自動車保険の種類とそれぞれの補償内容

自動車保険には種類があります。

加入が義務付けられているタイプ(強制保険)、任意で加入するタイプ(任意保険)の区別だけでなく、補償の内容によっても分類されます。

この記事では、自動車保険の種類(強制保険+任意保険6種類)について、それぞれの補償内容や役割を解説しています。

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保険の教科書 編集部

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1.自動車保険にはどんな種類があるか

一口に自動車保険といってもそれぞれ役割が異なる保険が複数あり、以下のように分類されます。

自賠責保険
(強制保険)
相手の身体に対する補償
自動車保険
(任意保険)
相手の身体に対する補償 対人賠償保険
相手の物に対する補償 対物賠償保険
自分や搭乗者の身体に対する補償 搭乗者傷害保険
人身傷害補償保険
自損事故保険
無保険車傷害保険
自分の自動車に対する補償 車両保険

この表を見ると、自動車保険にもいろいろな役割や種類があることが分かります。

以下、それぞれの保険について簡単に解説していきます。

2.法律的に加入が義務となる「自賠責保険(強制保険)」

まず、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)です。これは、自動車損害賠償保障法という法律によって、自動車を保有する全ての人に加入が義務付けられている保険です。

万が一、加入していなかったり期限が切れていたりすると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という処罰を受けます。

さらに、運転免許証の点数が6点減点となり、一発で免停処分となってしまいます。

自賠責保険で補償するのは、事故相手が負傷したり亡くなったりした場合(対人事故)です。

相手の自動車を壊してしまった場合など、物に損害を与えた場合(対物事故)に対する補償は一切ありません。また、契約者自身の怪我や、契約者の自動車が壊れてしまった場合の補償もありません。

自賠責保険は、自動車事故の被害者の人の生命・身体という、最も必要性の高い補償に限った保険と言えるでしょう。

なお、自賠責保険の保険料は一律であり、保険会社ごとに差はありません。契約期間や自動車の種類、住む地域(離島か否か/沖縄県を除く)等によっても異なりますが、以下に一例をあげます。

【離島以外の自賠責保険の保険料例(2021年1月15日金融庁長官への届出分)】

保険期間 12ヵ月 24ヵ月 36ヶ月
自家用乗用自動車 12,700円 20,010円 27,180円
軽自動車

(検査対象車)

12,550円 19,730円 26,760円

(参照元:損害保険料率算出機構「自賠責保険基準料率表 2021年1月15日届出」)

計算してみると、1ヵ月あたり1,000円前後ぐらいで負担は非常に軽くなっています。

2-1.自賠責保険だけでは、大幅に補償が足りない可能性が高い

自賠責保険の補償は「対人」のみの補償に限られています。

しかも、補償内容は以下の通りで、実際に交通事故を起こしてしまった際には大幅に足りない可能性が高いです。

補償内容 補償額
傷害(治療費/休業補償/慰謝料)

 

最大120万円
死亡時

(逸失利益/治療費/慰謝料/葬儀費用)

最大3,000万円
後遺障害時 最大4,000万円

(参照元:国土交通省 自賠責保険ポータルサイト「自賠責保険について知ろう!」)

相手に障害が残るような怪我をさせてしまったり死亡させてしまったりした場合、その補償額は数億円の規模に上ることも稀ではありません。

自賠責保険はあくまで必要最低限の補償に限られるので、十分な補償を確保するためにも、自動車保険は必要といえます。

3.加入は任意だが必ず加入すべき「任意保険」と7種類の補償

上で述べたように、強制保険は、実際の事故においては、その賠償や損害をまかない切れない可能性が高いです。

したがって、そこをカバーする自動車保険(任意保険)への加入は必須です。そして、自動車保険には、7種類の補償内容があります。

以下、「事故の相手への損害賠償責任をカバーする保険」「自分や同乗者の治療費等をカバーする保険」「自分の自動車の損害をカバーする保険(車両保険)」に分けて説明します。

