加入前に知っておくべき!医療保険のしくみとは

生命保険文化センターが公開した「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」(P82)によれば、民間保険の加入目的のトップは「医療費や入院のため(57.1%)」とのことです。

この調査結果をみても、医療保険に対する世間の関心が高いことが分かります。

ただし、医療保険のしくみについては、十分に広まっているとは言えません。また、公的医療保険があるので、民間の医療保険を選ぶ前に、まずそちらのしくみを把握しておくべきです。

この記事では、公的医療保険・民間の医療保険のそれぞれがどんなしくみになっているかを説明した上で、医療保険を選ぶ時はどんな点に着目すれば良いかもお伝えします。

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保険の教科書 編集部

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1.日本は公的な医療保険が充実している

日本は公的な医療保険制度が手厚く、公的医療保険で医療費の大部分がカバーされるしくみになっています。

なので、民間の医療保険を検討する前に、まずは公的保険によって医療にかかる費用がどれだけカバーされるのかを知っておいていただく必要があります。

1-1.医療費の自己負担は3割以下

病気やケガで治療を受けた際の医療費は、原則として、自己負担が3割以下に抑えられています。

残りの7割以上は、公的な医療保険がカバーしてくれています。

6歳(義務教育就学前)以下 6歳~70歳 70歳~75歳 75歳以上
2割負担 3割負担 2割負担
※現役並の所得者は3割負担
1割負担
※現役並の所得者は3割負担

1-2.医療費の自己負担額には1ヶ月あたりの上限がある

医療費の3割負担だけでなく、公的な医療保険により医療費が毎月一定額以上を超えた場合は、その差額が返金されることになっています。高額療養費制度です。

上限額に関しては、その人の所得額によって以下のように決まっています。

所得区分 自己負担限度額 多数該当
区分ア
(標準報酬月額83万円以上の方)
(報酬月額81万円以上の方)
252,600円+(総医療費-842,000円)×1% 140,100円
区分イ
(標準報酬月額53万円~79万円の方)
(報酬月額51万5千円以上~81万円未満の方)
167,400円+(総医療費-558,000円)×1% 93,000円
区分ウ
(標準報酬月額28万円~50万円の方)
(報酬月額27万円以上~51万5千円未満の方)
80,100円+(総医療費-267,000円)×1% 44,400円
区分エ
(標準報酬月額26万円以下の方)
(報酬月額27万円未満の方)
57,600円 44,400円
区分オ(低所得者)
(被保険者が市区町村民税の非課税者等)
35,400円 24,600円
所得区分 自己負担限度額 多数該当
区分ア
(標準報酬月額83万円以上の方)

(報酬月額81万円以上の方)
252,600円+(総医療費-842,000円)×1% 140,100円
区分イ
(標準報酬月額53万円~79万円の方)

(報酬月額51万5千円以上~81万円未満の方)
167,400円+(総医療費-558,000円)×1% 93,000円
区分ウ
(標準報酬月額28万円~50万円の方)

(報酬月額27万円以上~51万5千円未満の方)
80,100円+(総医療費-267,000円)×1% 44,400円
区分エ
(標準報酬月額26万円以下の方)

(報酬月額27万円未満の方)
57,600円 44,400円
区分オ(低所得者)
(被保険者が市区町村民税の非課税者等)
35,400円 24,600円

(参照元:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」)

標準報酬月額が28~50万円の方であれば、治療費の自己負担額は1ヶ月あたり「80,100円+(総医療費-267,000円)×1%」に抑えられるのです。

総医療費が100万円と高額になったとしても、上の式で計算すると、医療費の自己負担額は87,430円です。

この程度なら無理なく支払えるという方が多いと考えられます。

2.問題は公的な医療保険でカバーできない部分

このように、日本では公的な医療保険が手厚く、医療費のかなりの部分がカバーされます。

民間の医療保険でカバーするのは、公的な医療保険でカバーされない部分です。

どんなものがあるのか見ていきましょう。

2-1.治療が長引くと高額療養費制度があっても負担が大きくなる

前述の通り、高額療養費制度では一定の上限額を超えた分の医療費を公的保険が負担してくれますが、逆に言えば上限額までは自身で負担する必要があります。

たとえば標準報酬月額28万円~50万円の方であれば、1ヵ月の自己負担額は「80,100円+(総医療費-267,000円)×1%」です。

この負担が1~2ヵ月ですむのであれば、あまり問題ないかもしれません。しかし、病気によっては長期的な療養を強いられる場合もあります。

働くことができず、収入が途切れてしまう可能性もあります。もちろん、一定の障害状態になれば障害年金が受け取れますし、サラリーマンであればそこまでいかなくても1年6ヶ月間は給与の約2/3にあたる傷病手当金を受け取ることができます。しかし、本来の収入と比べれば少ない金額です。

