火災保険を契約する際には、見積もり・契約のタイミングと、保険金を受け取るタイミングで、それぞれ、諸々の書類が必要となります。
契約時の必要書類は、一戸建て、分譲マンション、賃貸物件で異なります。
また、加入後に損害を受けた場合、保険金を迅速に受け取りたいものです。
そこで今回は、まず、火災保険の見積もりや契約時に必要な書類についてお伝えします。
その上で、保険金を請求するにはどんな書類を揃え、何をすればいいのか、コツをポイントごとにまとめて解説します。
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1.火災保険加入時に必要な書類
まず、火災保険の見積もりや契約時に必要な書類は、以下の3パターンによって異なります。
- 一戸建ての場合
- 分譲マンションの場合
- 賃貸物件の場合
それぞれについて説明します。
1.1.一戸建ての物件の火災保険加入時に必要な書類
まずは、一戸建ての物件について見ていきましょう。
火災保険の契約の段階で必要なのは、いざという時に受け取れる保険金の額が適正に設定されていることを証明できる書類です。
どういうことかというと、火災保険で設定できる保険金額には上限があり、それは、建物・家財の評価額です。特に建物の評価額は、建物が焼失した場合に同等の物を建て直すのにいくらかかるかということで決まります。
また、保険会社に支払う保険料は、建物の構造、延べ床面積、築年数等の情報により決まります。
したがって、必要な書類を見積もりの段階で用意しておき、契約時に提出することになります。
基本的には、以下の書類に記載されています。
【単体でOKなもの】
- 売買契約書(建売住宅の場合)
- 建築確認申請書(第1面~第5面)・建築確認済証
【他の書類と併せればOKなもの】
これらのうちいずれかを用意すれば、見積もり段階で必要な情報を揃えることができます。
簡単にどんなものか見ていきましょう。
1.1.1.単体でOKなもの
■売買契約書(建売住宅の場合)
建売住宅を購入した場合は、売買契約書が重要です。
というのも、保険金額(建物評価額)が適正かどうかを証明するものとなるからです。
また、保険料を決める要素となる、建物の構造や延床面積、築年数といった基本的な事項が全て記入されています。
自分自身で新築する場合は次にお伝えする建築確認申請書・確認済証を用意することになります。
■建築確認申請書(第1面~第5面)・確認済証
建築確認申請書とは、建物を新築、または増改築時する時に、その建物が建築基準法や条例から外れていないかをチェックしてもらう「建築確認」の手続を受けるための書類です。建築主が役所か民間の指定確認検査機関に提出し、建築確認を受けることになります。
なお、耐火建築物かどうかについてなどについては、この書類の第4面に記載されています。
建築確認済証は、役所か、民間の指定確認検査機関の建築確認を受け、OKが出たことを示す書類です。
建築確認申請書を提出した後、建築基準法や条例から外れていないかチェックしてもらいます。そして、OKであれば建築確認済証を出してもらえるのです。
この建築確認済証がないと、建物を建設することができません。
1.1.2.他の書類と併せればOKなもの
■建物登記簿謄本
建物登記簿謄本(登記事項証明書)は、建物が契約者のものであるということを証明するために必要なものです。
法務局で取ることができますが、オンラインでも郵送の請求をすることができ、費用も安くて済みます。
参考:登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です :法務局
ただし、これだけでは築年数は分かっても構造等が十分には分かりません。そこで、それが分かるものを併せて提出する必要があります。たとえば、次にお伝えする仕様書・図面です。
■仕様書・図面
仕様書は、その建物の外部と内部、付随設備がそれぞれどんな素材でできているかを示すものです。また、図面にも構造等の記載があることがあります。
なので、特に、耐火基準についての判断材料として役割を発揮します。
1.2.分譲マンションの火災保険加入時に必要な書類
分譲マンションの契約に必要な書類は、一戸建てと同様、建物に関する情報が分かるものですが、1つ違うのが、「専有部分」を記載している資料が必要だということです。
