家財保険とは?知っておきたい補償内容とその役割

火災保険について考える際に、「家財」という言葉を目にすることとなります。

家財保険とは、住宅内にある「家財」の不慮の火災、自然災害、事故による損害に備えるための保険です。

「家財」という言葉から、なんとなく「家にある財産」ということはイメージできますが、実際どういったものを指すのか把握していない人も多いでしょう。

また、家財を補償してくれる「家財保険」が、どういった補償内容で、加入することでどんな災害について備えることができるのか、いまいち理解していないという人も少なくないはずです。

そこで今回は、「家財保険」について、保険の概要と補償内容を解説していきます。

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保険の教科書 編集部

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1.家財保険とは

家財保険とは、住宅内に存在する「家財」について、火災や災害、事故による損害に備えるための保険です。

火災保険と地震保険の基本的な補償内容の一つで、自然災害や、盗難などの人災による家財の損害を補償してくれます。

1.1.「家財」は家具や家電、衣類などのうち「動かせるもの」

家財保険について知る上で理解しておかなければならないのが、「家財」は何をさすかということです。

家財というと、家の中にある財産全てを指す言葉だと思いがちですが、実際のところはそうではなく、しっかりと定義があります。

「家財」として補償を受けられるものは、タンスや机などの家具、パソコンや洗濯機、冷蔵庫などの電化製品、衣類などです。ただし、「動かせるもの」に限ります。

家に取り付けられていて外すのが困難なものは、「家財」としては扱われないのです。

たとえば、エアコンやトイレの便器、浴槽、ふすまや畳、カーテンなどは家財ではなく「建物の一部」として扱われるのです。

建物内にエレベーターやリフトがある場合も同様です。

また、自転車と、125㏄以下の原動機付自転車は、ふだん駐輪場等に留めてあるならば「家財」として扱われます。

対して、125cc超の自動二輪車や自動車は「家財」に含まれないので注意しましょう。

1.2.高額な貴金属や有価証券は家財にならない場合がある

もし、家に高額な貴金属や宝石、有価証券や仕事で作成している図面などの「財産的価値のある紙」がある場合は注意が必要です。

これらの財産は「明記物件」と呼ばれ、火災保険加入時に申請しておかなければ、補償対象から外れてしまう場合があります。

地震保険については火災保険と扱いが違い、「明記物件」を補償対象に含める事ができません。これは、地震保険の補償対象が「建物および生活用動産」に限られるためです。

「明記物件」は通常、日常生活に使うものではないため、地震保険の補償対象から外れてしまっているのです。

「明記物件」にあたるのは、以下のようなものです。

  • 1個あたり、または1組あたりの価格が30万円を超える貴金属や宝石、美術品など
  • 稿本や設計書、図案、有価証券や証書、帳簿など

家財に火災保険をかける際に、これらの物を補償対象としたいのであれば、申請漏れのないよう注意しましょう。

1.3.賃貸では家財保険への加入が義務

持ち家の場合は火災保険への加入が強制ではありませんし、加入するとしても家財を補償対象にしないという選択を取ることもできます。

しかし、賃貸物件に居住する場合はそうは行きません。

賃貸物件に住む場合、ほぼ確実に契約段階で家財保険への加入を義務付けられます。

それは、借主の家財を守るために入っておいた方が良いというのもありますが、義務付けられている理由は、むしろ貸主のための特約「借家人賠償特約」です。

「借家人賠償特約」は、借主の過失による火災や水濡れによって建物に損害を与えてしまった場合に、貸主に対する賠償金等の費用を補償してくれる特約です。

賃貸の場合、建物の持ち主はあくまで貸主であり、借主は賃貸契約の上で、貸主に対して「原状回復義務」を負わなければなりません。

「原状回復義務」とは、居住者が賃貸契約が終了した際、賃貸物件を入居時と同じ状態に戻さなければならないというものです。

この契約によって、部屋で火災を起こして建物に損害を与えてしまった場合、貸主に対して損害賠償責任を負うことになります。その時、借主に賠償金を払う能力がないと、貸主にとっても借主にとっても不幸なことになります。

「借家人賠償特約」は貸主に対して損害賠償責任を負ってしまった場合の賠償金をカバーしてくれるので、居住者と貸主双方にとって重要な特約なのです。

もしもの事故に備えるために、賃貸契約の際に家財保険への加入が義務付けられるのは当然といえるでしょう。

2.家財保険の補償内容について

家財保険の意味がわかったところで、どこまで補償してくれるのか、保険の補償内容について見ていきましょう。

2.1.保険金額は家財の金額に応じて設定ができる

まずは、家財保険の保険金額についてです。家財保険の保険金額は、家財の「評価額」から計算されます。

損害が発生した際には、評価額を上限として、被害の度合いに合わせた保険金を受け取ることが可能です。

評価額は、基本的に「新価」(再調達価額)という基準で計算されます。

「新価」とは、家財を新品で購入し直した場合の金額で評価する評価基準です。要は、家財が損害を受けてしまったとしても、ほぼ取り返すことができるということになります。

とはいえ、所有している家財を1つ1つ細かく評価するのは大変です。そこで、多くの場合、一応の目安として「簡易計算表」を使います。

簡易計算表は、保険会社が打ち出している、世帯ごとにおける家財評価額の目安です。

以下はA損保の簡易計算表です。

単身世帯
(面積無関係)
2人以上世帯(延床面積)
20㎡未満 20㎡~
30㎡未満
30㎡~
40㎡未満
40㎡~
50㎡未満
世帯主年齢 29歳以下 290万円 290万円 360万円 420万円 490万円
30歳~34歳 290万円 390万円 480万円 560万円 650万円
35歳~39歳 290万円 540万円 660万円 780万円 900万円
40歳~44歳 290万円 660万円 800万円 940万円 1,080万円
45歳~49歳 290万円 750万円 910万円 1,070万円 1,230万円
50歳以上 290万円 790万円 960万円 1,130万円 1,300万円

