火災保険で支払われる保険金は、火災などにより損害を受けた自宅の建物や家財(家具・家電・衣類など)の修理費を補償する損害保険金だけではありません。
それ以外に、追加で支払われる保険金のことを総称して「費用保険金」と呼び、その中でも代表的なのが臨時費用保険金です。
臨時費用保険金とは、災害などにより火災保険の保険金を受け取ることになった際に、損害を受けた建物や家財を再建したり修理したりする費用以外にかかる、宿泊費等の費用をカバーしてくれるものです。
この記事では、火災保険の臨時費用保険金について、どのようなもので、何のために役立つのか解説しています。
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1.臨時費用保険金とは?
火災保険の「臨時費用保険金」とは、事故や災害で生じた建物や家財の損害をまかなう「損害保険金」以外に追加で支払われる「費用保険金」の1つです。
災害などにより火災保険の保険金を受け取ることになった際は、損害を受けた建物や家財を修理したりする費用以外にも、お金がかかることがあります。
たとえば自宅の修理中は、ホテルなどに仮住まいをしなければならないかもしれません。
そういった「臨時で必要となる費用」を補償するのが臨時費用保険金です。
2.臨時費用保険金が支払われる場合
まず、前提として、火災保険が補償してくれるのは、火災による損害だけではありません。
以下のように、さまざまな災害・事故に対応しています。
番号 |
補償の種類 |
内容 |
① |
火災 |
失火やもらい火、放火などによる損害を補償 |
② |
破裂・爆発 |
ガス漏れなどによる破損・爆発の損害を補償 |
③ |
落雷 |
落雷による損害を補償 |
④ |
風災・雹災(ひょうさい)・雪災(せつさい) |
台風や竜巻など風による損害、雹・雪による損害を補償 |
⑤ |
建物外部からの物体の飛来・落下・衝突など |
自動車の飛び込みなど、物体が衝突してきたときの損害を補償 |
⑥ |
水濡れ |
給排水設備の事故や上階の漏水などで生じた損害を補償 |
⑦ |
騒擾・集団行動・労働争議に伴う暴行など |
デモのような集団行動などにより生じた暴力行為・破壊行為による損害を補償 |
⑧ |
盗難 |
盗難にあった際の損害を補償 |
⑨ |
水災 |
台風や暴風雨により起こった洪水などの水災による損害を補償 |
⑩ |
持ち出し家財の損害 |
旅行・買い物・レジャーなどで建物から一時的に持ち出した「家財」が、出先での火災や盗難などで損害を受けた場合の補償 |
しかし、臨時費用保険金は、必ずしも火災保険の補償対象の全てで支払われるというわけではないので注意してください。
保険会社や保険商品によっては、臨時費用保険金を支払う災害・事故は、上記①~⑦の災害・事故による損害が生じた場合と定めています。
水災等で損害が生じた際には、臨時費用保険金は支払われないので注意しましょう。どんな場合に臨時費用保険金が支払われるかは、契約時に確認してください。
3.臨時費用保険金の使い道は自由
臨時費用保険金は使い道が限定されていません。
どのように使うかは契約者の自由で、保険会社から干渉されることはありません。
自宅修理中のホテルの宿泊費、またトランクルームなどに家財を保管しておく費用などさまざまな使い道が考えられます。
さらには、親類や友人、会社の同僚などに電話で安否を伝えたりするのに、いつもより多く電話代もかかるかもしれませんが、その費用も臨時費用保険金でまかなうことも可能です。
この自由度の高さもこの特約のメリットといえるでしょう。
4.臨時費用保険金はどのくらい受け取れるか
支払われる臨時費用保険金の額は保険会社によっても異なりますが、一般的には建物や家財の損害をカバーする保険金をもとに算出されます。
建物や家財の損害をカバーする保険金のことを保険金のなかでも「損害保険金」と呼びますが、一例としてB損保で支払われる臨時費用保険金は、以下の中からえらぶことが可能です。
- 損害保険金×30%(限度額300万円)
- 損害保険金×30%(限度額100万円)
- 損害保険金×20%(限度額100万円)
- 損害保険金×10%(限度額100万円)
- 臨時費用保険金なし
たとえば、「損害保険金×30%(限度額300万円)」が選択されていて、ボヤにより家の損害額(損害保険金)が100万円だった場合、以下金額の臨時費用保険金が支払われることになります。
100万円(損害保険金)×30%=30万円
このなかで、より上の行の方が多くの臨時費用保険金を受け取れますが、その分保険料も高くなります。
ただ、貯蓄にあまり余裕がない場合は、いざという時に仮住まいなどの費用を捻出するのに困る可能性がありますから、十分な額の臨時費用保険金を受け取れるよう補償を確保しておいた方がよいでしょう。
5.結局、臨時費用保険金は必要か?
