雨樋修理に火災保険を使えるか?

「火災保険を使えば自己負担なしで雨樋修理ができる」と勧誘してくる詐欺まがいの業者が増えているようです。

独立行政法人 国民生活センターの報道発表資料(平成30年9月6日)のデータによれば、関連すると想定される相談件数は、2008年度に比べて2017年度は30倍にもなっているとのことです。

そもそも火災保険の保険金で雨樋修理が本当にできるのかや、詐欺に騙されないようにするためにはどうすればよいか、解説します。

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保険の教科書 編集部

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1.火災保険を使い無料で「雨樋修理ができる」という詐欺に注意

「火災保険の保険金を使えば無料で雨樋修理ができる」といったように、火災保険の制度を悪用しようとする詐欺業者が横行しています。

一例として、以下のような詐欺の事例があったことが報告されています。

  1. 「無料で雨樋修理ができる」とチラシをみて高齢の方が業者に電話した
  2. 業者に見積もりをしてもらったところ、雨樋以外の不具合も指摘され、「修理費用として合計300万円かかる、でも火災保険の保険金を請求すれば自己負担なしで修理できる」と言われ契約した
  3. 業者の言う通り保険会社へ問い合わせたが「老朽化の部分は保険対象外」といわれ、結局受け取れた保険金は80万にとどまった。
  4. 保険金が80万円では工事費用に足りないので修理を断ろうとしたところ、違約金として100万円請求された。

火災保険を悪用しようとする詐欺業者の特徴は共通していて、「火災保険を使えば自己負担なしで修理できる」と勧誘してきます。

実際には、必ずしも請求した通りの保険金が支給されるとは限りません。また、本来見積もりだけであれば、費用が発生することもありません。

1-1.どのくらい火災保険の詐欺被害が発生しているか

火災保険に関する詐欺の被害は、残念ながら増えているようです。

独立行政法人 国民生活センターの報道発表資料(平成30年9月6日)によれば、関連する相談件数が2017年度は2008年度の30倍以上になっているとのことです。

ここ数年だけ切り取ってみても、以下のように増加傾向にあります。

  • 2014年:663件
  • 2015年:817件
  • 2016年:1,081年
  • 2017年:1,177件

中でも男性の相談者の約75%、女性の相談者の約71%の年齢が60代以上ということで、高齢者へ強く注意喚起をしています。

2.請求の根拠がしっかりしていれば火災保険で雨樋修理が可能

雨樋が故障した原因が、火災保険の補償対象となっている災害・事故だということがきちんと証明できるのであれば、請求した通りに保険金がおりて雨樋修理をすること自体は可能です。

それでは、火災保険でどんな場合にどのくらいの保険金を受け取れるのでしょうか。以下1つずつ見ていきます。

2-1.雨樋修理の対象となる火災保険の補償範囲

火災保険と聞くと火災に特化した保険のように考えている方も多いかもしれませんが、実際にはその補償範囲は広くなっています。

補償範囲が保険商品や個々の保険契約によって異なっている可能性はありますが、主なものとして以下が挙げられます。

【火災保険の補償範囲】

火災 失火・もらい火によって生じた損害に対する補償
落雷 落雷による損害の補償
破裂・爆発 ガス漏れ等、破裂・爆発による損害の補償
風災雪災(せつさい)雹災(ひょうさい) 風・雪・雹による損害に対する補償

例:台風で何かが飛ばされてきて窓ガラスが割れた(風災)

水濡れ 漏水をはじめとした水漏れによる損害に対する補償

例:賃貸住宅で上の階から水漏れし、家電製品が故障した

水災 台風・集中豪雨などによる水害が原因の損害に対する補償

例:台風で近くの川が氾濫し、床上浸水をおこした

盗難 盗難被害に対する補償
騒擾(そうじょう)・集団行為などにともなう暴力行為 騒擾・集団行為を原因とした暴力や破壊行為による損害を補償
建物外部からの物体の落下・飛来・衝突 建物の外から何らかの物体がぶつかってきたときの損害を補償

この中でも、雨樋修理の対象となり得るのは、主に風災・雪災・雹災です。

台風で雨樋が破損したり、大雪の重さで雨樋が変形したり、大粒の雹で雨樋が損害を受けたりした場合には、火災保険の補償対象となるということです。

ちなみに、「建物外部からの物体の落下・飛来・衝突」で、雨樋修理が発生するケースは考えにくいです。なぜなら、この補償は、自然災害と関係なく物体が飛んできて建物に衝突するケース等を想定しており、雨樋の場合、たとえば、上空から飛行機の部品などが飛んできて雨樋に衝突するようなことはほとんど起こり得ません。