また、自営業・フリーランスの場合、傷病手当金のような制度もありません。

したがって、治療が長期にわたり、その間働けなくなった場合には、公的保険の保障だけでは足りなくなるリスクがあります。

2-2.差額ベッド代や交通費等は公的医療保険でカバーされない

病院で治療を続ける場合に、その際にかかる費用の全てを公的保険で保障してもらえるわけではありません。

以下の費用は公的保険の対象外です。

差額ベッド代

入院する際に収容人数が5人未満の小部屋・個室を自ら選ぶ場合は、差額ベッド代が公的保険の対象外となります。

差額ベッド代の額は病院によっても差がありますが、厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況(2018年11月)」によれば、平成29年7月1日時点での差額ベッド代の平均額は6,188円/日とあります。

入院期間が延びれば、この費用も大きな負担になっていきます。

なお、治療上の必要がある場合や、大部屋が空いておらず小部屋・個室に入る場合など、患者や家族の希望によらない場合は、差額ベッド代の支払いは拒否できることになっています。

病院での食事代等の日常生活費

病院での食事代や衣服代、テレビの視聴料金(テレビカード代)など、病院内での日常生活費は全て自己負担となります。

こちらも短い入院であればそれほど大きな負担にはならないかもしれませんが、長期入院となれば、その負担も大きくなっていきます。

病院までの交通費

たとえば、入院した場合に家族が身の回りの世話のために病院に通う場合は、交通費もかかります。

特に、病院への公共交通機関がなくタクシー等を利用せざるをえないような場合は、その費用が大きくなってしまいます。

先進医療の技術料、自由診療の費用

治療方法の中には公的な医療保険でカバーされないものもあります。

「先進医療」と「自由診療」です。

まず、先進医療は、国からその治療効果を認められているものの、公的医療保険の対象となっていないものです。

先進医療の中には、費用が数十万円~数百万円と高額になるものがあります。

次に、自由診療は、厚生労働省が承認していない治療・薬を使うものです。

たとえば、海外で実績をあげているものの、日本では未承認の抗がん剤を使った治療も自由診療となり、その費用負担は大きくなります。

3.公的保険でカバーされない費用は貯金や民間保険を利用

では、このような公的医療保険の対象外となっている費用はどのように準備すれば良いでしょうか。

まず、貯金を切り崩す方法があります。しかし、長期的な治療が必要となり、かつ働くことができなくなった場合には、お金が足りなくなるリスクがあります。

そこで検討する余地がある選択肢が、医療保険等の民間の保険です。

次に、民間の医療保険のしくみを説明します。

4.民間の医療保険のしくみ

民間の医療保険は、主に以下3つの保障で構成されています。

  • 入院費用の保障(入院日額●円)
  • 手術費用の保障(手術1回●円)
  • その他の特約(がんと診断された際の一時金など)

メインとなるのが入院費用と手術費用の保障で、その他に特約を選んで付けるしくみです。

この中で特に保険会社・保険商品ごとに大きな差が出るのが、特約の部分です。

4-1.民間の医療保険の選び方

以上を前提に、民間の医療保険はどのように選べば良いのか、解説します。

4-1-1.入院・手術の保障だけでは不十分

民間の医療保険の主な保障は、「入院日額●円」という入院給付金と、「手術1回●円」という手術給付金です。

しかし、これらの保障は現在の医療事情に必ずしも適しているとは言えません。なぜなら、現在は入院期間が短くなる傾向にあるからです。

厚生労働省「2017年 患者調査(退院患者の平均在院日数等(P.14))」によれば、以下の通り、入院期間は年々短期化しています。

【退院患者の平均在院日数】

  • 平成2年:44.9日
  • 平成5年:41.9日
  • 平成8年:40.8日
  • 平成11年:39.3日
  • 平成14年:37.9日
  • 平成17年:37.5日
  • 平成20年:35.6日
  • 平成23年:32.8日
  • 平成26年:31.9日
  • 平成29年:29.3日

その理由として、医療技術が進歩していることと、国が長期入院より在宅・通院での治療を推奨していることが挙げられます。

たとえば、がんになった場合、日帰りの入院で手術を受け、その後は在宅での抗がん剤治療が長期間続くケースも珍しくはありません。

4-1-2.特約で通院での長期治療など、より現実に即したリスクに備えるべき

医療保険を検討する際には、昨今の医療事情を踏まえたプランをおすすめします。

特に、日本人の死因として多く治療期間も長期化しやすい三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)の保障を充実させることが重要です。

