火災保険の解約手続の注意点|タイミングと解約返戻金について

火災保険は、最長10年までの長期契約ができます。その際、保険料はまとめて払い込むことになります。

しかし、仕事の転勤など、急な引っ越しをする必要が出てきた時に、同時に火災保険も解約しなければなりません。そういった場合、どんな手続が必要なのか、また、残りの期間の分の保険料を返してもらえるのか、気になります。

そこで今回は、火災保険の解約の手続をする時に注意しておきたいこと、特に解約のタイミングと、解約返戻金がどれだけ返ってくるかについて解説します。

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保険の教科書 編集部

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1.火災保険の解約方法

火災保険を解約するには、担当代理店、もしくは損害保険会社へ自分で連絡します。

賃貸住宅で、不動産会社に火災保険を仲介してもらっていた場合も、同じ方法で大丈夫です(不動産会社が保険の代理店となっている場合もあります)。

その後、保険会社から解約に必要な書類が送られてくるため、書類に記入と捺印をした上で返送すれば手続きが完了します。

金融機関の質権を設定している場合は報告を

ただし、金融機関の質権を設定している場合は、その前に別の手続が必要です。

質権の設定とは、住宅ローンの貸主の金融機関に対し、火災保険の保険金を受け取る権利を、担保として渡すことです。

火災等で家が滅失してしまった場合でもローンの支払いを確保するために行われます。

詳細については「火災保険の質権設定って何?概要と注意点まとめ」をご覧ください。

もし火災保険に金融機関の質権を設定している場合、まずその金融機関へ、火災保険を解約することを報告しなければなりません。

金融機関が解約を許可すれば「質権消滅承認請求書」が送られます。

その書類に必要事項を記入・捺印して返送すると、今度は「質権抹消書類」が送られてきます。

この書類が手元にある状態で初めて、損害保険会社や代理店へ連絡して解約手続ができるようになるのです。

2.解約のタイミングはいつにするか

次に、火災保険を解約の手続のタイミングをいつにするべきか、持ち家の場合と、賃貸物件の場合のそれぞれについて解説します。

2.1.持ち家の場合

持ち家で火災保険を解約するケースには、以下の2つのパターンがあります。

  1. 引っ越しで古い火災保険の契約を解約する場合
  2. 保険の見直しの場合

2.1.1.引っ越しで古い火災保険を解約する場合

まず、引っ越しに伴い古い火災保険を解約する場合、建物の所有権を次の持ち主に移した後で行います。

なぜなら、建物に何か損害が発生した時、その損害の負担を負うのは所有権者だからです。

もし、建物の所有権がまだ自分のところにあるタイミングで建物が滅失したら、火災保険がなければ、元の状態に回復するための費用を自分が全て負担しなければなりません。

新しい住宅用に火災保険に加入していたとしても、その火災保険でカバーできるのは新しい住宅の損害だけです。元の住居はカバーされません。

2.1.2.保険の見直しの場合

引っ越し以外でも、よりコストパフォーマンスのよい内容で契約し直したり、他社に乗り換えたりするために、古い火災保険の契約を解約することがあります。

この場合は、新しい火災保険の契約が成立してから古い火災保険を解約します。

そうしなければ、火災保険の補償が受けられない期間ができてしまいます。万が一、その期間に火災等の災害・事故にあってしまったら目も当てられません。

2.2.賃貸契約の場合

賃貸住宅から別の賃貸住宅に引っ越す場合、新居の方で新しい火災保険に加入することになります(元の火災保険を継続できる場合もあります。詳しくは後述します)。

この場合、新居の火災保険へ加入したからといって、すぐに旧居の火災保険の契約を解約してはいけません。転居が終わっただけでなく、旧居の賃貸借契約が完全に終了してから解約しなければなりません。