2-2.請求が認められれば修理費用を全額保険金として受け取れる

次に、雨樋修理をする場合に受け取れる火災保険の保険金の額は、火災保険の補償範囲による損害と判断される限り、修理に必要な全額です。

ただし、以下2つに挙げる条件次第では、修理費用の全額がおりるというわけではないので注意してください。

2-2-1.「時価」が選択されていると必要な保険金がおりない

火災保険の保険金の算出方法として「新価」「時価」の2種類があり、契約時にどちらかを選択することになります。

まず、新価とは、損害額を全額補償する算出方法であり、新価が選ばれていれば保険金だけで修理をすることが可能です。

これに対し、時価とは、新価から経年劣化により落ちた分の価値を差し引く算出方法をさします。

時価が選ばれている場合は保険料が若干安くなるかわりに、保険金だけでは住宅の修理をできない可能性が高くなります。これでは保険としての価値が半減してしまうため、最近ではあまり選ばれることはありませんし、おすすめもできません。

なお、近年では、最初から新価で算出されるように設定されていることがほとんどです。一方、古い火災保険の契約では時価が選ばれていることもあるので注意してください。

不安であれば、火災保険の保険証券などで確認してみることをおすすめします。

2-2-2.免責金額が設定されていると自己負担が必要

免責金額とは、簡単に言うと損害額のなかで自己負担する金額を指します。

たとえば、免責金額が5万円に設定されている場合は、損害額が20万円とすると、受け取れる保険金の額は以下のように算出されます。

20万円-5万円=15万円

これに対し、損害額が5万円以内であれば、保険金は支払われません。

免責金額を設定すると、保険料が少し安くなります。

なお、古い火災保険の契約では、免責金額の設定の代わりに「損害額が20万円以上の場合に保険金を支払う」という条件が設定されていることもあるので注意してください。

この場合、損害額が20万円未満であれば、保険金は支払われません。逆に損害額が20万円以上であれば、自己負担なしで損害額と同額の保険金を受け取ることができます。

古い火災保険の契約がある場合、どのような条件になっているか、保険証券などで確認してみてください。

2-3.保険金を請求する方法

保険金の請求方法は必ず契約者自身で行う必要があります。また、難しくはありません。「手続きを代行する」という詐欺業者もいるようですが、そういう代行は一切認められません。

実際にどんな手順になるか、以下、簡単に解説します。

①損害が発生したことを保険会社へ連絡

まずは保険会社へ電話などで連絡して、火災保険の補償対象となる損害が発生したことを報告します。

その際、保険会社から以下のような内容を聞かれるので、保険証券を手元に用意しておきましょう。

  • 契約者名
  • 保険証券番号
  • 損害が発生した日時・状況など(分かる範囲で)

また、請求に必要な書類についての説明があります。不明な点や知りたいことがあれば、この時点で質問して確認することをおすすめします。

②必要な書類の提出

保険会社の指示に従い、書類を用意して提出します。

具体的な種類は保険会社により異なる可能性がありますが、だいたい共通するのは以下の通りです。

  • 保険金請求書:保険会社が用意する書類に記入
  • 罹災証明書:罹災した事実や被害の内容を証明する書類。管轄の消防署・消防出張所で発行してもらう
  • 写真:被害の状況を撮影したもの(デジカメやスマホ等で撮影した画像データも可)
  • 修理見積書(報告書):修理業者から取り寄せたもの

【罹災証明書のイメージ】

③保険会社による現地調査

保険会社が契約者のお宅へ損害鑑定人を派遣し、申請内容が妥当か調査します。

経年劣化による損害なのか、自然災害が原因かなどをここで判定し、その結果を保険会社へ報告します。

仮に、詐欺業者に言われる通りに申請したとしても、この現地調査で見破られ請求が通らなくなる可能性が高いです。

損害保険の調査業務担当者によれば、「いつ・どのような災害で」損壊が生じたのかきちんと立証できなければ、保険金の請求は認められないとのことです。

④保険金の支払い可否の判定

損害鑑定人の報告を受け、保険会社が最終的に保険金を支払うかどうかの審査を行います。この審査で認められれば保険金が支払われることになります。

⑤修理の実施

保険金を受け取ってから、修理を実施します。

したがって、修理を担当する業者との契約は、保険金を受け取れてからにすることが推奨されます。

もし、契約を済ませた後で、思ったほどの保険金が受け取れなかったら、残りは自己負担しなければならなくなり、後で困ることになってしまいます。

2-4.保険金の請求が認められない主な場合

仮に保険金を請求したとしても、必ずしも請求通りになるわけではありません。以下の場合では、保険金の請求が認められませんので注意してください。

  • 損害が発生してから3年を超えている場合
  • 経年劣化による損壊と判断される場合

以下1つずつ簡単に解説します。

2-4-1.損害が発生してから時間が経過していると請求が認められないことも

損害が発生してから3年を超えると、保険金の請求権は時効にかかるので、保険金を受け取れない可能性が高くなります。

ただし、3年以内であれば大丈夫とも言えません。損害保険の調査業務担当者によれば、3年以内であっても、損害が発生してから相当の時間が経過していると、損害と災害の因果関係の証明が困難となり、保険金の請求が認められないこともある、とのことです。