3-1.事故の相手への損害賠償責任をカバーする保険

まず、事故の相手への損害賠償責任をカバーする保険です。以下の2種類です。

3-1-1.相手を死傷させた場合の損害賠償金等の補償「対人賠償保険」

「対人賠償保険」は、事故相手の自動車の運転手・同乗者をはじめ、衝突してしまった歩行者を死傷させてしまった場合に、自賠責保険で足りない賠償額をカバーします。

対人賠償保険は、自動車保険(任意保険)で最も重要な補償です。

よく「強制保険だけでは足りない。任意保険に入らなければダメ」と言われるのは、この対人賠償責任保険に入っておかないと取り返しのつかないことになりかねないからです。

交通事故で相手に怪我を負わせてしまったり死亡させてしまったりした場合、具体的にどんな損害が発生し、賠償金はどれくらいになるでしょうか。

死亡に至らず、ケガさせた場合であっても、治療費だけでは済まないことが多いのです。なぜなら、事故が原因であると認められるあらゆる損害に対して賠償の必要が生じるからです。

損害賠償の範囲は、社会常識的に考えて、その事故が原因で発生したと評価される範囲の損害です。専門用語で「相当因果関係」といいます。

具体的に、相当因果関係が認められる損害の種類としては、以下があげられます。

自動車事故との相当因果関係が認められ賠償が認められる範囲

治療費・葬祭費はもちろんのこと、精神的な損害や将来の介護料、さらには被害者が働けず得られなかった収入(休業損害・逸失利益)まで賠償すべき範囲に含まれます。

なお、「休業損害」とは、怪我を負うなどして一時的に働けなくなり、収入を得られなかったという損害をさします。

一方の「逸失利益」とは、被害者が死亡したり後遺症が残ったりして、交通事故以後働けなくなり、収入を得られなくなる損害のことです。

一般的に、休業損害より逸失利益の方が収入を得られない期間が長くなるため、その賠償額もより高額となります。

このように、事故を起こしてしまった場合、広い範囲の損害について賠償しなければならなくなるため、その賠償額が非常に高額となり、場合によっては数億円に及ぶこともあります。

【交通事故高額賠償判決事例(人身事故)】

認定損害額 態様 裁判所 判決年月日 被害者
性別・年齢 職業
5億2,853万円 死亡 横浜地裁 2011/11/1 男・41歳 眼科・開業医
4億5,381万円 後遺 札幌地裁 2016/3/30 男・30歳 公務員
4億5,251万円 後遺 横浜地裁 2017/7/18 男・50歳 コンサルタント
4億3,961万円 後遺 鹿児島地裁 2016/12/6 女・58歳 専門学校・教諭
3億9,725万円 後遺 横浜地裁 2011/12/27 男・21歳 大学生
3億9,510万円 後遺 名古屋地裁 2011/2/18 男・20歳 大学生

(参照元:損害保険料率算出機構「自動車保険の概況 2018年度版」(P146))

このような高額な賠償金は、自賠責保険だけでは到底カバーすることができません。

そのため、追加で、任意の対人賠償責任保険に加入する必要があるのです。

対人賠償責任保険の保険金額(保険金の上限額)は無制限にして、高額な損害に備えるのが一般的です。

3-1-2.相手のモノを壊した場合の損害賠償金等の補償「対物賠償保険」

対物賠償保険は、相手の自動車等を始めとして「物」に対する賠償金等を補償するものです。自動車で店舗や家に突っ込んでしまった場合もカバーします。

相手の「物」に対する補償は、自賠責保険ではカバーされないため、補償を確保するためには対物賠償保険に加入する必要があります。

損害賠償の範囲は、上でお伝えしたように、事故と相当因果関係のある損害を広く含みます。たとえば、事故で営業できなくなった店舗の休業損害も損害賠償の範囲に含まれます。

したがって、賠償額は高額になるおそれがあるため、保険金額は一般的には「無制限」となっています。

3-2.自分や同乗者の治療費等をカバーする補償

次に、自分や同乗者の身体に関する補償です。こちらは補償が必要となるシーンなどによって、さらに4種類に分類されます。

3-2-1.補償範囲が広い「人身傷害補償保険」

交通事故の際に過失割合に関係なく、契約者や同乗者が怪我をしたり死亡したりしたときの補償を行う保険です。

たとえば交通事故で発生した契約者側の損害額が2,000万円だったとします。

この場合、契約者側にも事故を起こした落ち度があり「過失割合が2割」と判断されれば、契約者が受け取れる賠償金は、損害額から2割分が減額され、

2,000万円×(1-0.2)=1,600万円

となってしまいます。

人身傷害補償保険は、自分の過失割合にあたる400万円の補償を行ってくれるのです。

また、治療費のほか、休業損害(亡くなった場合は「逸失利益」)や精神的損害・葬祭費なども補償されます。

なお、補償内容が手厚い分、保険料が高額となり、保険金額には上限を設定するのが一般的です。

3-2-2.あらかじめ決められた保険金が支払われる「搭乗者傷害保険」

交通事故の際に自動車へ乗っていた契約者及び同乗者が怪我を負ったり死亡したりした際の補償を行う保険です。

治療のための費用や、死亡・後遺障害保険金が支払われます。

たとえば以下の通りです。

  • 入院・通院:4日以内1万円、5日以上10万円~100万円
  • 死亡・後遺障害:500万円

【人身傷害補償保険との違いは?】

搭乗者傷害保険は、契約者・同乗者が怪我・死亡した際の補償という意味では、人身傷害補償保険と同様です。では、どう違うのでしょうか。また、どちらを優先すべきということがあるのでしょうか。

