2.他車運転特約が適用されない場合

他車運転特約が適用されない場合は、主に以下のケースです。

  • 配偶者・同居家族の自動車を運転中の事故の場合
  • 「一時的」とは言えない利用の場合
  • 無断使用の場合
  • 停車中・駐車中に事故に遭った場合

以下、それぞれ説明します。

2-1.配偶者・同居家族の自動車を運転中の事故の場合

他車運転特約が適用されるのは、あくまで、他人の自動車を一時的に借りて事故を起こしてしまったときです。

配偶者・同居の家族の自動車を借りて運転している時に交通事故を起こしてしまった場合は、当然ながら他車運転特約を使うことはできません。配偶者は別居・同居を問いません。

これに対し、配偶者以外で、別居する家族の自動車を運転中に事故を起こしてしまった際には、他車運転特約を使うことができます。たとえば、先ほど挙げた、実家に帰省中に親の自動車を運転していて事故を起こした場合です。

2-2.「一時的」とは言えない利用の場合

他車運転特約が適用されるのは、「一時的に」他人の自動車を借りている際の交通事故です。

長く借り続けて乗っている場合は、自分の自動車と実質的に変わらないので、自分で自動車保険に加入するのが筋です。実際、貸主から、自分で自動車保険に加入するように指示されることが多いでしょう。

したがって、そういう自動車で事故を起こした場合は、他車運転特約は適用されません。

2-3.無断使用の場合

他車運転特約の対象となるのは、あくまで、持ち主の承諾を得て自動車を借りて運転した場合だけです。

無断使用中に事故を起こしてしまった場合には使えません。なお、この場合は窃盗罪(刑法235条)が成立する可能性があります。

2-4.停車中・駐車中に事故に遭った場合

他車運転特約が適用されるのは、他人の自動車を借りて走行中の事故です。停車中・駐車中の事故は対象外です。

停車中・駐車中とは、運転中でないという意味です。運転中に一旦停止している場合は含まれません。

たとえば、荷物を降ろすために一時的に停車している時や、高速道路のサービスエリアに駐車している時に、他の自動車にぶつけられてしまった場合は対象外です。

これに対し、信号待ちしている時や、踏切で電車の通過待ちしている時にぶつけられてしまった場合は、あくまで運転中に一旦停止しているだけなので「停車中・駐車中」とは見なされず、他車運転特約の対象になります。

3.他車運転特約を使うと保険料が高くなる

自動車保険では、交通事故を起こして保険金が支払われると、翌年度から割引率を示す等級がダウンし、次年度の保険料が上がります。

他車運転特約を使った場合も、自分の自動車で事故を起こしたのと同じと扱われ、次の更新で保険料が上がることになります。

まとめ

自動車保険の他車運転特約とは、他人の自動車を一時的に借りていて、運転中に交通事故を起こしてしまった場合、修理費用や事故の相手への損害賠償金等について、持ち主の自動車保険の代わりに、自分の自動車保険で肩代わりすることができる特約です。

「他人」とは、アカの他人と、配偶者以外の別居の家族です。

レンタカーを借りて事故を起こした場合も対象となります。そして、補償内容は、自分の自動車保険の補償内容と同じです。

また、他車運転特約を使うと、自分の自動車保険の等級がダウンし、次の更新で保険料が上がります。

このように、他車運転特約は、自動車を貸してくれた人に迷惑をかけないためのものと言えます。


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