自損事故で自動車保険の補償を受けられる条件


自損事故とは、自動車事故の中で、自分の落ち度が100%の事故を指します。
自動車保険では、仮に相手がいても、相手に一切落ち度がなければ、自損事故とされるのです。
自損事故を起こしてしまった場合、自動車保険でどんな補償を受けられるのか、等級が落ちるのか、気になるところです。
そこで今回は、自損事故で気になることをまとめて解説します。
1.自損事故とは?
相手の有無にかかわらず、自分に100%の落ち度がある事故のことを、自損事故といいます。
ハンドル操作を誤ってガードレールや電柱にぶつかってしまった場合はもちろんのこと、信号待ちで停車中の自動車へ後ろから追突してしまった場合のように、相手に一切の落ち度がない自動車事故も自損事故に含まれます。
2.自損事故で使える保険の種類
自損事故は自動車保険でどのように補償してもらえるのか、お伝えします。
一口に「自動車保険」といっても様々な保険によって構成されており、それぞれ補償内容が異なります。
そこで、自損事故の種類ごとに、使える保険の種類を紹介します。
自損事故の種類と、それを補償してくれる保険の一覧は、以下の通りです。
| 対人賠償保険 | 人身傷害保険 | 搭乗者傷害保 | 対物賠償保険 | 車両保険 | 自損事故保険 | 自賠責保険 | |
| 自分自身が死傷した場合 | × | ○ | ○ | × | × | ○ | × |
| 自分以外の搭乗者が死傷した場合 | △
※家族は対象外 |
○ | ○ | × | × | ○ | ○ |
| 自分の自動車に傷につけた場合 | × | × | × | × | ○ | × | × |
| 他人の物を壊した場合 | × | × | × | ○ | × | × | × |
| 自分の車庫を壊した場合(※) | × | × | × | × | × | × | × |
※後述する「自宅・車庫等修理費用補償特約」で補償されます。
以下、それぞれの保険について1つずつ簡単に解説します。
2-1.アカの他人に損害を与えた場合
2-2-1.対人賠償保険
対人賠償責任保険は、自分と家族以外の他人を死傷させた場合の賠償金等を補償する保険です。
自動車保険に入る時は、必ず対人賠償保険に加入することになります。
事故の相手方はもちろん、家族以外の同乗者を死傷させてしまった場合も、基本的には対人賠償責任保険の対象です。
人を死傷させてしまった場合の賠償金の額は高額になるため、保険金額(保険金の上限額)は無制限に設定されています。
自分自身と家族が死傷した場合は、対人賠償責任保険の対象外なので、後でお伝えする人身傷害保険の対象となるのです。
2-1-2.対物賠償保険
自動車保険で相手のモノを壊してしまった場合に、その賠償金を補償するための保険です。
相手の自動車はもちろんのこと、ガードレールや電柱などにぶつかってしまって破損させてしまった場合にも、補償が行われます。
一方で、あくまで他人の物に対する補償なので、自分の物が壊れた場合の補償は行われません。
2-2.自分と家族に損害を与えた場合
2-2-1.人身傷害保険
人身傷害保険は、自分自身と同乗者が死傷した場合に保険金を受け取れるものです。
治療費をはじめ精神的損害、葬祭費、さらに仕事ができずに収入を得られなかったことによる休業損害(亡くなった場合は「逸失利益」)まで、事故によって発生した損害の全額が、あらかじめ定められた保険金額を上限として支払われます。
なお、人身傷害保険は、自損事故だけでなく、相手方のいる事故でも使えます。それは、相手だけでなく自分の側にも落ち度(過失)がある場合です。自分が交通事故でケガをして相手に損害賠償を請求する場合、相手の過失がある分(過失割合)しか請求できません。そこで、自分の過失割合の分を、人身傷害保険でカバーするのです。
人身傷害保険の詳細については「人身傷害保険とは?補償内容と必要性と保険金額の決め方」をご覧ください。
2-2-2.搭乗者傷害保険
人身傷害保険と同様に、自分と同乗者が死傷してしまった場合に補償を受けられる保険です。
人身傷害保険と違う点は以下の3つです。
- 補償の対象となる損害が限られている
- 損害の程度を問わず受け取れる金額が決まっている
- 損害額が確定しなくても保険金を受け取れる
死亡した場合、後遺障害が残った場合、入院・通院した場合に、以下のように、それぞれ決まった金額の保険金を受け取れます。
