火災保険は、火災以外にも、自然災害から人災まで、住まいに関する様々なリスクに対応する保険です。
その中で「破損等」の補償は、付けるべきか外すべきかの選択に迷うものの一つです。ただし、どちらにしても、補償内容をきちんと理解しておく必要があります。
そこで今回は、火災保険の補償の1つである「破損等」について、補償を受けられるケース、補償の内容、必要性といったことを分かりやすくお伝えします。
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1.火災保険「破損等」で補償される範囲
火災保険の「破損等」が補償してくれる範囲は、「建物」「家財」のそれぞれについて発生する偶発的な事故全般です。
偶発的とは、「故意ではない」というくらいの意味です。過失、つまり、うっかりしていた場合も含まれます。
「建物」「家財」がそれぞれどのようなものをさすかについては、「火災保険の家財にかける必要性と保険金額(評価額)の決め方」をご覧ください。
破損等は、それによって日常生活が不可能になったり脅かされたりするリスクは比較的低いので、最も優先順位が低い補償と言えます。したがって、火災保険の保険料を節約するのであれば、最初に削るべき補償です。
ただし、補償範囲が広いということを考えると、お得な補償とも言えます。「これは補償されないのでは?」と思われるような家の中の事故であっても、案外補償されることが多いのです。
以下、建物と家財のそれぞれについて、補償を受けられるケースを具体的に見ていきましょう。
1.1.建物の場合
建物に関する偶発的な事故には、以下のようなものがあります。
- 家具の移動中に壁にぶつけて穴を空けた
- 子どもが窓ガラスを割った
- コーヒーが入ったカップを持ったままつまづいて壁を汚した
いずれも、家の中でいつでも起こり得るものです。
1.2.家財の場合
家財に関する偶発的な事故には、以下のようなものがあります。
- 掃除機をかけている時に机にぶつかり、食器を割った
- うっかりケーブルに足を引っかけ、電化製品を落として壊した
- 子どものいたずらでコピー機が壊れた
たとえば、高額なパソコンを落としてしまったり、子どもがボール遊びなどでテレビの画面を割ってしまったりした場合など、デリケートな家財の多い昨今では、「汚損・破損」の補償は大変有用と言えます。
うっかりした事故であっても補償してくれるので、保険料が高すぎなければ、付けておきたい補償といえるでしょう。
2.「破損等」で補償されないケース
このように、「破損・汚損」が広範囲にわたって偶発的な事故をカバーしてくれますが、補償を受けられないケースもあります。
①損傷が小さい場合
損傷が小さい場合、保険金は受け取れません。
たとえば、重い物を落としてフローリングが傷ついてしまったとしても、擦り傷がついたくらいであれば補償してもらえません。
また、家財の場合でも、小さな傷ができたくらいで機能に問題がない場合は、補償の対象外です。
②単なる経年劣化の場合
破損等の原因が、偶発的な事故ではなく、単に経年劣化である場合は、補償対象になりません。
経年劣化しかけているものが事故で壊れた場合、理屈としては、補償対象になります。ただし、事故が原因で壊れたことを証明するのは難しいことが多いです。
③よく身に付けるものや建物外での損害
よく身に付けるようなものについては、「破損等」の対象外です。
たとえば、メガネやスマートフォンなどの損害は補償されません。
また、建物外で発生した事故が原因で家財や建物に損害が生じた場合も、「破損等」の対象外となるので、注意しましょう。
3.受けられる補償の内容
「破損等」と認められた場合、建物の損害を受けた部分を補修したり、家財を買い直したり修理したりするための「損害保険金」を受け取ることができます。
問題は、損害保険金の計算方法です。
損害保険金は、契約上、あらかじめ決められた保険金額を上限として、以下の計算式で求められます。
損害額-自己負担額=損害保険金
3.1.損害額の計算方法
損害額の計算方法は「新価(再調達価額)」と「時価」の2通りがあります。
「新価」とは、建物であれば破損等箇所と同等の建物を再築するのにかかる金額、家財であれば修理または新品購入するのにかかる金額です。現在、たいていの火災保険は、何もしなくても最初から「新価」で計算する設定になっています。
これに対し「時価」とは保険金を支払う時点でのそのモノの価値を示す金額で、新価から、経年劣化により価値が落ちた分の金額が差し引かれます。
時価を選ぶと保険料が抑えられますが、損害をきちんとカバーするため、新価を選ぶようにしてください。
3.2.免責金額(自己負担額)
次に、免責金額(自己負担額)とは、損害額のうち、自身が一部負担する金額のことです。保険会社が保険金の支払い義務を部分的に免れるということです。
破損等の補償については、免責金額を必ず設定しなければならないことがほとんどです。
たとえば、損害額が30万円で自己負担額が5万円だと、受け取れる損害保険金の額は
30万円(損害額)-5万円(免責金額)=25万円
ということになります。
まとめ
火災保険の「破損等」の補償は、建物内での偶発的な事故による建物・家財の損害を幅広く補償するものです。
「風災」「水災」といった、日常生活が脅かされるリスクと比べると、最も必要性の低い補償と言えます。
ただし、補償範囲は広く、たとえば、子どものいたずら等によって建物の壁や床が傷ついたり、家電製品等が故障したりした場合も補償してもらえます。
損害が発生した場合の損害保険金の計算は、損害額を算出し、そこから、免責金額(自己負担額)を差し引きます。そして、損害額の算出方法は、「新価」を選ぶことをおすすめします。