自動車保険の勘定科目と仕訳方法を具体例付で解説

事業に使用している自動車の自動車保険については、その保険料を必要経費として計上することができます。

ただし、会計処理には様々なルールがあるので、どんな勘定科目を選んでどのように仕訳するとよいか、分かりにくいことがあります。特に、契約期間が「●年」など長期にわたる場合の処理がやや特殊になっています。

この記事では、自動車保険の仕訳方法について、種類(強制保険か任意保険か)、契約方法(期間が1年間か長期か)ごとに具体例を交えて解説しています。

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保険の教科書 編集部

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1.はじめに – 自動車保険は強制保険と任意保険の2種類がある

自動車保険には、法律で自動車所有者の加入が義務とされている強制保険(自賠責保険)と、強制保険の足りない分の補償を追加するための任意保険の2種類があります。

それぞれ仕訳の方法に若干の違いがあるので注意してください。

具体的にどの勘定項目を選び、どのように仕訳するかは、次項以降で解説します。

2.自動車保険の保険料の勘定項目は?どれに仕訳をする?

前述の通り強制保険か任意保険かで、仕訳の方法が若干異なります。

以下、それぞれの場合について解説します。

2-1.強制保険の場合

まず強制保険の勘定項目は、「損害保険料」もしくは「車両費」のどちらかとして扱えばOKです。

車両費は自動車に関する費用を全て含みますので、自動車保険の保険料も車両費として扱って良いのです。

また強制保険の保険料は加入が法律で義務付けられていること、保険期間が最長でも3年と短い上に金額も少ないことから、支出時にその全額を経費として処理することが認められています。

そのため、期間損益計算したい特別な理由がない限りは、一括で損金処理するとよいでしょう。

以下、参考までに仕訳例を記載します。

【例:3年契約の強制保険の保険料45,000円を支払った】

借方項目 金額 貸方項目 金額
損害保険料 45,000円 普通預金 45,000円

なお、一括で処理したくない場合の仕訳方法は、以下に解説する任意保険(複数年契約)の場合と同じです。

2-2.任意保険の場合

契約期間が1年か複数年かで仕訳方法が異なります。以下、それぞれで解説します。

2-2-1.契約期間が1年の場合

次に任意保険は、契約期間が1年以内であれば強制保険と同様に「損害保険料」もしくは「車両費」として仕訳を行います。

なお自動車保険は契約期間が1年なら、契約期間が翌年度にまたがったとしても、当期の経費として計上することが可能です。

このような勘定項目のことを「短期前払費用」といいます。

短期前払費用とは、一定の契約に従って向こう1年後までの間に継続的にサービスを受ける場合に、まだ提供を受けていないサービスに対して、当期のうちに前もって対価として支払った費用のことをさします。

この場合、契約を継続することがほぼ確実なので、計算処理を簡単にするため、当期の必要経費として計上できるのです。

1年間にわたる自動車保険の契約を結ぶ場合、自動車保険の費用を向こう1年分、当期に前もって支払っているので、「短期前払費用」にあたり、当期の必要経費にできます。

以下、参考までに仕訳例を記載します。

【例:1年契約の任意保険の保険料20,000円を支払った】

借方項目 金額 貸方項目 金額
損害保険料 20,000円 普通預金 20,000円

2-2-2.契約期間が複数年にまたがる場合

これに対し、複数年の契約の場合は、当期分にあたる保険料を経費計上し、翌期以降の分は「長期前払費用」として資産計上します。

「長期前払費用」とは翌期以降の費用となるものですが、現時点では費用化していないものと考え、当期はとりあえず資産として扱うものです。

ここで注意が必要なのは、同じ「前払費用」という名前でも、短期前払費用は経費として、長期前払費用は資産として計上する点です

そのため、それぞれ仕訳方法が異なりますので注意してください。

こちらも、今までと比べ多少複雑になりますが、1つ仕訳例を紹介します。

【例:5年契約の任意保険の保険料180,000円を8月に支払った。(事業年度:4月~翌3月)】

保険料は年度ごとに「期間按分」して計上します。

期間按分とは、期間ごとに均等に経費を振り分けることです。

当期分の保険料

当期の契約月数は8月~翌3月まで8ヵ月間です。

1ヵ月分の保険料は

18万円(保険料総額)÷(5年(契約期間)×12ヵ月)=3,000円

なので、その当期分(8月~翌3月の8ヵ月分)は

3,000円×8ヵ月分=2万4,000円

となります。

翌期以降の保険料

翌期以降の保険料(18万円-2万4,000円=15万6,000円)は、長期前払費用として資産計上します。

その結果、仕訳処理は以下のようになります。

借方科目 金額 貸方科目 金額
損害保険料(経費) 24,000円 普通預金 180,000円
長期前払費用(資産) 156,000円

そして、次年度以降、長期前払費用(資産)として計上した15万6,000円の中から、1年分の保険料にあたる3万6,000円(18万円÷5年=3万6,000円)を取り崩し、その期の「損害保険料」として計上していきます。

借方科目 金額 貸方科目 金額
損害保険料(経費) 36,000円 長期前払費用(資産) 36,000円

3.自家用の自動車を事業でも利用している場合は?

個人事業主の方などは、自家用の自動車を事業でも利用しているといったこともあるでしょう。この場合、支払った自動車保険の保険料の全額を必要経費として計上することはできません。

この場合、プライベート用・事業用として利用した割合はそれぞれどのくらいかを算出する「家事按分」が必要となります。

何を基準に算出するか明確なルールはありませんが、税務署に対して合理的に説明できることが必要です。

たとえば、自動車をだいたい1週間のうち半分くらい(3~4日)の割合で事業用として使っていたとして、自動車保険の保険料が20万円だったとすると、経費として計上できる金額は以下の通りです。

20万円×50%=10万円

他に、走行距離などで、家事按分する方法もあります。いずれにしろ、合理的な説明の可否が重要です。

4.自動車保険で受け取る「保険金」の勘定項目は?

自動車で何らかの事故を起こしてしまった場合などは、自動車保険から保険金を受け取ることになります。

その際の保険金は勘定項目として「雑収入」を選び、収入取引として登録することが必要です。

5【参考】自動車保険は所得控除の対象外

生命保険や個人年金の保険料は、「所得控除」の対象となることはご存知の方が多いことでしょう。

所得から保険料の額の一部が差し引かれ、支払うべき所得税が安くなります。

一方、自動車保険、火災保険等の保険料は、2006年の税制改正まで「損害保険料控除」として所得控除の対象でしたが、現在は対象から外れています(入れ替わりに2007年より地震保険について地震保険料控除が導入されています)。そのため、残念ながら、現在は、自動車保険の保険料も所得控除の対象とはなりません。

あくまで自動車を事業用に利用している場合に、保険料を必要経費として扱えるのみです。

まとめ

自動車保険の保険料については、原則として、勘定科目として「車両費」もしくは「損害保険料」を選び仕訳を行います。

ただし、加入が必須の強制保険(自賠責保険)は複数年契約であっても、保険料の全額を当期の経費として計上することが可能です。

また、任意保険(自動車保険)に関しては、複数年契約の場合、翌期以降の分は、当期は一旦資産(長期前払費用)に計上し、翌期以降、1年分ずつ経費(損害保険料)として計上していく必要があります。

なお自動車を事業用とプライベートの両方で使っている場合は、自動車保険の全額を経費として計上することはできません。家事按分を行う必要があります。


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