地震保険の保険料は高いのか?

東日本大震災や北海道胆振東部地震など、ここ10年で大きな地震の被害が数度発生していることもあり、地震保険への加入を考えている方も多いのではないでしょうか。

地震保険に加入する上で、どうしても気になってしまうのが保険料です。

震災に対する補償は欲しいとはいえ、保険料はなるべく抑えたいものです。

しかし、実は、地震保険は国が運営する保険であることもあり、加入する保険会社による保険料の違いは全くありません。

ただし、以下の2つの要因によって保険料が大きく変化します。

  • 保険をかける建物の構造
  • 保険をかける建物の所在地

今回は、地震保険の保険料と、それを決定する要因について、詳しく解説していきます。

1.地震保険には保険会社による違いがない

冒頭でも述べたように、地震保険には保険会社ごとの違いがありません。

なぜなら、地震保険は、国が制度を作り、運営に関わっている保険だからです。

もともと、家のリスクをカバーする火災保険には、地震に関連する災害に対する補償がありません。その結果、1923年の関東大震災や1964年の新潟地震では、火災保険は被災者の救済措置として機能しませんでした。

そのような状況から、社会的に地震に対する保険の需要が高まり、1966年に政府が地震保険を作り上げることになったのです。

つまり、民営の火災保険では日本で頻発する大地震の被害には対応しきれなかったため、政府が主導となって地震保険が誕生したということになります。

財務省のホームページには、地震保険の運営について「地震等による被災者の生活の安定に寄与することが目的」と記載されています。

過去何度も大地震の被害に見舞われている日本において、被災者の生活を支えるために必要であると国が判断した結果、地震保険が生まれたというわけです。

2.地震保険の保険料を決める要因について

地震保険の保険料には保険会社ごとの違いがありません。

しかし、保険をかける建物が地震で損壊するリスクに応じて、同じ補償内容でも保険料が変化します。

地震保険では、以下の2つの要因を基に震災による建物の損壊リスクを判断します。

  • 保険をかける建物の構造
  • 保険をかける建物の所在地

詳しく見ていきましょう。

2.1.建物の構造が丈夫なほど保険料は安くなる

損壊リスクを判断するための1つ目の要因は「保険をかける建物の構造」です。

地震保険において、建物の構造はイ構造とロ構造に分類されます。それぞれの要件は以下の通りです。

区分 分類要件
イ構造
  • 鉄骨・コンクリート造の建築物
  • 耐火建築物・準耐火建築物、省令準耐火建物の木造建築物
ロ構造
イ構造に当てはまらない木造建築物

表からも分かるように、建物の構造による分類では、一般の木造建築物とそれ以外で区分されています。

基本的に、木造建築の方が鉄骨やコンクリートで造られた建物より損壊リスクが高いです。

そのため、保険料はイ構造に分類された建物より、ロ構造に分類された建物の方が割高になっています。

2.2.建物の所在地による保険料の変化について

損壊リスクを判断するための2つ目の要因は「保険をかける建物の所在地」です。

以下の図は、政府の地震調査研究推進本部が発表した、今後30年以内に震度6弱の地震が発生する確率を示した地図となります。

これにより、地域別のリスクをある程度判断することができます。特に太平洋側における震災リスクが高いことが分かります。

そして、地震保険の保険料も、リスクの高い地域が割高になる傾向があります。

2.3.構造・地域別の地震保険料の違いを見てみよう

上記のデータを頭に入れた上で、建物の構造ごとの、都道府県別の保険料を見ていきましょう。

保険金額1,000万円の場合、1年あたりの保険料は以下のようになります。

都道府県 イ構造 ロ構造
北海道 7,800 13,500
青森県 7,800 13,500
岩手県 7,100 11,600
宮城県 10,700 19,700
秋田県 7,100 11,600
山形県 7,100 11,600
福島県 8,500 17,000
茨城県 15,500 32,000
栃木県 7,100 11,600
群馬県 7,100 11,600
埼玉県 17,800 32,000
千葉県 25,000 38,900
東京都 25,000 38,900
神奈川県 25,000 38,900
新潟県 7,800 13,500
富山県 7,100 11,600
石川県 7,100 11,600
福井県 7,100 11,600
山梨県 10,700 19,700
長野県 7,100 11,600
岐阜県 7,800 13,500
静岡県 25,000 38,900
愛知県 14,400 24,700
三重県 14,400 24,700
滋賀県 7,100 11,600
京都府 7,800 13,500
大阪府 12,600 22,400
兵庫県 7,800 13,500
奈良県 7,800 13,500
和歌山県 14,400 24,700
鳥取県 7,100 11,600
島根県 7,100 11,600
岡山県 7,100 11,600
広島県 7,100 11,600
山口県 7,100 11,600
徳島県 15,500 36,500
香川県 10,700 19,700
愛媛県 12,000 22,400
高知県 15,500 36,500
福岡県 7,100 11,600
佐賀県 7,100 11,600
長崎県 7,100 11,600
熊本県 7,100 11,600
大分県 10,700 19,700
宮崎県 10,700 19,700
鹿児島県 7,100 11,600
沖縄県 10,700 19,700

参考:地震保険制度の概要 : 財務省

まず建物の構造について見てみると、同じ地域でも、イ構造とロ構造で4,500~21,000円の差があることが分かります。

特に徳島県と高知県は、構造の違いによる金額差が大きくなっています。

次に、建物の所在地で見てみると、先に掲載した地域別の震災リスクの図で、リスクが高かった地域ほど保険料が割高になっている傾向が分かります。

大地震が発生するリスクの低い北海道とリスクの高い東京を比較してみると、保険料に3倍弱もの差があり、建物の所在地が保険料に大きな影響を及ぼしているのが一目瞭然です。

