エステティシャンの仕事は、お客様の顔や身体に直に触れるので、細心の注意が必要です。
最近では価格競争が進み、低価格でサービスを提供する店舗が増える一方、エステティシャンの技術が伴わず、事故が起きてしまったようなケースもあります。
事故が起きてしまうと、お客様に多額の賠償責任金を支払う必要が出てきたり、場合によっては営業停止になったりする可能性があります。これは会社にとって大きな痛手となります。
この記事では、エステティック業における様々なリスクをカバーする保険について具体例を挙げながら、分かりやすく説明していきます。ぜひ最後までお読みいただきご参考になさってください。
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私たちは、お客様のお金の問題を解決し、将来の安心を確保する方法を追求する集団です。メンバーは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持っており、いずれも現場を3年以上経験している者のみで運営しています。
1. エステ業が最低限入っておくべき3つの賠償責任保険
何をおいても最初に備えていただきたいのは、以下の3種類の賠償責任保険です。
それぞれについて説明します。
1.1. 施設賠償責任保険
まず、施設賠償責任保険です。これは以下のようなケースをカバーします。
- 施術ミスが原因で起きた事故
- 店鋪の管理ミスから起きた事故
1.1.1. エステティシャンの施術ミスが原因で起きた事故に対する補償
エステの現場において最もリスクが大きいのが、施術ミスが原因となる事故ではないでしょうか。
【具体例】
- アロマテラピーのオイルが原因で、お客様が肌荒れを起こし治療費を請求された。
- リフレクソロジーを受けたお客様から、「施術後に足が痛くなった」とクレームがあり、賠償責任問題になった。
このような場合、施設賠償責任保険に加入していれば、賠償責任金についてカバーすることができます。保険料が安いというのもありますが、エステの経営者の方にはぜひ備えていただきたい保険です。
1.1.2. 店舗の管理ミスから起きた事故に対する補償
施設賠償責任保険では、その名の通り、店舗など「施設」の管理が行き届いておらず、お客様等に損害を与えてしまった時の賠償責任もカバーします。
【具体例】
- 床が濡れていたため、お客様が滑って転んでしまい、ケガをした。
- サロン内の機材が倒れて、お客様にケガをさせてしまった。
施設賠償責任保険はこのように、施術ミスによる事故と店鋪の管理ミスからくる事故による賠償責任をカバーします。詳細については『施設賠償責任保険とは?意外に知らない補償内容と必要性』をご覧ください。
1.2. 受託者賠償責任保険
受託者賠償責任保険は、エステなどの施術中にお客様からお預かりした荷物を無くしたり、壊したり、汚したり、盗まれてしまったりした時の損害賠償金をカバーする保険です。
【具体例】
- お客様からお預かりしたバッグを紛失してしまった。
- お客様からお預かりしたメガネを壊してしまった。
受託者賠償責任保険については詳しくは『受託者賠償責任保険とは?対象となる会社と補償内容』をご覧ください。
1.3. PL保険(生産物賠償責任保険)
エステでは現場での施術以外に、自宅で使用することのできる商品を販売していることがあります。店舗で販売している商品が原因で、お客様に損害を与えてしまった時の賠償責任を補償してくれるのがPL保険(生産物賠償責任保険)です。
【具体例】
- 化粧品を購入したお客様が肌荒れを起こしてしまい、病院で治療を受けた。
- エステサロンで販売したマッサージ器具に不具合があり、お客様がケガをした。
生産物賠償責任保険については『PL保険とは?基本の補償内容と組み方のポイント』をご覧ください。
2. 店舗や設備の損害に備える火災保険
ここまでは、お客様に対して損害を与えてしまった時の補償をご紹介させていただきました。ここからは、店舗そのものや設備の損害に備える補償について確認していきましょう。
2.1. 店舗総合保険|店鋪用の火災保険
まず、店鋪の損害に備える火災保険「店鋪総合保険」です。特徴は、一般的な火災保険と比べて設備や商品の補償が手厚いことです。
そもそも、火災保険とは、建物や設備、資材・商品などが「火災や落雷、爆発など」によって被害を受けた時に補償される保険です。しかし、これに対し、店舗総合保険では、「水漏れ、自然災害である台風などの水害」まで補償の対象が幅広くなります。
