自動車保険の任意保険は、自賠責保険の補償内容を考えると、絶対に入っておくべき保険です。
今回は、任意保険の契約方法のうち最も一般的な「ノンフリート契約」について、特に、保険料を決める上で最も重要な「等級」に重点を置いてお話ししていきます。
また、併せてフリート契約やミニフリート契約についても触れていきます。
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1.ノンフリート契約とは
ノンフリート契約とは、名前の通りフリート契約ではない契約のことです。
自動車保険の契約は、大きく分けてフリート契約・ミニフリート契約・ノンフリート契約の3種類があり、総契約台数に応じて区分されます。
フリート契約はもっぱら多くの台数を保有する事業者向けの保険であり、フリート契約にあたらない一般的な個人向けの契約は、基本的にノンフリート契約となるのです。
それぞれ見ていきましょう。
1.1|フリート契約は法人向けの契約
フリート契約は10台以上の自動車を保有している場合の契約です。
車単位でなく、保険契約者単位で総合的に保険料が計算され、等級によって最大70%~80%の割引を受けることができます。
また、新たに契約車両を追加した場合、他の自動車と同じ割引率が適用されるという特徴があり、自動車を多く使う事業者にとっては大きなメリットになり得ます。
ただし、もし契約中の自動車が事故を起こした場合、等級が下がってしまい、翌年以降の保険料が大きく跳ね上がってしまいます。
保険契約者単位で契約しているため、たとえ保有している自動車のうち、1台しか事故を起こしていないとしても、全体の保険料が上がってしまうのです。
フリート契約を結ぶ際は、交通事故の予防に最大の注意を払う必要があります。
1.2|ノンフリート契約は個人向けの契約
フリート契約に対し、保有している自動車が9台以下の場合は、原則として「ノンフリート契約」となります。
つまり、一般的な自動車保険の契約はノンフリート契約にあたります。
ノンフリート契約にはフリート契約とは別の割引制度があり、契約者の安全運転度に応じて等級が定められています。
等級が高いほど保険料の割引率は高くなり、割安で任意保険に加入することができます。後で改めてお伝えします。
1.3|ミニフリート契約は手続きが楽
ミニフリート契約は、一部の保険会社が用意している契約方法で、2台~9台の車を保有している場合の契約です。
1枚の保険証券で複数の車を一括管理できるため、手続きや管理が楽なのが特徴です。
割引率についてはノンフリート契約と同じものが適用され、フリート契約ほどではないですが保有台数に応じた割引を受けることができます。
また、フリート契約のように保険契約者単位で契約するわけではないので、1台ずつに希望の補償内容が設定できるのも特徴です。
もし複数台の自動車にまとめて任意保険をかける場合は、管理が楽になるので、検討してみても良いでしょう。
2.ノンフリート契約の等級制度について
任意保険の契約方法の種類について分かったところで、ノンフリート契約の等級制度について見ていきましょう。
ノンフリート契約の等級は、契約者の安全運転度に応じて、1等級から20等級までの20ランクに分けられます。
もちろん等級が高いほど割引率も高く、割安な保険料で任意保険に加入することが可能です。
ただし、一定の等級を下回ってしまうと、割引どころか割増が適用されてしまい、保険料が高くなってしまいます。
2.1|ノンフリート契約では最初は6等級から
初めて自動車保険の契約をする場合、原則6等級で加入することになります。
等級の審査は1年ごとに行われ、事故を起こして保険金を受け取った場合は等級が下がり、無事故であれば等級が上がるのです。
ノンフリート等級制度では、自動車事故を「3等級ダウン事故」「1等級ダウン事故」「ノーカウント事故」の3種類に分類しています。
それぞれ見ていきましょう。
①3等級ダウン事故
3等級ダウン事故は、基本的に自分が起こした事故によって相手に損害を与えてしまった場合が該当します。
例として挙げられるのは、以下のようなケースです。
- 対人賠償保険金が支払われた場合
- 対物賠償保険金が支払われた場合
- 対物事故で車両保険金が支払われた場合
②1等級ダウン事故
1等級ダウン事故に当たるのは、自分のせいでない自然災害や人災によって、自動車自体に損害が出た場合です。
具体的には以下のようなケースが挙げられます。
- 台風や洪水などで自動車が損傷して車両保険金が支払われた場合
- 盗難やいたずらによる傷などが原因で車両保険金が支払われた場合
③ノーカウント事故
ノーカウント事故では等級が変化しません。
基本的には、自動車事故で自身や同乗者に損害があった場合がこれにあたります。
具体的には以下のようなケースです。
- 自分や同乗者が自動車事故に遭い、人身傷害保険金や搭乗者傷害保険金のみが支払われた場合
2.2|6等級と7等級ではさらに細かい分類がある