まず、人身傷害補償保険は、基本的には、どのような損害でも、事故と因果関係がある限り、損害全額が補償されます(保険金額には上限が設定されています)。ただし、損害額が確定してからでないと保険金を受け取れません。

これに対し、搭乗者傷害保険は、損害額が確定するのを待たず、保険金を受け取れます。たとえば、入院・通院給付金であれば、医師の診察を受け通院・入院をした日数が5日以上となった時点で決まった額の保険金を受け取れます。

他に生命保険や医療保険や傷害保険に加入しているのであれば、搭乗者傷害保険は加入の必要性が乏しいと言えるでしょう。

人身傷害補償保険と搭乗者傷害保険の違いは「搭乗者傷害保険とはどんな保険?人身傷害保険との違いは?」でより詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

3-2-3.単独事故や相手の過失がない場合の「自損事故保険」

単独事故や相手に過失がない事故で、契約者・同乗者が死傷した際に、補償を行う保険です。

基本的には人身傷害保険と補償範囲がかぶっており、かつ保険金額も限られているので、人身傷害保険に加入していれば必要ないことが多いです。

しかし、かなり限定的な場合ですが、自損事故保険でないと補償されないケースもあります。

たとえば、実際にあった事故なのですが、自動車を降りて前方にあるバイクに乗り換えて発車しようとしたら、自動車のサイドブレーキをかけ忘れており、自動車とバイクが衝突してケガをしてしまったケースです。この場合、人身傷害保険の対象とならず、自損事故保険でしか補償されません。

3-2-4.相手から十分補償されないときのための「無保険車傷害保険」

無保険車傷害保険は、ほとんどの場合、最初から自動的にセットされています。

自動車同士の交通事故で自分または同乗者が死傷した場合、相手が自動車保険に入っていなかったり、ひき逃げなどで加害者が捕まらなかったりすると、相手から賠償金等を受け取れず、損害がきちんとカバーされない可能性があります。

無保険車傷害保険とは、このように相手側から十分に保険金が受け取れないときに補償を行う保険です。

たとえば、自動車事故で損害を受けて損害額が1億円で、過失割合が「自分:相手=3:7」だったとすると、7,000万円は相手側の賠償金でカバーすることになります。

しかし、相手が自動車保険に入っておらず資力もなかった場合、現実的に損害賠償を受けられないこともありえます。

そんな時に無保険車傷害保険が役立ちます。

3-3.自分の自動車の損害を補償する「車両保険」

交通事故等で自分の自動車が損害を受けたときに補償を受けられる保険です。自損を含む交通事故をはじめとして、いたずらによる損害、地震・噴火を除く自然災害による損害も補償の範囲に含んでいます。

なお車両保険には、交通事故から地震・噴火以外の自然災害までカバーする「一般型」のほか、交通事故による損害を補償から外した「エコノミー型」があります。

一般型を選べば安心ですが、保険料が安くなるのは「エコノミー型」です。

まとめ

自動車保険には加入が必須で対人のみの補償となる強制保険(自賠責保険)と、加入が任意の任意保険(自動車保険)があります。

強制保険は補償範囲が対人のみと狭い上に補償金額が限られるため、強制保険だけの加入にするのは非常に危険です。

任意保険へ加入し、補償を十分にそろえておくことが推奨されます。

また任意保険は、補償内容(対人・対物・車両)ごとにさらに、以下6つの保険に分類されます。

自動車保険

(任意保険)

相手の身体に対する補償 対人賠償保険
相手の物に対する補償 対物賠償保険
自分や搭乗者の身体に対する補償 搭乗者傷害保険
人身傷害補償保険
自損事故保険
無保険車傷害保険
自分の自動車に対する補償 車両保険

それぞれの補償内容をきちんと把握し、自動車保険に加入する際は補償内容を適切に設定するようにしましょう。


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