火災保険は、建物だけでなく家財も補償対象になります。
ただ、どういう損害を補償してもらえるのか、どこまでの範囲の物が補償対象となるのか、いくらまで補償してもらえるのか、なかなかイメージがつかないことと思います。
そのため、火災保険に加入する際に、家財についてはどうすればいいのか悩んでいるという人も多いのです。
そこで今回は、火災保険で言う「家財」とは何なのか、家財の火災保険(家財保険)は必要なのか、保険金額をいくらに設定すべきなのか等について、持ち家と賃貸住宅との違いにも触れながら、お伝えします。
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1.火災保険の補償対象になる「家財」とは?
火災保険の補償対象となる家財とは、簡単に言うと、補償対象となる建物の中にある家具・家電商品・衣類といった「持ち運び可能なもの」をさします。
また、自宅の敷地内に駐輪してある自転車も含まれます。
<代表的な「家財」の例>
- 生活に使う家具や家電製品
- 食器・調理器具
- 文具品
- 洗面道具
- 食料品
- 寝具
- 書籍・CD・DVD・ゴルフ用品・トレーニング器具などの趣味・レジャー用品
- 仏壇やひな人形など
- 敷地内に停めてある自転車
1.1.高額な貴金属・美術品は事前に申告する
高価な貴金属・絵画などの美術品については、30万円を超える場合は、原則として補償対象外です。
これらは「明記物件」と呼び、契約時にリストアップして申告しておかないと補償の対象になりません。
また、補償してもらえる金額は「最大で100万円まで」「最大で500万円まで」と上限が設定されます。この上限額は保険会社・保険商品によって異なります。
なお、火災保険に地震保険の特約を付ける場合、「明記物件」を補償対象にすることができません。なぜなら、地震保険はあくまでも、生活の再建が目的で、明記物件のようないわゆる贅沢品は補償対象外だからです。
1.2.補償の対象にならない物
普段生活で使うものであっても、火災保険の家財として補償されない物もあります。以下、その代表的な例を紹介します。
- 自動車(自動車保険の補償対象)
- 動物・植物
- 建物に最初から付属していたエアコン・浴槽など(後から自分で取り付けたエアコンは補償される)
- パソコンにインストールされているデータ(そもそも「物」ではない)
2.「家財」の補償は必要か?
次に「家財」に火災保険をかける必要性についてお話しします。
火災保険では基本的に、補償対象を「建物」「家財」「建物+家財」の3種類の中から選ぶことができます。
そして、持ち家の場合と賃貸の場合とでは、考え方が全く違うので、分けて考える必要があります。それぞれ区別して考えてみましょう。
2.1.持ち家の場合
まず、持ち家の場合、火災保険の対象とするのは「建物」と「建物+家財」の選択肢がありますが、生活の本拠にするのであれば、「建物+家財」を選ぶことをおすすめします。
なぜなら、家財1つ1つは大した金額ではなくとも、全ての金額を合わせると意外と大きな額になることが多いからです。
たとえ高価な宝石・貴金属、有価証券等がなかったとしても、電化製品や家具、寝具などの基本的な家財をひと通り買いそろえるだけでも、それなりの額になってしまうはずです。
したがって、よほど経済的余裕があるのでなければ、家財にもきちんと保険をかけることをおすすめします。
2.2.賃貸の場合
賃貸住宅に住む人の選択肢は「家財」のみです。
そして、特に賃貸の場合に知っておいていただきたいのが、火災保険は、家財自体の損害を補償してくれるだけでなく、以下の3つの重要な役割も果たすことです。
- 家を燃やしてしまった場合の家主への賠償金等の補償【借家人賠償責任特約】
- 他に燃え移らせてしまった場合の弁償金等の補償【失火見舞費用特約・類焼損害補償特約】
- 他人に損害を与えてしまった際の賠償金等の補償【個人賠償特約】
これらの補償、とりわけ借家人賠償責任特約の補償は、家財に火災保険をかけなければ受けられませんので、たとえ家財自体の価値がたいしたことなかったとしても、これらの補償だけはきっちり付けて加入しておくことをおすすめします。
詳しくは『賃貸住宅で火災保険が義務である理由と自分で選ぶ時のポイント』をご覧ください。
また、賃貸住宅の火災保険は、賃貸借契約上、加入が義務付けられていることがほとんどです。ただし、その場合、不動産会社が紹介する火災保険に加入しなければならないわけではなく、自分で選ぶことができます。その際の選び方については「賃貸住宅で火災保険が義務である理由と自分で選ぶ時のポイント」をご覧ください。
3.火災保険では「家財」を何から守ってくれるのか
次に、火災保険の補償内容、つまり「家財」を何から守ってくれるのかについて紹介します。
火災保険で補償を受けられるのは火災の際だけではありません。以下のようなさまざまな事故・災害が対象となっています。
火災 |