「専有部分」とは、購入したマンションの室内全般のことを指しますが、マンションごとにどの部分までを専有部分にするのかが違います。
重要なのが、部屋の骨組み(構造躯体)まで専有部分に含めるかどうかです。
多くの場合、躯体を専有部分には含まれないのですが、躯体まで専有部分に含まれていると専有面積が大きくなり、結果として保険料が割高になってしまいます。
専有部分を正確に把握するためにも、「専有部分」を記載している資料が必要になってくるわけです。
分譲マンションの契約で必要な書類は、以下のようなものです。
重要事項説明書は専有部分について記載があります。また、売買契約書は契約者の所有権を証明するものです。
売買契約書については既にお伝えしましたので、ここでは重要事項説明書に絞って詳しく見ていきましょう。
■重要事項説明書
契約時に不動産会社が行う重要説明の内容が記載された書類です。
専有部分に関する事項や、物件自体の権利関係などについて説明されているもので、専有部分を確認し、専有面積に応じた保険料を算定する資料として必要なものです。
1.3.賃貸物件の火災保険加入時に必要な書類
賃貸物件の場合、必要なのは、物件を借りた時に取り交わした「賃貸契約書」のみです。
なぜなら、建物自体の火災保険は所有者である大家さんが加入しているので、火災保険をかける対象は建物ではなく、家財のみだからです。
この場合、建物の構造だけが分かっていればよく、それは賃貸借契約書を見ればすぐ分かります。
2.火災保険の保険金請求に必要な書類
次に、火災保険の契約後に損害を受け、保険金を請求する場合に必要な書類について説明します。必要書類は以下の通りです。
- 保険金請求書・事故内容報告書・損害明細書
- 修理見積書
- 罹災証明書
- 写真
損害が判明したら速やかに、保険会社のフリーダイヤル、または加入時の代理店担当者へ電話で連絡します。損害が発生した日時、状況等を可能な範囲で報告します。
その後、保険会社から、保険金の請求に必要な書類が送られてきます。基本的にはその指示通りに書類を準備し、請求します。
以下、それぞれの必要書類について説明します。
①保険金請求書・事故内容報告書・損害明細書
保険金請求書は保険金申請のための情報を記載するもの、事故内容報告書は事故の概略を説明するためのもの、損害明細書は家財についての損害を記入するものです。
各々の保険会社が独自のフォーマットで各種用紙を発行しているので、それに記入します。
保険会社に保険金額や事故の詳細を伝える書類なので、できる限り具体的に詳しく記載することが大切です。
②修理見積書
建物の損壊を修理するのに必要な金額の見積もりです。修理を依頼した業者から受け取ります。
修理代が記載されたものだけでなく、修理内容や内訳まで記載されたものが必要なので、注意が必要です。
なお、最近、「火災保険でリフォームできますよ」「屋根の修理ができますよ」などと言ってリフォーム工事の契約を結ばせようとしてくる詐欺まがいの業者がいるので、注意が必要です。
実際には、火災保険でできるのはあくまでも「修理」であって「リフォーム」はできません。また、雨漏り等による屋根修理の場合は、その原因がいつの自然災害(台風、豪雨等)なのかを証明するのが難しく、火災保険の保険金請求をしても、保険金が受け取れる100%の保証はありません。
詳しくは『火災保険で屋根修理できる条件と詐欺トラブルを防ぐ方法』をご覧ください。
③罹災証明書
所有する建物が損壊した場合に、管轄の消防署や消防出張所で発行される書類で各自治体から発行してもらえる書類です。罹災した事実、被害の内容を証明するのに使われます。
以下のような書式です。
④写真
建物の損壊状況を証明する資料として、被害の状況を撮影した写真を提出します。スマホなどで撮影した画像データを提出するのでも構いません。
損害が判明したらすぐにその状況を撮影しておくことをおすすめします。
【参考】保険金の請求は3年後までできるが…
保険金の請求は、過去3年以内の事故・災害によるものであれば可能です(保険法95条)。
ただし、原因となる事故・災害の発生日時を特定し、それと損害との因果関係を証明しなければなりません。それらのことは、時間が経てば経つほど困難になります。