火災などの災害・事故に見舞われた場合、経済的な負担は決して軽くありません。
臨時費用保険金の使い道のところで例示したように、自宅修理時の仮住まいの費用、修理中の家財の補償費用などいろいろなお金が必要になると考えられます。
保険金請求や修理の相談などのために時間がとられ、仕事も何日か休まないといけないかもしれません。
また、店舗と自宅が一体化しているような建物だと、修理の間、休業状態になる、といったこともありえるでしょう。
つまり、修理や再建などにかかる費用以外にも経済的な負担があり、お金がかかるということです。
仮に臨時費用保険金をつけていなければ、それらの費用を自分の貯金を切り崩すなどして確保しなければなりません。
そのため、貯蓄が十分にあり、いざというときに家族分の仮住まいの費用などを問題なく捻出できるといった方以外は、臨時費用保険金の特約が必要になってくるでしょう。
火災保険の加入時には、臨時費用保険金が支払われるように特約を設定することをおすすめします。
6.【参考】臨時費用保険金以外の費用保険金とは?
建物・家財の損害をカバーするための損害保険金以外に、そのほかの費用全般をまかなうための保険金のことを「費用保険金」と呼び、臨時費用保険金は費用保険金の1つです。保険会社によっても異なりますが、費用保険金には臨時費用保険金以外にも以下のような保険金が存在します。
残存物片づけ費用保険金
火災などで破損した建物や家財、瓦礫を片付け清掃するための保険金です。
損害防止費用
事故・災害による損害がでるのを防止したり、損害を軽減したりするのに使われた費用を補償する保険金です。たとえば火災の際に使用された、消火剤の費用などが該当します
失火見舞費用保険金
自分の住居で起きた火災が近隣に広がってしまった場合に、見舞金を支払うための保険金です。
6-1.【注意】保険会社により費用保険金の扱いが異なる
火災保険の費用保険金は、保険会社によってはそもそも取り扱いがない場合もあります。
また費用保険金が用意されていたとしても契約にセットされていたり、契約者の任意で付与できたりするかも異なります。
火災保険を選ぶ際に、保険料などともに費用保険金の扱いがどうなっているかも比較したいところです。
その上で、費用保険金が支払われる保険を優先するとよいでしょう。
まとめ
火災などの事故・災害で自宅や家財が大きな損害を受けた際には、建物や家財を改めて確保するのとは別にお金がかかります。
その分のお金をカバーするのが費用保険金であり、臨時費用保険金は費用保険金の1つです。
自宅の修理中の仮住まいを確保したり、一時的に家財をほかの場所へ保管したりなどに使います。
費用保険金の使い道自体は自由なので、火災などの事故・損害にあい経済的負担が大きいときに非常に役立つでしょう。
ただし、保険会社・保険商品によってこの特約の有無などが異なるため注意が必要です。
火災保険を選ぶときに、あらかじめ臨時費用保険金の取り扱いについて確認し、保険料などとともに比較する際のポイントの1つとするとよいでしょう。