- 入院・通院:4日以内1万円、5日以上10万円~100万円
- 死亡・後遺障害:500万円
ただし、この搭乗者傷害保険を追加する必要性は低いです。なぜなら、人身傷害保険の方が補償範囲が広いのに加え、多くの場合、別に医療保険や傷害保険等に加入していることが多く、それらでカバーできるからです。
両者の違いについては詳しくは「搭乗者傷害保険とはどんな保険?人身傷害保険との違いは?」をご覧ください。
2-2-3.自損事故保険
自損事故で自分や同乗者が死傷した際に、補償を行う保険です。人身傷害保険
亡くなった場合、後遺障害が残った場合などに、以下のように決まった金額の補償を行います。
<自損事故保険の補償例>
- 自分や同乗者が死傷した場合:1,500万円
- 後遺障害が残った場合:500万円~2,000万円※後遺症の程度による
- 入院した場合:6,000円/日
- 通院した場合:4,000円/日
基本的には人身傷害保険と補償範囲がかぶっており、かつ保険金額も限られているので、人身傷害保険に加入していれば必要ないことが多いです。
しかし、かなり限定的な場合ですが、自損事故保険でないと補償されないケースもありえます。
たとえば、実際にあった事故なのですが、自動車を降りて前方にあるバイクに乗り換えて発車しようとしたら、自動車のサイドブレーキをかけ忘れており、自動車とバイクが衝突してケガをしてしまったケースです。この場合、人身傷害保険の対象とならず、自損事故保険でしか補償されません。
2-2-4.車両保険
交通事故の際に、自分の自動車が受けた損害を補償する保険です。
自損事故の場合も、補償を受けることができます。
ただし、車両保険には以下の表に示すように一般型・エコノミー型の2種類があり、保険料を節約する目的でエコノミー型を選択していた場合は、単独での事故の補償は行われないので注意してください。
| 補償する損害の種類 | 一般型 | エコノミー型 |
| 他の自動車やバイクと衝突・接触して生じた損害 | ○ | ○ |
| 自転車と衝突・接触して生じた損害 | ○ | × |
| 単独での事故により生じた損害(電柱や建物などへの衝突) | ○ | × |
| 当て逃げされたことによる損害(相手のわからない損害) | ○ | × |
| 転覆・墜落により生じた損害(山道を走行中に崖から転落するなど) | ○ | × |
| 火災・ガス爆発・台風・洪水・高潮などによる損害 | ○ | ○ |
| 盗難・いたずら・落書きなどによる損害 | ○ | ○ |
| 飛来物などによる損害(飛び石が車体に衝突して生じた損害など) | ○ | ○ |
ご覧のように、一般型では自損事故のほか、当て逃げや自転車との事故なども補償されます。
一方でエコノミー型では、これらが補償されない代わりに保険料が安くなるわけです。
ご自身が加入されている自動車保険がどちらにあてはまるか分からない場合は、保険証券などで確認してみてください。
2-2-5.自宅・車庫等修理費用補償特約
これは、一部の損害保険会社が設けている補償内容です。
自宅や車庫などに自動車をぶつけて修理が必要となった場合に、その損害を補償する保険です。駐車の失敗のリスクがよほど高くない限り、必要性はそれほど高くありません。
3.単独事故でも、警察への届け出が必要
自損事故のうち、単独事故については、注意していただきたいことがあります。基本的に警察への届出が必要だということです。
たとえ、ちょっとガードレールに擦って自分の自動車が傷ついただけだったとしても、です。
なぜなら、電柱・ガードレールに損害があれば、それらを賠償する必要があるからです。
そういう場合、警察への届け出をしないと、「交通事故証明書」が発行されないので、自動車保険を使うことができません。
交通事故証明書とは、交通事故が発生したことを公的に証明する書類です。
証明書の取得自体は保険会社が代理で行ってくれますが、あらかじめ警察に事故の届け出をしておかないと発行されません。
4.自損事故でも等級が落ちる場合と落ちない場合がある
自動車保険では、交通事故を起こし保険を使うことによって等級が落ち翌年度から保険料がアップします。
逆に無事故で自動車保険を使わず過ごせば、等級が上がって翌年度から保険料が下がります。
そのため、自損事故で等級がどの程度落ちるのか、気になるところです。
4-1.そもそも自動車事故の等級ごとの割引率はどのくらい?
