自動車保険の事故有係数適用期間とは、交通事故を起こすなどして保険金を受け取ることによって、翌年度以降に保険料の割引率が下がる(あるいは割増率が上がる)期間を指します。
自動車保険では、より無事故で過ごす期間が長く、より保険金の受け取り回数が少ない人の方が、保険料が割り引いてもらえる仕組みになっているのです。
この記事では、事故有係数適用期間をはじめ、自動車保険の割引率(割増率)の基準となる等級制度の概要を簡単に解説しています。
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1.そもそも等級制度とは?
自動車保険の事故有係数適用期間を理解するためには、その前提となる等級制度について知っておく必要があります。
自動車保険の等級制度とは、契約台数が1~9台までのいわゆる「ノンフリート契約」において、交通事故歴・保険金の受給歴によって保険料の割引率・割増率が変化するシステムです。
等級制度は無事故で過ごす期間がより長く、保険金を受け取っていない人の方が、そうでない人よりも保険料の負担を低く抑えられるべきという考え方に基づいて制定されました。
契約者間で保険料の公平性を保つための制度です。
1-1.等級によって割引率・割増率は大きく変わる
それでは、自動車保険の等級によって、実際にどれぐらい割引率・割増率が変わるのでしょうか。
等級制度の割引率・割増率は保険会社によっても異なりますが、ここでは参考までにA損保の割引率・割増率を紹介します。
等級は1~20等級まであり、より数字が大きい方が割引率が高い、良い等級になります。
また「事故有」とは一定期間内に交通事故を起こし保険金を受取っているという意味です。なお、具体的な期間がどのくらいかなどは後で改めてお伝えします。
【等級制度における割引率(割増率)】
等級 |
無事故 |
事故有 |
20 |
63%割引 |
44%割引 |
19 |
55%割引 |
42%割引 |
18 |
54%割引 |
40%割引 |
17 |
53%割引 |
38%割引 |
16 |
52%割引 |
36%割引 |
15 |
51%割引 |
33%割引 |
14 |
50%割引 |
31%割引 |
13 |
49%割引 |
29%割引 |
12 |
48%割引 |
27%割引 |
11 |
47%割引 |
25%割引 |
10 |
45%割引 |
23%割引 |
9 |
43%割引 |
22%割引 |
8 |
40%割引 |
21%割引 |
7 |
30%割引 |
20%割引 |
6 |
19%割引 |
19%割引 |
5 |
13%割引 |
13%割引 |
4 |
2%割引 |
2%割引 |
3 |
12%割増 |
12%割増 |
2 |
28%割増 |
28%割増 |
1 |
64%割増 |
64%割増 |
1等級と20等級(無事故)を比較すると、割引率(割増率)の差は実に127%にも及んでいます。
この差についてもう少し分かりやすくイメージするために、割引率0%の場合の保険料を年額50,000円として、20等級(無事故/63%割引)と1等級(64%割増)の場合の差がどのくらいになるかみてみましょう。
- 20等級(無事故/63%割引)の場合:年額18,500円
- 1等級(64%割増)の場合:年額82,000円
なんと、1等級と20等級とは4倍以上の金額差が生じています。
1-2.等級が上がる要因と下がる要因
次に、等級が上がる要因と下がるる要因を解説します。
まず、初めて自動車保険を契約したら、6等級からスタートします。
そこから、1年間無事故で保険金を受取らずに過ごすと、翌年度は等級が1つ上がります。その後も同様です。
しかし、交通事故を起こしたりして保険金を受け取ると、等級が、以下の基準にしたがって下がります。
交通事故の種類 |
内容 |
翌年度に下がる等級数 |
3等級ダウン事故 |
以下に該当する交通事故を起こし、保険金を受け取った場合
- 他人を死傷させた
- 他人の物を壊した
- 自分の物を壊した
|
1回の事故につき3等級下がる |
1等級ダウン事故 |
以下に該当するケースで、保険金を受け取った場合
- 盗難
- 落書き
- 台風による損害
- 飛来物(飛び石など)との衝突など
|
1回の事故につき1等級下がる |
ノーカウント事故 |
交通事故を起こし、自分や家族が怪我をしたものの、他人に損害を与えたり乗っていた自動車が傷ついたりはしなかった場合など |
等級は下がらない(翌年度は1等級上がる) |
ご覧の通り、1回の事故で最大3等級下がります。もし、「3等級ダウン事故」を1年間に2回起こしてしまった場合には、翌年度には一挙に6等級下がるわけです。
また、飛び石や落書き被害のような、自分に非がない「1等級ダウン事故」でも、等級が下がってしまう点には注意が必要です。
「3等級ダウン事故」や「1等級ダウン事故」を起こした場合、翌年度から保険料が割増になってしまうことを考えると、損害額が少額であれば、保険を使わずに自分で支払ってしまった方がよいこともありえます。
2.等級制度をふまえ「事故有係数適用期間」とは?