なぜなら、賃貸住宅向けの火災保険の契約は、あくまで住宅ごとに行う必要があるからです。

もし火災保険の解約のタイミングを間違えたらどうなるか、賃貸住宅向けの火災保険にセットされている借家人賠償責任保険を例に考えてみましょう。

借家人賠償責任保険とは、契約者が火災等で賃貸物件に損害を与えてしまった場合に、貸主に対する損害賠償金を補償するための保険です。

旧居の火災保険を解約した後に火災を起こし、損害賠償の責任が発生してしまった場合、新居の火災保険の借家人賠償責任保険を利用することはできません。

したがって、旧居の火災保険の契約は、旧居の賃貸契約が終了した後に解約するようにしてください。

なお、賃貸向けの火災保険については詳しくは「賃貸住宅で火災保険が義務である理由と自分で選ぶ時のポイント」をご覧ください。

3.火災保険の解約返戻金はどう決まるのか

解約返戻金とは、保険を解約した時に返ってくるお金のことを指します。火災保険の場合、いつでも解約でき、解約した時期に応じて適切な解約返戻金が支払われるようになっているのです。

なぜなら、たとえば、加入時に火災保険の契約期間を10年に設定したとしても、1年たたずにその建物を利用する必要がなくなることは十分ありえるからです。そういう場合に「10年契約だから」といって火災保険だけ存続させるのは非常識なので、残りの期間の分のお金はきちんと返ってくるようなしくみになっているのです。

3.1.基本的には残りの期間の分がきっちり返ってくる

解約返戻金の金額は保険会社によって差がありますが、基本的な計算方法の考え方は同じです。

ざっくりとしたイメージとしては、保険料総額から、それまでの期間の保険料を月割で計算した額を差し引いて、残りの額を受け取れると考えていただければ差し支えありません。

ただし、覚悟しておいていただかなければならないことがあります。それは、加入時に決めた契約期間が長ければ長いほど保険料を割引してもらえているので、その分、解約した際に受け取れる額が若干少なくなるということです。

また、「月割」なので、満期まで1ヶ月を切った時点で解約する場合は、基本的に解約返戻金は1円も受け取れないと考えてください。

なお、一応、計算方法の理屈も紹介しておきますと、以下の2つの要因により、解約返戻金のうち何%返してもらえるかという「返戻率」が決まります。

  • 保険の契約期間
  • 契約してからの経過年数

この返戻率を、保険料総額にかけて算出します。

ただ、先ほどお伝えしたように、「月割で計算して残りの期間の分を受け取れる」と考えていただけば、まず間違いありません。

また、当然のことですが、保険の解約は自己申告です。

引っ越し等で火災保険が不要になったにもかかわらず解約の手続をせず放置していると、その分、解約返戻率が下がっていってしまい、結果的に損をしてしまいます。

火災保険を解約することが決定したら、すぐに保険会社に連絡して、解約の旨を伝えるようにしましょう。

3.2.地震保険も解約返戻金を受け取れる

地震保険についてもお伝えしておきます。

地震保険は火災保険に特約として付ける形でなければ加入できません。そして、本体の火災保険と同様、保険期間が長くても任意で解約でき、それに応じた解約返戻金を受け取ることもできます。

保険料総額から、それまでの期間の保険料を月割で計算した額を差し引いて、残りの額を受け取れるというイメージです。

ただし、地震保険は国が運営しているため、解約返戻金の返戻率は全ての保険会社で一律です。火災保険のように保険会社ごとに違うということはありません。

3.3.「特約」など一部だけ解約する場合でも解約返戻金を受け取れる

もし、保険の契約期間中に必要のない「特約」を部分的に解約したり、補償内容を減らして保険料が減額された場合でも、部分的な解約と見なされ、差額分の解約返戻金を受け取ることができます。

4.火災保険の解約返戻金の算出方法

先に述べたように、火災保険の解約返戻金は

  • 契約時の保険料×解約返戻率

で計算されます。

ここで重要になるのが解約返戻率ですが、実際のところ、保険の契約期間と経過年数でどのように変化するのでしょうか。

地震保険も合わせて見ていきましょう。

4.1.火災保険の返戻率の変動例

以上を前提として、解約返戻率が加入期間に応じてどのように変化するのか、平成27年度におけるA損保のデータをもとに見ていきましょう。

2年契約の場合

経過月数
年数
1年目 2年目
1ヶ月 87% 43%
2ヶ月 81% 39%
3ヶ月 76% 35%
4ヶ月 71% 31%
5ヶ月 65% 27%
6ヶ月 63% 23%
7ヶ月 60% 19%
8ヶ月 57% 16%
9ヶ月 54% 12%
10ヶ月 52% 8%
11ヶ月 49% 4%
12ヶ月 46% 0%

