任意保険とは何か?これだけは知っておきたい補償内容

自動車保険の任意保険は、法律で加入が強制されている自賠責保険(強制保険)に加え、自分で補償内容を選んで任意で加入することができる保険です。

「任意」とは言いますが、安心して自動車に乗るためには任意保険が絶対に必要です。なぜなら、自賠責保険の補償範囲は狭く、保険金額も限られているためです。

ただし、任意保険の補償内容を理解して、適切な内容で加入する必要があります。

そこで今回は任意保険について、自賠責保険との違い、補償の種類や内容、保険料など、押さえておきたいことを解説します。

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保険の教科書 編集部

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1.任意保険は自賠責保険で足りない部分を補償するもの

自動車保険には、強制的に加入することになる「自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)」と、加入が自由な任意保険があります。

任意保険は、自賠責保険の足りない部分をカバーする保険です。そこで、まず自賠責保険の補償内容をご覧いただきましょう。

補償対象 支払い限度額(被害者1名あたり)
傷害による損害、治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料 120万円
後遺障害による損害、逸失利益、慰謝料 等 障害等級による(1級3,000万円~14級75万円)
ただし神経系統・精神・胸腹部臓器に著しい障害を残して常時介護が必要な場合は4,000万円(随時介護の場合は3,000万円)
死亡による損害、葬儀費、逸失利益、慰謝料(本人および遺族) 3,000万円
死亡までの傷害による損害、治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料 120万円
補償対象 支払限度額/1名
傷害による損害、治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料 120万円
後遺障害による損害、逸失利益、慰謝料 等 障害等級1級3,000万円~14級75万円
ただし、神経系統・精神・胸腹部臓器に著しい障害を残して常時介護が必要な場合は4,000万円(随時介護の場合は3,000万円)
死亡による損害、葬儀費、逸失利益、慰謝料(本人・遺族) 3,000万円
死亡までの傷害による損害、治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料 120万円

自賠責保険で補償してもらえる額には上限があり、傷害については120万円まで、死亡による損害については3,000万円まで、後遺障害について条件によっては4,000万円までです。

1.1.自賠責保険では人身事故をカバーしきれない

死亡事故を起こしてしまうと賠償金は数億円になることもありますし、傷害を負わせた場合も数千万円の損害賠償責任を負う可能性もあります。これらは自賠責保険ではカバーできません。

もちろん、自分や同乗者のケガも自賠責保険の対象外です。

1.2.物損事故は自賠責保険の対象外

また、自賠責保険は、物損についてはそもそも補償対象外です。相手の自動車等に損害を与えた場合の修理代はもちろんのこと、自分の自動車等の損害も補償されません。

しかも、物損の場合も、損害賠償の額が巨額になることがあり得ます。

たとえば、運転ミスをしてパチンコ店に突っ込んでしまった場合を考えてみましょう。

この場合、損害賠償義務を負う対象は、パチンコ店の建物自体の損害だけではありません。パチンコ店が事故によって休業しなければならなくなったら、「休業損害」と言って、営業していれば本来得られたはずの利益の額についても損害として認定されます。

なぜなら、自動車事故を起こして店舗を損壊したら、常識的に考えてそのような損害が発生すると考えられるからです。これを「相当因果関係がある」と言います。

以下の表は、近年の物損事故で加害者に高額の賠償金の支払いを命じた判決の一覧です(損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」P147参照)。

損害賠償額 裁判所 判決年月日 事故物件
2億6,135万円 神戸地裁 1994/07/19 積荷
(呉服・洋服・毛皮)
1億3,450万円 東京地裁 1966/07/17 店舗
(パチンコ店)
1億2,036万円 福岡地裁 1980/07/18 電車・線路・家屋
1億1,798万円 大阪地裁 2011/01/27 トレーラー
1億1,347万円 千葉地裁 1998/10/26 電車
6,124万円 岡山地裁 2000/06/27 積荷
4,141万円 大阪地裁 2008/05/14 積荷
3,391万円 名古屋地裁 2004/01/16 大型貨物車・積荷
3,156万円 東京地裁 2001/12/25 4階建ビル
3,052万円 東京地裁 2001/08/28 店舗
(サーフショップ)