こういった簡易計算表に従っておけば、大きく外れることはないはずです。

ただし、新社会人やミニマリストなど、実際の家財の総額がこの簡易計算表の額よりも明らかに安いという人もいるでしょう。

そういった場合は、家財の評価額を計算した方が保険料が安くなる可能性があります。

保険金額は保険料の金額にも関わってくるので、よく理解しておきましょう。

2.2.家財保険の補償範囲について

次に、家財保険でどのような災害に備えることができるのかを見ていきましょう。

家財保険の補償範囲は意外なほど幅広く、すぐに頭に浮かぶような災害はもちろん、盗難などの人災や、対人トラブルなどについても対応することが可能です。

ざっと挙げるだけで、以下のような補償範囲があります。

①火災・落雷・破裂・爆発

まずは、火災保険のベースとなる補償範囲といえる火災や落雷、ガス爆発などの爆発事故についての補償です。

直接的な損害はもちろん、落雷が原因で電化製品がショートしてしまった場合などや、スプレー缶の破裂による損害等、細かいところまで補償されます。

②風災・雹災・雪災

暴風雨や豪雪など、空からの脅威に対して補償してくれます。

「風災・雹災・雪災」の補償範囲は、台風や暴風雨等によって建物の外側の部分が破損したために生じた雨漏りや、暴風で窓が割れ家財が濡れてしまった場合などに限られ、一度地上に降り注いで起こる洪水や土砂崩れなどの災害は含まれません。

③水災

洪水や高潮、土砂崩れなど、水が原因で発生する災害に備えることができるのが「水災」です。

「風災・雹災・雪災」とは逆に、補償される範囲が「地上から発生する災害」に限られます。

例えば、「風災・雹災・雪災」で述べたような、川の氾濫による洪水や融雪洪水は「水災」に含まれますが、暴風雨による雨漏りなどは「風災」にあたるので注意しましょう。

④水濡れ

給排水設備、つまり水道管などの故障による水濡れや、マンションなどで上階からの水濡れ被害が原因で、建物や家財などに損害があった場合について補償してくれます。

自然災害による損害については補償されません。

⑤盗難や衝突事故などの人災

盗難や自動車が家に突っ込んでくる事故など、「人災」についての補償です。

特に都心で住む場合に発生しやすいリスクなので、必要に感じる人は多いでしょう。

⑥汚損・破損等

家の内部で起こる事故について補償してくれます。

掃除機でテレビやパソコンのコード類を引っ掛けてしまい、落下によって破損させてしまった場合や、子供が遊んでいる中で、窓ガラスを割ってしまった場合など、家の中で起こる事故は意外と多く、付けておくと安心な補償です。

⑦地震災害

地震保険を家財にかけることで、地震が原因となる災害に備えることができます。

具体的には、地震による倒壊や、地震が原因で発生して起こる津波などです。

先に述べたように、「明記物件」は地震保険の補償に入らないので注意しましょう。

家財の地震保険については詳しくは「地震保険とは?加入率の現状と基本のしくみ・必要性」をご覧ください。

2.3.建物の構造級別によって保険料が変わる

家財保険は建物の構造級別によって保険料が変化します。

具体的には、家財がある建物が木造のものよりは鉄骨やコンクリートで組まれたものの方が、保険料が割安です。なぜなら、建物が丈夫な方が、災害による損害リスクを抑えられるからです。

構造級別は住宅の種類や構造によって、「M構造」、「T構造」、「H構造」の3種類に分類されます。

自分の家の構造がどれにあたるかは、持ち家ならば家の売買契約書、借家なら賃貸借契約書をご覧ください。

構造級別は、以下の通り分類されています。

構造級別 意味
M構造 共同住宅(マンション・アパート)で、鉄筋コンクリート造等、耐火性のある素材で造られたもの
T構造 ①戸建て住宅で、鉄筋コンクリート造等、耐火性のある素材で造られたもの
②鉄骨造の共同住宅で、耐火性に関する基準(耐火構造・準耐火構造等)をみたさないもの
③木造の共同住宅・戸建て住宅で、耐火性に関する基準(耐火構造・準耐火構造等)をみたすもの
H構造 木造の一戸建て・共同住宅で、耐火性に関する公的な基準を一切みたさないもの

保険料はM構造が最も安く、T構造、H構造と高くなっていきます。

まとめ

家財保険についてお話してきました。

家財とは「家財」は家具や家電、衣類などの中で「動かせるもの」です。

家財には火災保険と地震保険をかけることができます。

家財に対する保険の補償範囲は幅広く、自然災害だけでなく人災などにも備えることが可能です。

もし万が一のことがあった場合、家財を買い揃え直すとすると、想像以上にお金がかかる可能性があります。

有事に備え、家財に保険をかけることは、日常生活を安心して過ごす手段としてとても有用です。

持ち家で家財保険に加入していない人は、今一度契約を検討してみても良いでしょう。なお、賃貸物件の場合、加入は事実上義務となっています。それは建物に損害を与えてしまった場合に貸主への賠償責任をカバーする「借家人賠償特約」を備えることが目的です。

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