火災保険で水漏れの補償を受けられる条件とは

火災保険は、水漏れによる損害が発生した場合にも、保険金を受け取ることができます。

ただし、そもそも契約で補償対象とされていなければ、補償を受けることができません。また、どんな場合でも補償を受けられるわけではありません。

この記事では、水濡れで損害を受けた場合に、火災保険で保険金を受け取れる条件についてお伝えします。

あわせて、どれくらいの保険金を受け取れるかと、手続きの流れについても解説しています。

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保険の教科書 編集部

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1.水漏れで火災保険によって補償を受けられるケース

1-1.水漏れは「風災」か「水ぬれ」で補償

火災保険は、火災が原因となる損害を補償とする保険にみえますが、他にもさまざまな災害・事故に対応しています。

それでは、水漏れは、どのように補償されるのでしょうか。

火災保険では水に関する損害に対する補償として、「風災」「水ぬれ」「水災」に関する補償があります。違いは以下の通りです。

  • 風災:台風や暴風雨等、風が原因の損害
  • 水ぬれ:水道管からの漏水など建物の内部で発生した事故による損害
  • 水災集中豪雨・洪水を原因とする浸水による損害

水漏れは、火災保険のなかでも「風災」「水ぬれ」として保険金を受け取ることができます。

暴風雨等で屋根が壊れて雨漏りがするようになったら「風災」、水道管等が破裂したりして水が漏れてきたら「水ぬれ」です。「水災」は下からの浸水なので、違います。

台風の場合は風と水が両方関係するので紛らわしいですが、「台風は風災、洪水は水災」と覚えておきましょう。

なお、ご参考までに、火災保険は他にも、落雷や雹災(ひょうさい)・雪災(せつさい)、さらには盗難や騒擾(そうじょう)・集団行為による暴力行為に対する被害にも対応しています。

というわけで、以下、「風災」と「水ぬれ」の補償についてお伝えしていきます。

1-2.補償の範囲に含めていないと保険金を受け取れない

火災保険では、契約時に補償の範囲を選択することができます。補償の範囲を広げるほど安心ではありますが、その分保険料が高くなってしまいます。

そこで優先度の低い補償を外して保険料の節約を検討する場合があるのですが、その際に風災・水ぬれの補償を外していれば、当然ながら補償は行われません。自分の家の状況に合わせて設定する必要があります。

一戸建ての場合

一戸建てであれば、風災は必須、水ぬれは付けておくことをおすすめします。

まず、建物の外部がたえず風にさらされているので、風災は最低限付けておく必要があります。

また、水ぬれは、外部からの水漏れのおそれはほぼありませんが、給排水管の破裂のリスクがないわけではありませんので、付けておくことをおすすめします。

なお、火災保険の補償対象となる物は「建物」と「家財」ですが、一戸建ての火災保険の場合、「建物」「家財」の両方に火災保険をかけることをおすすめします。

  • 建物:建物そのもの・門・敷地内のガレージ・倉庫など
  • 家財:家具・家電製品・衣類など

なぜなら、建物はもちろんのこと、家財が損害を受けた場合の修理費用・買い直し費用などもばかにならないからです。

集合住宅の場合

集合住宅はどうでしょうか。

結論から言えば、賃貸アパート・マンションの場合は風災の補償を付ける必要性は乏しいですが、それ以外は風災と水ぬれの補償を両方付けておくことをおすすめします。

以下、賃貸アパート・マンションと、分譲マンションに分けて見ていきましょう。

■賃貸アパート・マンション

まず、賃貸アパート・マンションの場合、風災は必要性が乏しいと言って良いでしょう。なぜなら「建物」はガラス窓やドアも含めそもそも借り物なので火災保険の対象ではありません。「家財」に被害が生じるおそれがあるのは、窓を開けっぱなしにして長時間外出している間に台風が襲ってきた場合くらいでしょう。ほぼ考えられません。

これに対し、水濡れの補償は絶対に付けておくべきです。なぜなら、給排水管の破裂や、隣室・上の居室からの漏水による被害のリスクがあるからです。

■分譲マンション

次に、分譲マンションはどうでしょうか。まず、風災は必要です。なぜなら、「建物」は外面は共用部分ですが、ガラス窓やドアは火災保険の対象だからです。暴風雨等により水漏れ(雨漏り)のおそれはありませんが、窓ガラスが破損し、かつ、内部の家財も濡れるおそれがあります。

これに対し、水ぬれの補償は、給排水管の破裂や他の部屋からの漏水による被害のリスクがあるので、必ず付けておくべきです。

2.水漏れで火災保険の補償が受けられる可能性があるケース

それでは、水漏れで火災保険の補償を受けられるのは、どんなときでしょうか。

主なケースは以下のとおりです。

  • 台風等による雨漏りで自宅や家財が濡れてしまった場合【「風災」で補償】
  • 自宅の水道の破損などで水が出たままとなり、自室が水にぬれた場合【「水ぬれ」で補償】
  • 集合住宅の上階からの水漏れが原因で損害を受けた場合【「水ぬれ」で補償】
  • 自分の部屋の水漏れが原因で階下に損害を与えた場合【「個人賠償責任補償特約」で補償】
  • 集合住宅共有の給水管の故障で水漏れが発生した場合【「水ぬれ」で補償】