損害賠償額 裁判所 判決年月日 事故物件
2億6,135万円 神戸地裁 1994/07/19 積荷
(呉服・洋服・毛皮)
1億3,450万円 東京地裁 1966/07/17 店舗
(パチンコ店)
1億2,036万円 福岡地裁 1980/07/18 電車・線路・家屋
1億1,798万円 大阪地裁 2011/01/27 トレーラー
1億1,347万円 千葉地裁 1998/10/26 電車
6,124万円 岡山地裁 2000/06/27 積荷
4,141万円 大阪地裁 2008/05/14 積荷
3,391万円 名古屋地裁 2004/01/16 大型貨物車・積荷
3,156万円 東京地裁 2001/12/25 4階建ビル
3,052万円 東京地裁 2001/08/28 店舗
(サーフショップ)

このように、対物事故でも1億円を上回る額の損害賠償を命じられる可能性があるのです。

任意保険に入っておかないと十分な補償を受けることができないのです。

2.任意保険の補償の種類について

任意保険の重要性が分かったところで、任意保険の補償について詳しく見ていきましょう。

任意保険の補償は、以下の3種類に分類することが可能です。

  • 他人に損害を与えた時のための賠償責任保険
  • 自分や同乗者が死傷した時のための保険
  • 自分の車を守るための車両保険

それぞれ見ていきましょう。

①他人に損害を与えた時のための賠償責任保険

対人賠償保険

対人賠償責任保険は、自動車事故によって人を死傷させた場合の損害賠償金等を補償するためのものです。自賠責保険で賄いきれなかった金額をカバーします。

次にお伝えする対物賠償保険とともに、自動車保険の最も基本的な補償で、外すことはできます。

たとえば、車どうしの衝突事故で相手方にケガ人が出た場合や、歩行者にぶつかってケガをさせた場合等に備えることができます。

対物賠償保険

他人の財産に損害を与えた場合の損害賠償金等を補償してくれます。対人賠償保険と並んで最も基本的な補償で、外すことはできません。

例えば、車どうしの衝突事故で相手方の自動車や積載物を破損させた場合や、他人の家の塀やガードレールなどに突っ込んで損壊させた場合等に備えることができます。

②自分や同乗者が死傷した時のための保険

人身傷害保険

自動車事故によって自分自身や同乗者が死傷した場合、治療費や死亡保険金等を補償してくれます。

人身傷害保険が最も役に立つのは、車どうしの事故で相手方と自分の双方に過失がある場合です。

自動車事故では、自身や同乗者のケガや後遺症について相手方に過失があれば、損害賠償金を受け取ることができます。ただし、請求できるのは相手に過失がある分の額のみです。自分の側の過失については、損害賠償を請求できません。

自分と相手方の過失がそれぞれどの程度かは「過失割合」で示されます。全体を10として、たとえば「8:2」「6:4」などとケースバイケースで決められます。

治療費等が200万円で過失割合が「自分:相手方」=「2:8」だった場合、200万円のうち自分の過失割合にあたる40万円は相手に請求できず、自己負担しなければならないのです。

人身傷害保険は、このような場合に、自分の過失割合にあたる額をカバーしてくれます。

受け取れる保険金の限度額は3,000万円が一般的ですが、無制限にすることもできます。

搭乗者傷害保険

自動車事故によって自分自身や同乗者が身体に損害を受けた場合に、決まった額の保険金が支払われます。

人身傷害保険と似ていますが、違いは保険金額です。搭乗者傷害保険は、受け取れる額が部位、症状等によってあらかじめ決まっているのです。

人身傷害保険は、事故の全貌が判明し、かつ、自分と相手方の過失割合が判明するまでは保険金の額が定まらず、受け取ることもできません。

これに対し、搭乗者傷害保険は、部位・症状等が分かれば、それに応じた一定額をすぐに受け取ることができます。

ただし、搭乗者傷害保険の補償内容は生命保険や医療保険や傷害保険等で賄えることが多く、それらの保険に加入していれば、重ねて搭乗者傷害保険を付ける必要性は低いと言えます。