3.建物の性能によって様々な割引が受けられる

このように、地震保険の保険料は、建物の構造や所在地によって、地震保険料が大きく変化します。

ただし、地震保険には、様々な割引制度があり、条件によっては大きく保険料を抑えることができます。

地震保険の割引制度には、以下のようなものがあります。比較的新しい建物や、耐震性能が高い建物に適用されます。

割引制度 割引の説明 保険料の割引率
建築年割引(ご契約開始日が平成13年10月1日以降) 対象物件が、昭和56年6月1日以降に新築された建物である場合 10%
耐震等級割引(ご契約開始日が平成13年10月1日以降) 物件が、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に規定する日本住宅性能表示基準に定められた耐震等級か、国土交通省の定める「耐震診断による耐震等級 (構造躯体の倒壊等防止) の評価指針」に定められた耐震等級を有している場合 耐震等級1 10%
耐震等級2 30%
耐震等級3 50%
免震建築物割引 (ご契約開始日が平成19年10月1日以降) 対象物件が、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく「免震建築物」である場合 50%
耐震診断割引 (ご契約開始日が平成19年10月1日以降) 対象物件が、地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、建築基準法(昭和56年6月1日施行)における耐震基準を満たす場合 10%

特に、耐震等級が3等級に認定されている建物や、免震建築物である建物の場合は、50%もの割引を受けることができます。

3.1.契約期間の長さによる割引もある

地震保険には、建物の性能による割引の他に、長期契約の割引もあります。

基本的に、契約年数が長期であるほど割引率が高くなります。

長期契約の保険料は、1年分の保険料の額に単に年数をかけるのではなく、年数に応じた長期係数という数値をかけて計算します。

契約年数ごとの長期年数は以下の通りです。

期間 係数
2年 1.90
3年 2.80
4年 3.70
5年 4.60

例えば、1年分の地震保険料が1万円だった場合、5年契約を結べば、1年分の保険料1万円に長期係数の4.6をかけた金額である46,000円を一括で支払うことになります。

1年更新の契約で5年間加入し続けるよりも、最初から5年契約で加入したほうが、保険料を4,000円抑えることができます。

4.地震保険の保険金について

次に、地震保険の保険金についても見ていきましょう。

地震保険の保険金の上限額は時価額を基に決定されますが、必ず上限額一杯まで受け取れるわけではありません。

建物や家財の損壊具合によって、受け取れる保険金額が変化します。

損壊の具合は「全損」「大半損」「少半損」「一部損」に分類され、受け取れる保険金額は、それぞれ以下通りです。

全損 地震保険の保険金額の100%(時価額が限度)
大半損 地震保険の保険金額の60%(時価額の60%が限度)
小半損 地震保険の保険金額の30%(時価額の30%が限度)
一部損 地震保険の保険金額の5%(時価額の5%が限度)

上記より、保険金を上限額まで受け取れるのは「全損」の場合のみであることが分かります。

損壊の程度の判断基準は以下の通りです。

建物の場合
全損
  • 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の50%以上となった場合
  • 焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上となった場合
大半損
  • 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の40%以上50%未満となった場合
  • 焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満となった場合
小半損
  • 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の20%以上40%未満となった場合
  • 焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満となった場合
一部損
  • 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の3%以上20%未満となった場合
  • 建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない場合
家財の場合
全損 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の80%以上となった場合
大半損 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の60%以上80%未満となった場合
小半損 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の30%以上60%未満となった場合
一部損 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の10%以上30%未満となった場合

家財の基準がかなり抽象的で分かりにくくなっています。

実は、地震保険における家財の損害の程度の決定方法は、以下の特殊な計算方法で算出されるのです。

  • 損傷品目数/存在品目数 × 構成割合

家財は5種類に分類されており、その分類内に含まれる家財の総数を存在品目数として定めています。

このうち、地震で実際に損害を受けた家財の数を損傷品目数とし、各分類に定められた「構成割合」という数字を使って、上記の計算式により損害の程度をパーセントで算出します。

各分類と含まれる品目、構成割合は以下の通りです。

分類 代表品目 構成割合
食器陶器類 食器・陶器置物・食料品・調理器具他 5%
電気器具類 電子レンジ・パソコン・テレビ・冷蔵庫他 20%
家具類 食器棚・サイドボード・たんす・机・椅子他 10%
見回品その他 カメラ・書籍・鞄・靴・レジャー用品他 35%
寝具・衣類 衣類・寝具 30%

例えば、地震によって、「電気器具類」に該当する品物20個のうち15個が損壊したとしましょう。

この場合、損害の程度は以下の数式にて求められます。

  • 15(損傷品目数)÷20(存在品目数)×20%(構成割合)=15%

各分類の損害の程度を計算の後、合計することで、家財の損壊程度を算出することができます。

まとめ

地震保険は国が運営に関わっている公的な保険ですので、保険料の額は保険会社によって違いがありません。

ただし、保険をかける建物の構造や所在地によって、保険料が変化します。

まず、構造については、鉄骨造やコンクリート造のような丈夫な建物の方が保険料は割安です。

また、所在地については、大地震のリスクが少ないと判断されている都道府県であるほど、保険料が安くなります。

保険料が高い建物は、見方を換えれば地震による倒壊のリスクが高い建物であり、地震保険の必要性が高い建物であると判断されます。

日本における大地震が起こるリスクは高く、いつどこで発生してもおかしくありません。大地震の被害に遭ってしまった場合の当面の生活を維持する手段として、加入しておくに越したことはないと言えます。

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保険の教科書 編集部

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