失火・もらい火によって生じた損害に対する補償
例:火災で家が焼けてしまった、など |
落雷 |
落雷による損害の補償
例:
家の近くに雷が落ちて家電製品が故障した
屋根の一部が破損した |
破裂・爆発 |
破裂・爆発による損害の補償
例:ガス漏れで爆発し住宅に損害が生じた |
風災・雹災(ひょうさい)
雪災(せつさい) |
風・雹・雪による損害に対する補償
例:台風による強風で窓ガラスが割れた |
水濡れ |
漏水をはじめとした水漏れによる損害に対する補償
例:賃貸住宅で上の階から水漏れし、壁紙がはがれた |
水災 |
台風・集中豪雨など水が原因の損害に対する補償
例:台風で近くの川が氾濫し、床上浸水をおこし、床がダメになった。 |
盗難 |
盗難被害に対する補償
例:
家に泥棒が入り、現金や家電製品などが盗まれた
泥棒が入った際に、自宅の窓ガラスをわった |
騒擾(そうじょう)・集団行為などにともなう暴力行為 |
騒擾・集団行為を原因とした暴力や破壊行為による損害を補償
例:デモによる暴動で家が壊された |
建物外部からの物体の落下・飛来・衝突 |
何がしかの物体が、建物の外からぶつかってきたときの損害を補償
例:家に自動車が突っ込んできた |
破損等 |
不測かつ突破的な事故による損害を補償
例:重い家具を室内ではこんでいるときに、あやまって壁にぶつけて穴をあけてしまった。 |
このように補償の範囲が広いことから、最近では「火災保険」と呼ばず「住まいの保険」として販売する保険会社も多くなっています。
特に、自然災害は地震や天変地異以外、広く対応しています。最近は豪雨や台風の被害が急増していますが、きちんとプランを組めば、それらにも対応することができます。
火災保険のプランを組む際は、国土交通省のハザードマップで確認して、建物のある地域にどんな災害リスクがあるのか見ておくことをおすすめします。
なお、保険金の支払実績が最も多いのは「破損等」です。ある損害保険会社の火災保険の2013年度~2015年度の支払実績は、「破損等」の支払割合が半数近い47%でした。
「破損等」とは、日常生活で起こりうる「うっかり事故」による建物や家財の損害に対する補償をさします。たとえば、以下の通りです。
- テレビの位置をずらそうと運んでいたら、誤って落とし画面を割ってしまった。
- 食器棚から無理やり食器を取り出そうとして、数十枚の皿を一気に割ってしまった。
- 子どもが家の中でボールで遊んでいたら、あやまって自宅のガラスを割ってしまった
- 重い家具が倒れて、床がへこんでしまった。
このようなケースでも、家財の補償を受けられるのです。
2.保険金額は家財の「評価額」によって決める
家財に火災保険をかける場合、保険金の上限である「保険金額」は、家財の価値を表す「評価額」を基準にして決めます。
たとえば、家財の評価額の合計が2,000万円であれば、保険金額は2,000万円まで設定できるということです。
2.1.家財の「評価額」を決める方法
家財の評価額を決める際に覚えておきたいポイントは以下2つです。
以下、それぞれについて簡単に解説します。
2.1.1.「新価」と「時価」では新価を選ぶ
家財の評価額の算定基準には「新価」と「時価」があります。
現在、火災保険を契約する際、何も言わなければ「新価」が選ばれます。
新価とは、家財を改めて新品で購入したり修理したりするのに必要な金額のことです。
新価で評価額を算定すれば、損害保険金だけで家財を修理・再修理するのに足りることになります。
一方の「時価」とは、保険金請求時の補償対象の価値を意味します。
これは、新価から、経年劣化によって下がった価値の分の金額が差し引いて求めます。
時価で算出された損害保険金では、家財を修理・再購入するのに足りません。これでは火災保険の意味が半減してしまいます。
2.1.2.「積算評価」と「簡易評価」について
火災保険において家財の評価額は「積算評価」もしくは「簡易評価」いずれかの方法によって決めます。
積算評価とは、補償の対象となる家財とその金額をすべて正確にリストアップし、それを合計して評価額を算出する方法です。
方法としてはシンプルで、わかりやすいとは言えます。ただし、自宅にある家具・家電・衣類などの家財全ての価格をすべて正確に確認するのは、非常に手間がかかります。
そこでもう1つ用意されているのが「簡易評価」です。多くの場合、この簡易評価が使われます。
世帯主の年齢・家族構成(人数)・敷地面積などに基づいて、保険会社が導き出した目安額を使います。
この目安額がまとめてあるのが、「簡易計算表」です。
以下、参考までにA損保の簡易計算表を紹介します。
|
単身世帯
(面積無関係) |
2人以上世帯(延床面積) |
20㎡未満 |
20㎡~
30㎡未満 |
30㎡~
40㎡未満 |
40㎡~
50㎡未満 |
世帯主年齢 |
29歳以下 |
290万円 |
290万円 |
360万円 |
420万円 |
490万円 |