5年契約の場合

経過月数
年数
1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
1ヶ月 94% 76% 57% 38% 18%
2ヶ月 92% 75% 55% 36% 16%
3ヶ月 90% 73% 54% 34% 15%
4ヶ月 88% 71% 52% 33% 13%
5ヶ月 86% 70% 50% 31% 11%
6ヶ月 84% 68% 49% 29% 10%
7ヶ月 83% 67% 47% 28% 8%
8ヶ月 82% 65% 46% 26% 7%
9ヶ月 81% 63% 44% 25% 5%
10ヶ月 80% 62% 42% 23% 3%
11ヶ月 79% 60% 41% 21% 2%
12ヶ月 78% 59% 39% 20% 0%

10年契約の場合

経過月数
年数
1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
1ヶ月 97% 88% 78% 69% 59%
2ヶ月 96% 87% 78% 68% 58%
3ヶ月 95% 86% 77% 67% 57%
4ヶ月 94% 86% 76% 66% 57%
5ヶ月 93% 85% 75% 66% 56%
6ヶ月 92% 84% 74% 65% 55%
7ヶ月 92% 83% 73% 64% 54%
8ヶ月 91% 82% 72% 63% 53%
9ヶ月 91% 82% 72% 62% 53%
10ヶ月 90% 81% 71% 62% 52%
11ヶ月 89% 80% 70% 61% 51%
12ヶ月 89% 79% 70% 60% 50%
経過月数
年数
6年目 7年目 8年目 9年目 10年目
1ヶ月 49% 39% 29% 19% 9%
2ヶ月 48% 39% 29% 19% 8%
3ヶ月 48% 38% 28% 18% 8%
4ヶ月 47% 37% 27% 17% 7%
5ヶ月 46% 36% 26% 16% 6%
6ヶ月 45% 35% 25% 15% 5%
7ヶ月 44% 34% 24% 14% 4%
8ヶ月 44% 34% 24% 14% 3%
9ヶ月 43% 33% 23% 13% 3%
10ヶ月 42% 32% 22% 12% 2%
11ヶ月 41% 31% 21% 11% 1%
12ヶ月 40% 30% 20% 10% 0%

これらの数値は端日数が切り上げされます。たとえば、6ヶ月と10日で解約した場合、7ヶ月加入したと扱われます。

4.2.地震保険の返戻率の変動について

続いて、火災保険と合わせて加入することの多い地震保険についても見ていきましょう。

地震保険の解約返戻率は以下の通りです。

2年契約の場合

経過月数
年数
1年目 2年目
1ヶ月 91% 44%
2ヶ月 87% 40%
3ヶ月 84% 36%
4ヶ月 80% 32%
5ヶ月 76% 28%
6ヶ月 72% 24%
7ヶ月 68% 20%
8ヶ月 64% 16%
9ヶ月 60% 12%
10ヶ月 56% 8%
11ヶ月 52% 4%
12ヶ月 48% 0%

5年契約の場合

経過月数
経過年数
0年 1年 2年 3年 4年
1ヶ月 96% 77% 58% 38% 18%
2ヶ月 94% 75% 56% 36% 17%
3ヶ月 93% 74% 54% 35% 15%
4ヶ月 92% 72% 53% 33% 13%
5ヶ月 90% 72% 51% 31% 12%
6ヶ月 88% 69% 49% 30% 10%
7ヶ月 87% 67% 48% 28% 8%
8ヶ月 85% 66% 46% 26% 7%
9ヶ月 84% 64% 44% 25% 5%
10ヶ月 82% 62% 43% 23% 3%
11ヶ月 80% 61% 41% 21% 2%
12ヶ月 79% 59% 40% 20% 0%

火災保険と比べても、ほとんど差がないことがわかります。

まとめ

火災保険を解約する場合、古い火災保険を解約するタイミングは、持ち家か借家か、転居か保険の見直しかによって異なります。

契約期間の途中で解約したとしても、余った契約期間に応じた解約返戻金が戻ってくるため、大きな損が出てしまうことはありません。

必ずしも全額が戻ってくるわけではありませんが、全額に近い額が返却されます。

なお、火災保険とセットにして加入する地震保険も、途中解約すれば解約返戻金を受け取れます。

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