等級制度がどのくらい保険料に影響するかイメージいただけたところで、「事故有係数適用期間」についてお伝えしていきます。
事故有係数適用期間とは、上の表で紹介した等級制度における割引率(割増率)のうち、「事故有」の割引率(割増率)が適用される期間をさします。
「事故有」「無事故」との間には、割引率に大きな開きがあります。
事故有係数適用期間は、3等級ダウン事故を1回起こせば3年間、1等級ダウン事故を1回起こせば1年間追加されます。上限は6年間です。
2-1.事故有係数適用期間が設けられた理由
等級制度の事故有係数適用期間や「無事故」「事故有」の区分は、2012年10月に実施された等級制度の改定の際に導入されました。
導入の理由は、自動車保険の契約者間の保険料負担をより公平にするためです。
それまでは、等級さえ同じであれば、「事故有」「事故無」関わらず割引率が変わりませんでした。
しかし「事故有」の契約者は「事故無」の契約者と比較して保険金の支払いに至る頻度が高く、結果的に「事故無」の契約者の負担が大きくなってしまっている実態がありました。
そこで、等級制度の改定によって、事故有係数適用期間や「無事故」「事故有」が導入されることになったのです。
2-2.事故有係数適用期間が変化する例
それでは実際に事故有係数適用期間がどのように変化するか、A損保の割引率をもとに見ていきましょう。
例1)10等級の年度に3等級ダウン事故を起こした場合
|
1年目 |
2年目 |
3年目 |
4年目 |
5年目 |
事故有係数
適用期間 |
0 |
3 |
2 |
1 |
0 |
等級 |
10 |
7 |
8 |
9 |
10 |
事故有の
割引率 |
23%割引 |
20%割引 |
21%割引 |
22%割引 |
23%割引 |
無事故の
割引率 |
45%割引 |
30%割引 |
40%割引 |
43%割引 |
45%割引 |
※赤字は適用される割引率を示す。
まず、10等級の年度に3等級ダウン事故を起こしてしまった場合です。
事故有係数適用期間が3年間加算され、その間は事故有の割引率が適用されることになります。
例2)10等級の年度に3等級ダウン事故を起こし、翌年度に1等級ダウン事故を起こした場合
|
1年目 |
2年目 |
3年目 |
4年目 |
5年目 |
6年目 |
事故有係数
適用期間 |
0 |
3 |
3 |
2 |
1 |
0 |
等級 |
10 |
7 |
6 |
7 |
8 |
9 |
事故有の
割引率 |
23%割引 |
20%割引 |
19%割引 |
20%割引 |
21%割引 |
23%割引 |
無事故の
割引率 |
45%割引 |
30%割引 |
19%割引 |
30%割引 |
40%割引 |
43%割引 |
※赤字は適用される割引率を示す。
ご覧の通り「3等級ダウン事故+1等級ダウン事故」で、合計4年間は「事故有」の条件の悪い割引率が適用されています。
また、等級が元の10等級に戻るまでには、6年間もかかることになります。
例3)16等級の年度に3等級ダウン事故を2回起こし、翌年度に3等級ダウン事故を1回起こした場合
|
1年目 |
2年目 |
3年目 |
4年目 |
5年目 |
6年目 |
事故有係数
適用期間 |
0 |
6 |
6 |
5 |
4 |
3 |
等級 |
16 |
10 |
7 |
8 |
9 |
10 |
事故有の
割引率 |
36%割引 |
23%割引 |
20%割引 |
21%割引 |
22%割引 |
23%割引 |
無事故の
割引率 |
52%割引 |
45%割引 |
30%割引 |
40%割引 |
43%割引 |
45%割引 |
※赤字は適用される割引率を示す。
さすがにあまりないかとは思いますが、2年間という短い期間に3等級ダウン事故を3回立て続けに起こしてしまったケースです。
事故有係数適用の上限は6年間なので、3等級ダウン事故を連続で3回起こしたとしても、7年以上にはなりません。
とはいえ、このケースでは16等級に戻るのに11年も、事故有係数適用期間が0になるまで8年もかかることになります。
無事故で過ごしたとしても、8年間も、条件の悪い割引率がずっと続くことになるのです。
2-3.【参考】あえて保険を使わない方法も検討すべき
例で紹介した通り、交通事故を起こしたり保険金を受け取ったりすると、その分だけ一定期間割引率が悪くなってしまいます。
そこで、損害額が比較的小さい事故であれば、あえて保険金を受け取らず自己負担で修理してしまう選択肢もありえます。
今後割引率の条件が悪くなることも考えると、少ない保険金を受け取っても長期的な視点で見れば損をしてしまう可能性があるからです。
実際に事故を起こしてしまった場合は、保険会社の担当者と相談して、見積もってもらってみてもよいでしょう。
3.解約しても「事故有係数適用期間」はリセットされない
交通事故を起こし、条件の悪い等級になり、事故有係数適用期間が加算された場合、「契約し直してスタート時点の6等級の状態に戻れないか」と考える方もいるでしょう。
しかし、それはできません。6等級(事故有係数適用期間:0)より悪い条件(等級:1~5等級、事故有係数適用期間:1以上)は、前契約の満期日もしくは解約日から13ヵ月間は引き継がれることになっています。
等級制度を公平に運営する目的で、日本損害保険協会を通して等級や事故有係数適用期間の情報が保険会社間で共有されているためです。
また、自動車保険の契約時には、前の契約で事故有係数適用期間がどうだったかを告知することになります。
もしも、事実と反する申告を行うと、後で保険料の差額を追加請求されるのは当然として、告知義務違反で契約を解除されることや、保険金を受け取れないこともあり得ます。
4.車両入替や名義変更の際は事故有係数適用期間が引き継がれる
自動車保険の補償対象を新しく購入した自動車に変更する車両入替、自動車保険の名義を父親から子供へ変更する名義変更の場合、事故有係数適用期間は引き継がれます。
契約の内容が変わったからといって、事故有係数適用期間がリセットされることはありません
まとめ
交通事故を起こすなどして自動車保険の保険金を受け取ると、事故有係数適用期間が加算され、翌年度から保険料が高くなります。
事故有係数適用期間と判断される期間は、3等級ダウン事故を1回起こせば3年間、1等級ダウン事故を1回起こすと1年間です。
事故有係数適用期間中かどうかで、自動車保険の保険料に大きな差が生じます。
もし、事故を起こした場合の損害賠償金や修理費用の額が少額ならば、保険金を受け取らず、自分で負担するのも1つの方法です。
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- ・アパレル業(貨物保険) : 120万円⇒96万円(-20%)
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