30歳~34歳 |
290万円 |
390万円 |
480万円 |
560万円 |
650万円 |
35歳~39歳 |
290万円 |
540万円 |
660万円 |
780万円 |
900万円 |
40歳~44歳 |
290万円 |
660万円 |
800万円 |
940万円 |
1,080万円 |
45歳~49歳 |
290万円 |
750万円 |
910万円 |
1,070万円 |
1,230万円 |
50歳以上 |
290万円 |
790万円 |
960万円 |
1,130万円 |
1,300万円 |
このような簡易計算表にあてはめた上で、契約者の実態に合わせ(家具の多い世帯か、少ない世帯かなど)、保険会社の担当者と相談して評価額を決定します。
A損保の簡易計算表では、単身世帯では世帯主の年齢や部屋の広さ(延床面積)に関わらず290万円ですが、2人以上の世帯では世帯主の年齢・延床面積によって評価額が変わります。
2.1.3.【補足】自己負担額(免責金額)についても注意しよう
評価額に基づいて保険金額を決めたとしても、家財の損害額がまるまる補償されるとは限りません。免責金額(自己負担額)を設定することがあります。
免責金額とは、損害額のうち、自己負担する額をさします。
たとえば、損害額が20万円だった場合、免責金額が5万円に設定されていれば、受け取れる損害保険金は15万円です。
免責金額を高く設定すると、その分保険料は安くなります。
免責金額を設定できるか否かや、設定可能な免責金額の種類は保険会社によって異なります。
2.2.保険金の上限額(保険金額)は評価額と同じにする
評価額が決まったら保険金の上限額(保険金額)を決めることになります。この時、「保険金額=評価額」にすることをおすすめします。
たとえば、家財の評価額が500万円であれば、保険金額も500万円にするのが良いということです。
評価額と保険金額を同じにしておけば、何かあった時に損害保険金だけでその家財を修理・再購入できることになります。
このように、保険金額と評価額が同じ保険のことを「全部保険」と呼びます。
それでは保険金額を評価額より少なくしたり、多くしたりした場合はどうなるでしょうか。以下、それぞれのケースを解説します。
- 保険金額を評価額より少なく設定した場合【一部保険】
- 保険金額を評価額より高く設定した場合【超過保険】
2.2.1.保険金額を評価額より少なくした場合【一部保険】
保険金額が評価額より少ないことを「一部保険」と呼びます。
たとえば、評価額が500万円だったにもかかわらず保険金額を400万円に設定したとします。
この場合、火災で家財の全てが焼失しても、受け取れる損害保険金は400万円にとどまるため、家財の全部を購入し直すことはできません。
保険金額を少なくすると保険料も抑えられるので、そのためにあえて選択されることがあります。
2.2.2.保険金額を評価額より高くした場合【超過保険】
評価額より保険金額を高くした保険のことを「超過保険」と呼びます。
たとえば評価額を500万円、保険金額を評価額より高い600万円に設定したとしましょう。
こうすれば、評価額より高い損害保険金を受け取れると期待される方もいるかもしれませんが、残念ながらそうはなりません。
仮に万が一のことが起きて損害保険金が受け取れることになったとしても、保険会社が支払う損害保険金の上限は評価額と同じ500万円までです。残りの100万円分の保険料が無駄になってしまいます。
まとめ
火災保険で言う「家財」の範囲、家財保険の必要性、どこまで補償されるのかについて、持ち家の場合と賃貸住宅の場合との違いにも触れながら、お伝えしてきました。
「家財」は火災保険において、「建物」内にある動かせる財産のことです。
冷蔵庫や洗濯機などの家電や、タンスや机などの家具などは該当しますが、浴槽やエアコン、トイレの便器、畳など、「建物」に取り付けられて外すのが困難なものは含まれません。
また、「動かせるもの」であっても、高額や貴金属や美術品、稿本や図面などの「価値のある紙については、契約時に申請しないと対象になりません。
さらに、持ち家と賃貸住宅とでは、家財保険の必要性についての考え方自体が違います。特に、賃貸住宅の場合は、万が一火災等で家を損傷してしまった場合の貸主に対する損害賠償責任をカバーする「借家人賠償責任特約」の補償が必須なので、絶対に家財保険が必要です。
火災保険において家財の保険金額は、家財の価値をあらわす評価額によって決めます。
評価額の決め方は、家財を改めて新品で購入し直す場合にかかる「新価」を採用することをおすすめします。また、補償対象の家財のそれぞれの金額をリストアップする積算評価と、保険会社のまとめた簡易計算表に従って決める簡易評価があります。積算評価は手間がかかりすぎるので、簡易評価が使われるのが一般的です。
また、保険金額は、損害をしっかりカバーするため、評価額ぴったりに設定することをおすすめします。