したがって、損害が判明次第、できるだけ早期に保険請求をするに越したことはありません。
3.火災保険で適切な保険金を速やかに支払ってもらうコツ9選
以上を前提として、火災保険で必要十分な保険金額をより速やかに支払ってもらうためには、どうすればよいでしょうか。
請求の仕方しだいで、受け取れる保険金の額が理不尽に少なくなってしまうことも考えられます。ここでは、そんなことにならないようにするため、適切な額を受け取るためのコツを1つずつ解説します。
コツ1|担当者とできるだけ密に連絡をとる
保険金を受け取るにあたり、保険会社の担当者と意識の齟齬がないよう、できるだけ密に連絡をとる必要があります。
事故・災害の発生状況や損害の状況等を正確に理解してもらわなければ、適切な額の保険金が受け取れない可能性があります。また、互いに誤解があって手続が進まなければ、保険金の受け取りが遅れてしまいます。
コツ2|契約内容を確実に把握しておく
火災保険の契約内容(補償内容)を確実に把握しておく必要があります。
建物のみ、家財(家具・家電製品・衣類など)のみの補償なのか、あるいはその両方なのかや、損害が発生した際の自己負担額はどのくらいか、そのほか特約は何がついているかなど、契約書類などで確認しておきましょう。
契約書類を紛失したなどで分からない場合は、保険会社へ問い合わせて確認します。
補償範囲を把握しておかないと、正しく保険金の請求ができない可能性があります。
コツ3|速やかに事故の報告を行う
火災などの事故が発生してから時間が経過するにつれ、損害がどんな原因によるものなのかを証明しにくくなってしまいます。
そのため、損害が分かり次第、できるだけ速やかに手続きをすることをおすすめします。
特に、屋根等、目の届かない場所については、大きな自然災害等に見舞われたら、直後に損害の有無を確認することをおすすめします。
なお、近隣地域に共通する大きな自然災害が発生するようなケースであれば、保険会社が混み合い保険金の受け取りまでに時間がかかってしまうこともあります。
その意味でも、できるだけ速やかに対応を進める必要があります。
コツ4|「いつ?」「何が原因?」など損害の事実をできるだけ明確に伝える
火災保険では、損害が発生した日時や原因をできるだけ明確にして保険会社へ伝える必要があります。
難しいのは自然災害や盗難被害です。
以下は、損害保険の調査業務に関わっていた経験のある方からうかがったことです。参考にしてください。
自然災害
自然災害の場合、損害が本当に自然災害によって発生したのか、いつの災害によって発生したのか、特定しづらい場合があるので注意が必要です。
たとえば台風の後に家の塀が少し欠けているのを見つけたとして、それがいつどのように損害を受けたのか証明するのは困難です。
そんなときは正直に保険会社側の担当者へ相談して、どのようにすれば良いか助言を得ることをおすすめします。
一つの方法として、気象庁HP『過去の気象データ検索』のコーナーで、最寄りの気象観測所での当日の時間ごとの天気・風速・降水量等の記録を確認することをおすすめします。
最寄りの観測所と、その近くでより詳細なデータをとっている観測所があればそこもチェックします。
盗難
盗難被害の場合、本当にその物を持っていたのか証明するのが難しいことがあります。
たとえば、高価な宝石やブランド物のバッグ、電気機器等については、それを購入した際のクレジットカードの記録や領収書、保証書・証明書が有力な証拠になります。
高価なものであれば、購入店に記録が残っていることもあります。腕時計等ならば修理記録も有力な証拠になります。
もしもそういった記録がないならば、その被害品を実際に身に付けていたり使っていたりする様子を撮影した写真や、それを収納していた箱や袋等が、有力な証拠になります。
もしも、そういったものもないというのであれば、イラストを描くことで信ぴょう性が多少高くなることがあるそうです。
コツ5|必要な書類を不備のないように揃える
火災保険の請求では、上述したとおり保険金請求書・罹災証明書・修理見積書を手配する必要があるほか、印鑑証明書などを取得しておく必要があります。
また被害内容を証明する写真(画像データ)も必要です。
書類に不備があれば保険金の支払いが遅れる可能性があるほか、最悪保険金の額が少なくなってしまうことも考えられます。
