建物電気的・機械的事故特約とは、火災保険の特約で、建物に付属している機械が電気的・機械的な事故によって故障・破損した際に、その損害を補償してくれるものです。
しかし、名前からだけだと、どこまでの機械を補償してもらえるのか分からず、付けるべきかどうかの判断もできません。
そこで、この記事では、建物電気的・機械的事故特約の概要について説明した上で、この特約を付けるべきか否かの判断基準も紹介します。
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1.建物電気的・機械的事故特約とは?
火災保険の建物電気的・機械的事故特約とは、電気的・機械的な事故によって、建物に付属する機械が故障・破損した際に、その損害を補償してくれる特約のことです。
それでは電気的・機械的な事故とはどういったものでしょうか。
保険会社によりますが、電気事故とは、過電流を原因としたショートなどによって機械が正常に機能しなくなる事故をさします。
また、機械的事故とは、機械の稼働中に機械が溶けたり折れたりといった事故をさします。
具体的な補償事例は以下の通りです。
- 給湯器を点火しようと操作した際に、異常点火して配線が焼き付いて故障した
- エアコンの室外機の電気部品が発火し故障した
2.どんな機械が補償の対象となっているか
建物電気的・機械的事故特約で特に間違いやすいのは、補償対象となる機械がどこまでかということです。
補償対象となるのは、簡単に言うと、建物に最初からくっついていて、取り外して持ち出すことができない機械です。
たとえば、コンセントに電源をさして使うタイプの機械は、建物電気的・機械的事故特約の補償対象ではありません。
以下に補償対象となるもの、ならないものをまとめて紹介します。
【建物電気的・機械的事故特約の補償対象】
エアコン(ビルトインタイプ)、食洗器(ビルトインタイプ)、オーブンレンジ(ビルトインタイプ)、IHコンロ(ビルトインタイプ)、給湯器、温水洗浄便座付きトイレ、換気扇、床暖房、太陽光発電機、アンテナ、自動シャッター、インターフォン、浴室乾燥機など
その他、家庭用エレベーターなどのような高額な大型の機械も補償対象とすることができますが、その分だけ保険料も上がります。
【建物電気的・機械的事故特約の補償対象にならないもの】
テレビ、掃除機、食洗器(据置型)、オーブンレンジ(据置型)、空気清浄機、パソコンなど
3.保険金はいくら受け取れるか
建物電気的・機械的事故特約で受け取れる損害保険金の額は、以下の計算式で求められます。
損害額-免責金額
まず、損害額とは、簡単に言うと、故障した機械を元通りにするのに必要な金額のことです。修理費用、もしくは修理が不可能な場合は交換費用がこれにあたります。
次に、免責金額とは、損害額のうち、自己負担する金額をさします。免責金額に設定できる金額の範囲は保険会社・商品によって異なります。
たとえば、損害額が20万円で免責金額が5万円だった場合、受け取れる損害保険金は
20万円-5万円=15万円
です。
なお、古い保険契約では、免責金額の設定ではなく「損害額が20万円以上の場合に補償を行う」といった契約になっていることもあります。
この場合、損害額が20万円未満であれば保険金を1円も受け取れません。ただし、免責金額と違って自己負担は求められないため、損害額が20万円以上であれば全額を受け取れます。
3-1.損害保険金以外の保険金
保険会社や保険商品によっては、損害保険金以外にも以下のような保険金を受け取れる場合もあります。
臨時費用保険金
機械に損害が発生した場合、その機械を修理したり買い直したりする以外にお金がかかることがあります。たとえば、真夏にエアコンが過電流によって壊れ、部屋を借りなければならなくなる場合です。
臨時費用保険金は、そういった費用を補償するための保険金です。使い道は被保険者の自由で、特に限定されていません。
残存物取片づけ費用
破損した機械を片付けるのに必要な費用を補償する保険金です。
4.補償を受けられないケース
以下のような場合、建物電気的・機械的事故特約による補償は受けられません。
メーカーの保証期間内である場合
メーカーの保証期間で、メーカーの保証によって修理ができる場合、建物電気的・機械的事故特約による補償は受けられません。
老朽化などによる故障である場合
この特約は、あくまで「電気的」「機械的な」事故による故障であると判断される場合に補償を行うものです。
補償対象の機械の故障の原因が老朽化であったり、ネズミ食いや虫食いによるものだったり、あるいは製品が認めていない修理だったりする場合には、補償の対象とはなりません。
機械設置時の不備などによる故障の場合
取付業者の不備での故障の場合、その業者が賠償するべきなので、建物電気的・機械的事故特約では保険金は支払われません。
落雷による故障の場合
落雷を原因とした過電流で故障をした場合、火災保険の「落雷」によって補償されるべき内容と判断されます。
建物電気的・機械的事故特約では補償されません。
その他、保険会社・保険商品によっては、「製品が製造日から○年以内である場合」「建物の築年数が○年以内」といった条件が付けられている場合があります。
5.【注意】契約時にしか付与できない可能性がある
保険会社・保険商品によっては、建物電気的・機械的事故特約を付けられるのが新規契約時に限られている場合があります。
その場合、後で付けたければ、契約をいったん解約し、改めて再契約する必要があります。
少しでも興味があれば、新規契約時に見積もりを取る際、特約を付けたプランと付けないプランとで保険料がいくら違うか等を見て判断することをおすすめします。
6.建物電気的・機械的事故特約の優先順位は低い
火災保険に建物電気的・機械的事故特約を付ける優先順位は低いです。なぜなら、建物電気的・機械的事故特約の出番は実際にはかなり限られるからです。
どういうことかというと、まず、機械の経年劣化による故障は補償の対象となりません。
また、「製造から○年以内の機械を補償」などの条件がつけられている場合もあります。
さらに、エアコン等の機械が「電気的・機械的事故」で故障する可能性も高くはありません。私自身、自宅にある機械が「電気的・機械的事故」で故障した経験はありません。
しかも、メーカーの保証期間内であれば、この特約の出る幕はありません。
このように建物電気的・機械的事故特約を活用する機会はそれほど多くはなく、火災保険にこの特約を付ける優先順位は低いと言えます。
ただし、補償対象となる機械、つまり、建物に最初からくっついていて、取り外して持ち出すことができない機械(エアコンやビルトインタイプのオーブンレンジ、太陽光発電システム等)が電気的・機械的事故で故障した場合、その修理費用も高額になる可能性があります。
したがって、補償対象となる機械が多い場合は、建物電気的・機械的事故特約をつけることを検討してもよいでしょう。
まとめ
建物電気的・機械的事故特約は、エアコンやビルトインタイプのオーブンレンジなどのように、建物に最初からくっついていて、取り外して持ち出すことができない機械が電気的・機械的事故により故障した場合に、その損害を補償するための火災保険の特約です。
ただし、たとえばメーカーの保証期間内の故障や経年劣化による故障が補償対象外であるなど、この特約が活躍するシーンは決して多くはないでしょう。
もし、付けるのであれば、自宅に補償対象となるような機械が多く設置されている場合です。