自動車保険の等級の中でも、6等級と7等級は少々特殊になっています。
というのも、6・7等級では等級の後ろにアルファベットが付くことが普通であり、アルファベットの種類によって割引率などに差があるのです。
6・7等級に付けられるアルファベットは保険会社によって様々ですが、基本となるのは、「F」と「S」の2つになります。
「F」は継続契約であるという意味であり、前年度以前から契約している上で、毎年の等級審査の結果、6・7等級になっている場合に付けられるものです。
これに対して、「S」は純新規契約を意味します。
「S」の場合、基本的な割引率ではなく、専用の割引率が用意されており、「F」の場合より割引率が低くなっていることが多いです。
その他、保険会社によっては「A」「B」「C」「D」「E」「G」のアルファベットが用意されている場合があります。
これらは「運転手の年齢条件」による分類となっており、年齢による割引率の変化がある場合に用意されているものです。
2.3|割引率・割増率は等級のみでは決まらない
ここまでノンフリート契約の等級についてお話ししてきましたが、実は自動車保険の保険料の割引率・割増率は、等級のみで決定されるわけではありません。
等級の他に、無事故係数と事故有係数という基準も使って割引率・割増率を決定するのです。
もし同じ等級であったとしても、無事故係数がかかっているのか事故有係数がかかっているのかによって、保険料の割引率・割増率に差が出てきます。
例えば等級が10等級であったとしても、その年度を無事故で終え、9等級から上がってきた場合であれば無事故係数がかかり、より大きな割引率を受けることが可能です。
対して、その年度に3等級ダウン事故を起こし、13等級から10等級に落ちてきてしまった場合、事故有係数がかかってしまうため、割引率が抑えられてしまいます。
例えば、A損保ごとの各等級での無事故係数、事故有係数の割増引率は以下の通りです。
等級
|
割増引率 |
割増引
|
無事故係数 |
事故有係数 |
1 |
64% |
割増
|
2 |
28% |
3 |
12% |
4 |
2% |
割引
|
5 |
13% |
6 |
19% |
7 |
30% |
20% |
8 |
40% |
21% |
9 |
43% |
22% |
10 |
45% |
23% |
11 |
47% |
25% |
12 |
48% |
27% |
13 |
49% |
29% |
14 |
50% |
31% |
15 |
51% |
33% |
16 |
52% |
36% |
17 |
53% |
38% |
18 |
54% |
40% |
19 |
55% |
42% |
20 |
63% |
44% |
表より、無事故係数がかかっていると、事故有係数がかかっている場合に比べ、1.5~2倍弱の割引率が適応されていることが分かります。
特に14等級以上では、無事故係数がかかってれば保険料が半額以下にまで抑えられることもあり、よりお得さを感じることができるでしょう。
事故有係数の適用期間は、3等級ダウン事故であれば3年、1等級ダウン事故であれば1年です。
適用中に再度事故を起こしてしまうと、最長6年まで適用が延長されてしまうので注意しましょう。
3.契約中に保険会社を乗り換える場合は注意
ノンフリート契約で自動車保険に加入している場合、保険の乗り換え時に注意が必要です。
先述の通り、ノンフリート契約の等級は、1年ごとに審査されます。
しかし、もし審査の直前に保険の乗り換えを行ってしまうと、審査を受けるまでの期間が延長されてしまいます。
どういうことかというと、ノンフリート契約の審査は契約開始日を基準として行われるため、もし審査目前で保険の乗り換えを行うと、次年度の契約日まで審査が延長されてしまうのです。
特に等級が6等級より低い場合、満足な割引が受けられない、または保険料が割増になっている場合がほとんどなので、できれば一刻も早く等級を上げたいところでしょう。
そんな時に保険の乗り換えを行うと、直近の審査の機会を逃してしまうというわけです。
もし審査日が迫っているのであれば、保険の乗り換えは一旦保留し、審査後に乗り換えを行うようにしましょう。
まとめ
ノンフリート契約の等級制度についてお話ししてきました。
ノンフリート契約は、一般的な自動車保険お契約方法のことであり、契約者の運転安全度をもとにした等級によって、割引を受けることができます。
ただし、等級が低すぎると逆に保険が上がってしまうので、注意が必要です。
等級は、事故によって3等級下がる場合、1等級下がる場合、下がらない場合があります。
基本的に、自身や同乗者が損害を受けたような事故では等級の変化がありません。
同じ等級であっても、無事故でその等級になったのか、事故を起こしてその等級になったのかで割引率。割増率に違いが生じます。
事故有係数を保持したまま再度事故を起こしてしまうと、最長で6年間割引が抑えられるか大きく割増されることになってしまいますので、注意しましょう。