また、建物に限らず、商品や設備の損害も幅広く補償されます。エステで使用される専用機械は数十万円するものも珍しくありませんから、もしもの時に補償となれば安心ですよね。
注意が必要なのは、自宅の一室をエステサロンとして開業しているような場合です。住宅用の火災保険では店舗部分は補償の対象外となってしまうので、店舗総合保険への加入がおすすめです。
2.2. 事業活動総合保険|休業損害までカバーする
店舗総合保険と非常によく似ているのが、事業活動総合保険です。店鋪総合保険との違いは、火災などで店舗が休業に追い込まれてしまった時の利益の減少や、営業再開時にかかる臨時費用などもカバーしてもらえる点です。
ただし、従業員が火災に巻き込まれて仕事ができなくなった場合の治療費等はカバーされません。そのような時の補償は「業務災害補償保険」などで備えると良いでしょう。
事業活動総合保険についての詳しい解説は『事業活動総合保険とは?休業損害・損害賠償もカバーする保険』をご覧ください。
2.3. 事業用の地震保険|地震危険補償特約
最後に、地震保険についてお伝えします。
事業用の地震保険は、「地震危険補償特約」と言います。単体では加入できず火災保険にプラスして加入するものです。
一般的な住まいのための地震保険とは違います。住まいのための「地震保険」は、どの損害保険会社も、国から資金のサポートを得て、公的な制度として運営しています。
しかし、事業用の「地震危険補償特約」は、国からのサポートはありません。あくまでも一部の損害保険会社が善意で作り運営している私的なものです。
3. 保険種類の選び方と確認しておきたい注意点
最後になりましたが、保険種類の選び方のポイントと、エステ業種ならではの注意点についてご説明いたします。
3.1. エステ専門の保険に加入する
ここまでお読みになって、「いちいち組み合わせるのは面倒だから、エステ業向けのパッケージのようなものはないか」とお考えの方もいらっしゃることと思います。
そのようなニーズのために、たとえば一般社団法人日本医療・美容研究協会の「JMB保険制度」のようなパックの補償もあります。
とはいえ、エステ業に特化した補償以外に、企業としてのリスクに備える必要もあるでしょう。そういった場合には、組み合わせで検討をすることも必要となります。
繰り返しにはなりますが、最適な保険選びをすることはとても重要になりますから、保険選びに迷った時は、信頼できる担当者とじっくり相談をしてご決断をお願いいたします。
3.2. 対象となるエステ行為を必ず確認する
エステティック業の保険を選ぶ場合、きちんとその保険の補償の対象になっているかを確認することが大切です。
冒頭でも触れたように、エステといってもその内はさまざまです。
簡単に申し上げますと『医療行為とみなされるような行為については補償の対象外』となっています。
対象となる主な業務
ヘアカット、顔剃り、ヘアマニキュア、ボディマッサージ、フットケア、リフレクソロジー、アロマテラピー、 ワックス脱毛、ネイルアート、ハンドケア等
対象とならない主な業務
美容整形、レーザー脱毛、光脱毛、柔道整復術、はり・きゅう、ピーリング、整体、あん摩マッサージ指圧師によるマッサージ、 カイロプラクティス、アートメイキング等
ただし、ここで挙げた「対象とならない主な業務」にあたるものでも、使用する機械の種類や利用状況によっては補償となることもあるようです。例えばレーザー脱毛では、効果や特性が異なる3種類の機械が存在します。補償の対象となるかどうか、保険会社や担当者にご確認いただきますよう、お願いいたします。
まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。この記事では、エステ業に関する保険についてお伝えしてきました。
エステは主に女性を対象としたものが多いですが、最近では男性向けのメンズエステなるものも登場しており、市場を賑わせているようです。
経営者の方にとってはビジネスチャンスが拡がるわけですが、もし万が一の事故が起きてしまったら、会社にとって損失になるだけでなく、大切なお客様に一生の負担をかけてしまうようなことにもなりかねません。
エステ業については、大きく分けて、主にお客様への賠償責任をカバーする保険と、店舗や商品に対してかける火災保険の2つがあります。ただし、エステといってもサービス内容は多種多様なものがあります。
実際の業務内容に合わせて最適な組み合わせを備えていただくよう、お願いいたします。