以下、1つずつ解説します。

2-1.台風等による雨漏りがして自宅や家財が濡れてしまった場合

台風による洪水などで建物や家財が濡れてしまった場合は、「水災」の補償対象となります。

台風の強い風で窓ガラスが破損し、吹き込んだ雨風により家電製品が濡れ故障してしまったような場合も、火災保険による補償が可能です。

2-2.自宅の水道の破損などで水が漏れて家が水びたしになった場合

自宅の水道が壊れるなどで水が漏れ出たままとなり、床が傷んだり家財が破損してしまったりしてしまう、といったケースが考えられます。

この時も、火災保険によって補償が可能です。

まず、持ち家なら火災保険の「水ぬれ」の補償範囲となります。

一方、賃貸住宅であれば部屋の原状回復の義務があり、火災保険のなかの「借家人賠償責任保険」にて補償が可能です。

「借家人賠償責任保険」は、賃貸住宅であれば契約時に不動産会社からすすめられる火災保険にセットされています。

詳しくは『賃貸住宅で火災保険が義務である理由と自分で選ぶ時のポイント』をご覧ください。

2-3.集合住宅の上階からの水漏れが原因で損害を受けた場合

たとえば、集合住宅の上階が、そこの住人の水道の閉め忘れなどによって水浸しになり、その水が階下の自室まで漏れてくる、といったケースがありえます。

このとき、この水漏れが原因で家財が痛んだり故障したりすれば、上階の住人に賠償を請求することができます。

しかし、相手に支払い能力がなかったり、支払をしてくれなかったりしたらどうでしょうか?

そんなときも、火災保険の「水ぬれ」の補償範囲となり、損害分の補償をしてもらうことができます。

2-4.自分の部屋の水漏れが原因で階下に損害を与えた場合

これは上の例とは逆のケースです。自室の水漏れが原因となり、階下に損害を与えてしまうケースも考えられます。

このような場合は、階下の住人に対する損害賠償をしなければなりませんが、火災保険に「個人賠償責任保険」が含まれていればその分の補償が可能となります。

2-5.マンション・アパートの給水管の故障で水漏れが発生した場合

マンション・アパートで共有している給水管の破損で自室の家財が水漏れを起こしてしまった場合、一般的にはマンション組合が契約している賠償責任保険で補償されることになります。

ただし、その場合の補償は家財の「時価」に対する補償なので、新しく故障した家財を購入するのには足りない可能性が高いです。

その分の差額は、自分の火災保険の「水ぬれ」による補償で保険金を受け取れる可能性があるので、気になる場合は保険会社へ聞いてみるとよいでしょう。

なお火災保険の「時価」「新価」の違いは後ほど改めてお伝えします。

3.水漏れで火災保険の補償が受けられないケース

それでは、次に火災保険による補償が受けられないのはどんな場合でしょうか。

主な例として、次のケースがあげられます。

  • 水漏れの原因となった自室内の水道管を修理する場合
  • 経年劣化・施工不良により水漏れが生じた場合
  • 故意や重大な過失が原因と判断される場合

以下、1つずつ簡単に解説します。

3-1.水漏れの原因となった自室内の水道管を修理する場合

持ち家で、自室の水道が破損して水漏れを起こしてしまった場合を想定しましょう。

この時、水漏れにより損害を受けた床材・家財については、既にお伝えした通り、火災保険の補償対象となります。

これに対し、破損した水道管については、残念ながら火災保険の補償対象ではありません。

修理をするための保険金はおりないので注意しましょう。

なお、別途「水道管修理費用保険金」を特約につけていると、水道管が凍結で破裂した場合に補償をしてくれます。

3-2.経年劣化・施工不良により水漏れが生じた場合

たとえば窓枠やサッシなどが経年劣化や施工不良で破損していて、それによって生じた窓の隙間から水がふきこみ、家財などが損害を受けたとします。

この場合、残念ながら火災保険の補償対象とはなりません。

心配な箇所があれば、なるべく早めに修理しておくようにしましょう。

3-3.故意や重大な過失が原因と判断される場合

たとえば、故意に大量の水をまいて水漏れの損害が出たようなケースでは、火災保険による補償は行われません。

また、故意でないにしても、重大な過失とみなされる内容であれば、火災保険の補償は受けられないので注意してください。

また、たとえばトイレにゴミを流して詰まらせ水漏れが発生してしまった場合など、「故意と同視されるような重大な過失」とみなされる場合も、火災保険による補償は行われません。