詳しくは「搭乗者傷害保険とはどんな保険?人身傷害保険との違いは?」をご覧ください。

無保険車傷害特約

車どうしの事故で自分や同乗者が死傷し、相手方が任意保険に加入していなかった場合に補償を受けられる保険です。たいていは何もしなくても自動的にセットされています。

相手方が任意保険に入っていない場合でも補償が受けられるのが特徴です。

また、ひき逃げなどで加害者が特定できない場合においても補償してくれます。

自損事故傷害特約

自動的に付帯されていることが多い特約で、自損事故・単独事故で、運転者や同乗者などが死傷し、かつ、人身傷害保険の補償が受けられない場合に保険金を受け取れます。

補償範囲が人身傷害保険と大部分かぶっているので、あまり出る幕はありません。

しかし、かなり限定的な場合ですが、自損事故傷害特約でないと補償されないケースもないわけではありません。

実際にあった非常にレアな事例を紹介しましょう。

車から前方にあるバイクに乗り換えて発車しようとしたら、車のサイドブレーキをかけ忘れており、車とバイクが衝突してケガをしてしまったという事例です。この場合、人身傷害保険では補償されず、自損事故傷害特約でしか補償されません。

③自分の車を災害から守るための車両保険

車両保険は、自分の車が事故に遭ったり盗難被害に遭ったりした場合に、損害額について保険金を受け取れるものです。

車どうしの衝突事故や自損事故はもちろん、当て逃げや車両いたずら、盗難などの人災、暴風雨や積雪などの自然災害による損害も補償されます。

また、対物事故において、自身の過失割合分をカバーする目的でも使われることがあります。

たとえば、自分の車両が事故で損壊して修理代が100万円かかる場合、過失割合が「自分:相手方」=「4:6」であれば、40万円は相手に請求できないので、車両保険でカバーすることができます。

ただし、車両保険を使うと、次にお伝えする「等級」が3等級ダウンします。その結果、数年間にわたって保険料の負担が大きくなってしまうので、修理代金の額によっては車両保険を使わず自己負担した方が良いことがあります。

3.保険料は等級によって変化する

自動車保険の任意保険には、等級制度という制度があり、等級によって保険料が大きく変化します。

等級制度とは、契約者の運転安全度を20段階に区分したものです。等級が高いほど保険料の割引を受けることができます。

初めて自動車保険の契約をする場合、等級は6等級からスタートする場合が多いです。

もし既に自動車を保有しており、その自動車が契約している保険の等級が11等級以上であるなど、特殊な条件を満たせば、7等級で加入することもできます。

何事もなければ翌年には1等級上がり、事故があればその種類に応じて3等級、または1等級下がります。

等級が上がれば割引率も上がります。また、自動車を乗り換える場合や、他社の自動車保険に変更する場合や、自動車の名義を家族に変更する場合に、等級を引き継ぐことができます。

逆に、等級が下がれば割引率も下がります。そして等級が一定以下まで下がると、保険料が割引どころか「割増」になってしまいます。

3.1.「6等級」と「7等級」は細かく分かれている

自動車保険の等級の中でも、6等級と7等級は少々特殊になっています。

等級の後ろにアルファベットが付いており、アルファベットの種類によって割引率などに差があるのです。

6・7等級に付けられるアルファベットは、「A」「B」「C」「F」「G」「S」があります。

中でも、「F」は継続契約という意味であり、前年度以前から契約している上で、等級が上がって6・7等級になっている場合に付けられるものです。つまり、「6F等級」であれば、それ以前に何らかの事故を起こして等級が下がっており、そこから復活して元に戻ったということです。

これに対し「S」は純新規契約を意味しています。7S等級は「セカンドカー割引」で加入したということです。

その他のアルファベットは、運転手の年齢条件による分類となっており、年齢による割引率の変化がある場合に用意されます。

その他、等級制度には「事故有係数」「無事故係数」というルールや、事故ごとの等級の下がり方の違いなど、細かいルールがあります。

詳しくは「自動車保険の等級で知っておきたいことまとめ」をご覧ください。

まとめ

自動車保険の任意保険についてお話ししてきました。

自動車保険には強制加入の自賠責保険がありますが、その補償範囲は相手の人身に限られており、補償内容も十分とは言えません。

任意保険はそれをカバーしてくれる保険です。補償範囲は幅広く、人と物の両方に関する事故について、相手と自分の両方の損害を補償してくれます。

加入義務はありませんが、安心して自動車を運転するために必要不可欠なものと言えます。


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