さらに、治療が長期にわたり働けなくて収入が得られない期間が続くリスクも無視できません。

したがって、これらに関する特約が充実しているものをおすすめします。

次に、おすすめできるプランの例を紹介します。

4-1-3.現在の医療事情に即した医療保険の例

契約例1|40歳男性でがん、介護・認知症の保障を充実させたプラン
  • 入院給付金:3,000円/日(10日目までは一律3万円)
  • 手術給付金:3万円(入院中)、1.5万円(外来)
  • 先進医療特約:あり
  • がん診断一時金:100万円(1年に1回限度、2回目以降は入院が条件)
  • 終身介護保障特約:終身年金36万円、認知症介護一時金100万円
  • 保険料:5,690円/月

このプランは、入院給付金を3,000円/日、手術給付金を3万円(入院中)・1.5万円(外来)と低く抑えているかわりに、特約を充実させています。

たとえば、がん診断給付金を100万円付けています。これは、初めてがんと診断された際に一括で100万円の一時金が受け取れる特約です。

一時金の使い道は自由なので、通院時の治療代の他、差額ベッド代、働けない間の収入代わりなどとしても活用できます。2回目以降は、がんの治療のための入院を条件として、年1回まで受け取れます。

また、介護状態になった場合の特約を付けています。終身介護保障特約は、要介護2と認定された場合に年36万円を一生涯受け取れます。さらに、その状態で認知症と診断されれば100万円を受け取れます。

内閣府の「令和元年版高齢社会白書」によれば、生活の介助が必要となる要介護者は、65歳~74歳までは2.9%なのに対し、75歳では5人に1人以上の23.3%に上昇するとのことです。

少子高齢化が続く昨今では、自分が要介護状態となり家族に経済的負担を背負わせてしまうリスクも無視できません。それに備えられる特約と言えます。

その他、先進医療特約も付けているため、高額な先進医療を受ける際にも自己負担は発生しません。

先進医療特約は月数十円~100円程度の安価な保険料で付与できるため、必ず付けることをおすすめします。

・契約例2|30歳女性で女性特有の病気の保障、がん・三大疾病、介護の保障を充実させたプラン
  • 入院給付金①(通常の病気・ケガ):3,000円/日(10日目までは一律3万円)
  • 入院給付金②(女性特有の病気):6,000円/日(10日目までは一律6万円)
  • 手術給付金①(通常の病気・ケガ):3万円(入院中)、1.5万円(外来)
  • 手術給付金②(女性特有の病気):6万円(入院中)、3万円(外来)※一部9万円の場合あり
  • 先進医療特約:あり
  • がん診断一時金:100万円
  • 三大疾病入院一時金:60万円
  • 保険料:3,720円/月

入院・手術の保障は基本的に「契約例1」と同じですが、女性特有の病気での入院の際には3,000円/日が追加され、女性特有の手術では9万円が支給されることになっています。

女性特有の病気とは、乳がんや子宮がん、子宮筋腫、早流産、帝王切開などです。

また、契約例1と同じがんの一時金の特約を付けている他、三大疾病によって入院した場合の一時金もつけています。長期化しやすい三大疾病での入院の際に、差額ベッド代等の費用をカバーするものとして期待できます。もちろん一時金なので使い道は自由です。

【参考】働けない間の収入減をカバーする保険も検討したい

医療保険ではありませんが、重い病気になって長期的に働けなくなった場合に備えて、収入の一部を保障する就業不能保険所得補償保険への加入も選択肢として考えられます。

これらの保険はいずれも、働けなくなった場合に「毎月●万円」といったお金を受け取ることができます。また、所定の条件をみたせば在宅での療養の場合もカバーされるので、むしろ、こちらの方が医療保険よりも優先順位が高いかもしれません。

両者の違いは、カバーする「働けなくなった場合」のレベルです。

  • 就業不能保険:仕事への復帰自体が困難な状態が長期間継続する場合
  • 所得補償保険:ドクターストップがかかって一時的に働けなくなった場合

このうち、サラリーマンの場合は傷病手当金の制度があるので、就業不能保険のみに加入しておけばよいケースが多いと考えられます。

これに対し、自営業・フリーランスの場合は、傷病手当金のような制度がないため、就業不能保険と所得補償保険の両方の加入をおすすめします。

まとめ

民間の医療保険は、公的な医療保険でカバーされない分を補うようにして選ぶべきです。

公的医療保険は、「医療費3割負担」「高額療養費制度」といった手厚い保障があり、かなりの部分をそれでカバーしてもらえます。

医療保険は、あくまでもそれらで保障しきれない部分をカバーするものと考えましょう。

また、入院期間が短くなっている昨今では、「入院日額●円」「手術1回●円」といった医療保険のメインの保障内容の優先順位は低くなってきています。

通院・在宅での治療期間が長期化しがちな「がん治療」に対する保障など、より時代に合った保障を充実させることをおすすめします。

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