「なぜこんなに時間がたってから請求するのか?」と疑われる可能性もあります。

災害や事故で住宅の修理が必要となった場合は、できるだけ速やかに保険金の請求を行うようにしましょう。

その際、損害が発生した日時や原因に関する客観的な証明として、気象庁の公式サイト(「過去の気象データ検索」)で、周辺地域の当日の時間ごとの天気・風速・降水量といったデータを詳細に確認しておくことをおすすめします。

2-4-2.経年劣化による損壊と判断される場合

火災保険が適用されるのは、補償対象となる事故・災害によって住宅が損害を受けた場合です。

もし経年劣化が進んでいたとしても、最終的に風災などに遭って損壊した、ということであれば補償の対象となります。

しかし、純粋に経年劣化による損壊で、事故・災害との因果関係がないと判断される場合は、保険金が下りないので注意しましょう。

3.詐欺業者に騙されないために覚えておきたいこと

それでは、詐欺業者に騙されないようにするため、どんなことを覚えておけばよいでしょうか?

ここのではそのポイントをまとめて紹介します。

3-1.立証が難しい請求では保険金がおりないことを認識する

繰り返しになりますが、保険金の請求理由がしっかりしていなければ、保険金が支払われない可能性が高いことは覚えておいてください。

悪質な詐欺業者だと、ウソの理由で保険金を請求させようとすることもあります。

また、これも上に述べたように、災害や事故が発生してから時間が経過していると、因果関係の立証が困難だったり、「なぜ今更?」と疑われたりして、結果的に保険金請求が認められない、ということもあります。

業者が説明する保険金請求の根拠に、少しでも疑わしい点があればきっぱり断るようにしましょう。

3-2.保険金がおりるまで修理契約はしない

詐欺業者は相手からお金を確実に引き出すために、契約を急がせる可能性があります。しかし、言われるままに慌てて契約してはいけません。

まず契約書を必ず取り寄せ、中身をきちんと確認した上で、実際に契約としても保険金がおりた後にします。

上述したように、こちらの請求通りに保険会社から保険金を受け取れるとは限らないからです。

また、契約する前に、複数の修理業者に見積もりをとり、勧誘してきた業者の見積もりが妥当か確認するのも重要です。

あまりに契約を急がせたり、見積もりや契約内容に納得できなかったりする場合は、はっきりと勧誘を断るようにしましょう。

3-3.保険会社へ問い合わせるなどして契約の内容を確認しておく

火災保険でどのような保険金が受け取れるかは、火災保険の契約内容によります。

仮に台風で生じた強風で自宅が損壊したとしても、契約した火災保険で風災を補償範囲に含めていなければ、当然ながら保険金は支払われません。

3-4.絶対に虚偽の内容で保険金を請求しない

虚偽の理由で保険金を請求できるとそそのかしてくる詐欺業者もいるようです。

万が一嘘をついて保険金を請求しても、現地調査などの段階でバレる可能性が高いですし、場合によっては詐欺罪(刑法246条1項)で刑事罰に問われる可能性さえあります。

絶対に、詐欺業者の勧誘に乗って虚偽の理由で保険金の請求をしてはいけません。

3-5.業者のホームページや窓口がきちんと用意されているかチェック

相手が詐欺業者かどうか見極めるために、きちんとしたホームページを持っているか確認するのも有効です。その場合、問い合わせ窓口等が用意されているかどうかも重要です。

3-6.不安なことがあれば消費者生活センターへ相談

詐欺業者からしつこい勧誘を受けていたり、高額な請求をされたりして困っている場合には、消費生活センターへ相談することをおすすめします。

万が一、契約をしてしまった場合には、消費者生活センターのアドバイスに従いクーリング・オフできる可能性もあります。

電話で「188(いやや)」という番号にかければ、最寄りの消費生活センターの連絡先を教えてくれます。

まとめ

風災・雪災・雹災によって雨樋が損壊したということが、きちんと証明できるのであれば火災保険の保険金だけで雨樋修理をすること自体は可能です。

しかし、詐欺業者の勧誘に乗って曖昧な根拠で保険金を請求しようとすると、期待していた通りの保険金がおりないばかりか、詐欺業者に高額な違約金を請求されるなどの被害に遭うこともあります。

仮に詐欺業者にそそのかされて嘘の理由で保険金請求をすれば、最悪詐欺罪に問われることになります。

詐欺業者に騙されないように、業者の説明に少しでも疑わしい点があれば、きっぱり断るようにしましょう。

迷う点、困る点があれば、信頼できる工事業者や消費者生活センターに相談してみるのも1つの手です。

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