4.支払われる保険金の種類と概要

水漏れによる損害が発生した際に、火災保険ではどの程度の保険金を受け取れるのでしょうか。

事故が起こり実際の損害が発生する前に、把握しておきたいところですね。

ここでは、水漏れの損害が生じた際に支払われる保険金の種類とその概要について簡単に解説します。

4-1.保険金の種類

まずは損害を受けた建物・家財を修理したり買い直したりするためにかかる「損害保険金」が支払われます。

ただし、損害が発生した場合、修理・買い替えをする以外にも、出費が迫られることになります。その費用にあてられるのが「費用保険金」です。

主な費用保険金の種類として、以下があげられます。

臨時費用保険金

火災保険の対象となる災害で「臨時に必要となった費用」に対する保険金です。

たとえば、家の修理のために何日かホテルで仮住まいしなければならないこともあるでしょう。

臨時費用保険金ではその際の宿泊費用が補償されます。

残存物取片づけ費用保険金

損害ほ受けた建物や家財の残がいを片付けるのに必要な費用を補償する保険金です。

また、破損した家財を片付ける費用も必要となります。

なお、費用保険金については、必ずしも火災保険に付属しているわけではないので、不安な場合は契約時の書面などで確認してください。

4-2.損害保険金はどのくらい?

次に支払われる保険金はどのくらいになるでしょうか。

その額を把握するのに押さえておきたいポイントを以下にまとめます。

4-2-1.保険金額

支払われる損害保険金の限度額です。

最大でこの金額までは、損害保険金が支払われるということです。

そして、限度額は、建物や家財の評価額によって決まります。

逆に言うと、修理や買い直しのために保険金額以上の費用が必要だったとしても、支払われるのは保険金額までとなるので注意してください。

4-2-2.時価・新価

損害保険金、つまり建物や家財の評価額の計算は、基本的に、被害を受けた物と同等な物を新品で買ったらいくらになるかという基準を用います。「新価」(再調達価格)と言います。

これに対し、経年劣化を計算に入れて低く見積もる「時価」という基準もあります。保険料は抑えられますが、あまりおすすめしませんし、実際の加入例もきわめて少ないのが実情です。

4-2-3.自己負担額

火災保険では「自己負担額」を設定することによって、保険料を抑えることが可能です。

この場合の自己負担額とは、損害が発生した際に自分で負担する費用をさします。

たとえば、30万円分の損害が発生した場合、自己負担額を5万円と設定していれば、受け取れる損害保険金の額は

30万円-5万円=25万円

となります。

5.水漏れで火災保険の保険金を請求する大まかな流れ

それでは、水漏れによる損害が生じた場合、どんな流れで保険金を請求すればよいでしょうか。

ここでは、その流れについて簡単に解説しています。流れを把握できれば、いざというときに速やかに対応できるようになりますね。

①損害があったことを保険会社へ連絡する

はじめに水漏れで損害が生じたことを、契約している火災保険の保険会社へ連絡します。

その際、担当者から以下のことを質問されますので、分かる範囲で答えます。

  • 契約者名
  • 保険証券番号
  • 損害が発生した日時・状況など

このとき、保険金を請求するのに必要となる書類と、今後の手続の流れについて案内を受けます。

②保険金の請求に必要な書類をそろえて提出する

保険会社の指示に従い、書類を準備して提出します。このとき提出する主な書類は以下の通りです。

  • 保険金請求書:保険会社が用意する書類に記入する。
  • 罹災証明書:罹災した事実や被害の内容を証明する書類。管轄の消防署・消防出張所で発行してもらう。
  • 写真:被害の状況を撮影した画像データ等があれば提出する。
  • 修理見積書(報告書):修理業者から見積もりを取る。

③保険会社による現場調査と審査

保険会社から損害鑑定人や調査員が派遣され、申請された内容が正しいかどうか判断するため現場調査が実施されます。

鑑定人・調査員は報告書に現地調査の結果をまとめ、保険会社がその調査結果をもとに、保険金を支払うかどうかを決めます。

④保険金を受け取って修理を実施する

保険金を受け取れたら、そのお金で修理などを行います。上述したとおり、必ず申請した保険金が受け取れるとは限らないので、保険金を受け取った後に修理などを実施することをおすすめします。

まとめ

水漏れが起きた場合、火災保険の「風災」または「水ぬれ」で補償を受けられる可能性があります。

水道の破損で部屋が水浸しになり、家財などが破損した場合は「水ぬれ」、台風の強い風で屋根が損傷してしまった場合は「風災」として、補償の対象となります。

賃貸アパート・マンション以外は、いずれも補償対象としておくことをおすすめします。

ただし、家財や建物の破損が、経年劣化のみが原因であったような場合などでは、補償が行なわれません。

火災保険で水漏れによる補償を受けたいときは、このページでまとめたように、どんな場合に補償が受けられてどんな場合にうけられないのかチェックしてみてください。

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