くれぐれも不備のないようにし、不安な点がある場合は必ず保険会社側の担当者へ問い合わせるようにしてください。
コツ6|被害の内容がわかる写真をできるだけ多く提出する
被害の内容を証明できる写真(画像データ)は、できるだけ多く提出することをおすすめします。
誰が見ても被害状況が一目でわかる写真が望ましいです。
たとえば、建物の場合、損害が生じた箇所をアップした写真の他、建物全体の写真があるとさらに客観性が増してわかりやすくなります。
また、修理の前に応急的な処置をほどこす必要があるような場合は、その前後の写真を撮影してください。
コツ7|定評のある修理業者に依頼する
当然ですが、保険の契約者は修理にかかる金額を決定することはできません。
また、修理金額の相場について、たとえば「この工事ならいくら」といった客観的かつ共通する価格表があるわけではありません。
そのため、修理業者によっては、相場とはかけ離れた高い金額で見積もりをしてきたり、見積もりをとって契約しなかった場合に高いキャンセル料を要求してきたりすることもあります。
そこで、地元で評判の良い業者を選んだり、インターネットの口コミを参考にしたりするとよいでしょう。
なお、詳しくは後でお伝えしますが、中には契約者に対して不当に保険金を請求させようとする詐欺まがいの修理業者もいます。
そのような業者の被害に遭わないようにするためにも、地元の評判や口コミを確認して修理業者を選ぶのが有効と言えます。
コツ8|保険金額が少ないと感じた場合は異議申し立てをする
保険会社は、提出された書類をもとに保険金額を算出します。その保険金額が少ないと感じた場合、異議申し立てをすることができます。
保険会社はそれを受けて再審査を行います。
その場合、保険会社が示した金額の算定根拠に対し、それを覆すに足りる有効な根拠を提示する必要があります。
コツ9|信頼できる担当者を選ぶ
これは保険金を請求する際、というより火災保険加入時に押さえておきたいことです。
保険会社や代理店の担当者(営業スタッフ)は、基本的に物腰がやわらかく印象をよくしようと努めているので、「本当に信頼できるか」見抜くのは簡単ではないかもしれません。
ただし、相手を見極めるのに効果的な方法はあります。それは、「台風で雨といが壊れた場合、保険金はおりますか? 保険金がおりないのはどんな場合ですか?」と質問してみることです。
経験豊富な担当者ならば、自身の経験に基づいて保険金がおりる条件について分かりやすく説明してくれます。
また、仮にまだ経験の浅い新人の担当者であっても、先輩などに確認するなどして誠実に対応してくれるのであれば、信頼できる可能性が高いです。
【参考】「火災保険詐欺」には注意が必要
近年、火災保険などの損害保険に関する詐欺が横行しているようです。
独立行政法人国民生活センターが2018年9月6日に公開した報道発表資料によれば、2017年度は2008年度に比べ30倍以上の相談件数にのぼっているとのことです。
詐欺の手口は、たとえば、火災保険加入者に「火災保険を使って住宅を修理しませんか」と持ち掛けて嘘の申告を行わせ、保険金を受け取らせ、自分は手数料をもらうといったものです。
嘘が発覚して保険金がおりなかったり、保険金を返還しなければならなくなったりした場合も「キャンセル料」などの名目で契約者に支払いを請求するのです。
詳しくは「火災保険で屋根修理できる条件と詐欺トラブルを防ぐ方法」をご覧ください。
先ほどもお伝えした通り、修理業者などは地元の評判のよい業者、インターネットなどで口コミの評価が良い業者などを選ぶことをおすすめしす。
まとめ
火災保険の見積もり・契約に必要な書類、保険金請求に必要な書類、保険金を速やかに受け取るためのコツ等についてお伝えしてきました。
火災保険の見積もり・契約の際には、保険をかけたい建物の情報が分かる書類です。
なるべく多く揃えることで、より確実な見積もりと、適正な保険内容による契約が可能になります。
また、損害が発生した時に速やかに適切な保険金を受け取るためには、必要な書類を迅速に揃える必要があります。また、保険会社側の担当者と密に連絡をとりあったり、損害の状況等を証明する写真・画像データ等をできるだけ多く提出したりといったコツがあります。