一例として、A損保では等級によって、以下のように保険料の割引率が大きく異なります。
自動車保険に初めて加入した場合は6等級から開始となり、交通事故を起こさなければ翌年度から1等級ずつアップします。
| 等級 | 無事故 | 事故有 |
| 20 | 63%割引 | 44%割引 |
| 19 | 55%割引 | 42%割引 |
| 18 | 54%割引 | 40%割引 |
| 17 | 53%割引 | 38%割引 |
| 16 | 52%割引 | 36%割引 |
| 15 | 51%割引 | 33%割引 |
| 14 | 50%割引 | 31%割引 |
| 13 | 49%割引 | 29%割引 |
| 12 | 48%割引 | 27%割引 |
| 11 | 47%割引 | 25%割引 |
| 10 | 45%割引 | 23%割引 |
| 9 | 43%割引 | 22%割引 |
| 8 | 40%割引 | 21%割引 |
| 7 | 30%割引 | 20%割引 |
| 6 | 19%割引 | 19%割引 |
| 5 | 13%割引 | 13%割引 |
| 4 | 2%割引 | 2%割引 |
| 3 | 12%割増 | 12%割増 |
| 2 | 28%割増 | 28%割増 |
| 1 | 64%割増 | 64%割増 |
一度交通事故を起こすと、後でお伝えするように、数年間は「事故有」の等級が適用されることになります。
ご覧の通り、等級によって大きく割引率が異なります。いかに等級を落とさないかが重要なのです。
4-2.自損事故でどんなときに等級が落ちるか
それでは、自損事故で等級は落ちるのでしょうか。
まず、結論から言うと、一概に自損事故と言っても等級が落ちる場合と落ちない場合があります。
具体的には、等級が落ちる事故としては、以下があげられます。
| 交通事故の種類 | 内容 | 翌年度に落ちる等級数 |
| 3等級ダウン事故 | 以下に該当する交通事故を起こし、保険金を受け取った場合
|
1回の事故につき3等級落ちる |
| 1等級ダウン事故 | 以下に該当するケースで、保険金を受け取った場合
|
1回の事故につき1等級落ちる |
| ノーカウント事故 | 交通事故を起こし、自分や家族が怪我をしたものの、他人に損害を与えたり乗っていた自動車が傷ついたりはしなかった場合など | 等級はさがらない(翌年度は1等級あがる) |
ご覧のように、交通事故によって他人に損害を与えた場合、自分の物を壊した場合、盗難・落書きなどで自分の自動車が被害を受けた場合、自動車保険を使うと等級が落ちます。
自損事故に関連する保険では、車両保険・対人賠償責任保険・対物賠償保険を使うと、等級が落ちます。
たとえば、駐車中の相手の自動車にぶつけて修理費用を賠償する費用が生じ、対物賠償保険を使うことになると、3等級ダウン事故と判定されます。
また、3等級ダウン事故を1回起こすと3年間、1等級ダウン事故を1回起こすと1年間、「事故有」と判定され、割引率が下がります。
一方、自損事故でも、人身傷害保険や搭乗者傷害保険を使った場合は、等級が落ちることはありません。
なお、自動車保険の等級に関しては詳しくは「自動車保険の等級で知っておきたいことまとめ」をご覧ください。
4-3.自損事故で自動車保険を使わない方がお得な場合も
以上のように、車両保険・対人賠償責任保険・対物賠償保険を利用すると、等級が落ちて翌年度からの保険料がアップしてしまいます。
特に、3等級ダウン事故を起こしてしまうと、保険料が大きく値上がりしてしまいます。
そのため、もし自損事故を起こしてしまったとしても、修理代や賠償金等の費用が高額でない場合は、保険を使わない方が良いこともありえます。
保険会社や代理店の担当者に相談して、保険を使った後の保険料の値上げ幅を算出してもらい、それと修理代金と比べてみることをおすすめします。
まとめ
自損事故とは、相手の有無を問わず、自分に100%の責任がある事故をさします。
自分や家族以外の他人に損害を与えてしまった場合については対人賠償責任保険、対物賠償責任保険でカバーされます。
自分や家族の損害については、死傷した場合は人身傷害保険等でカバーされます。なお、搭乗者傷害保険、自損事故保険もありますが、人身傷害保険に加入していれば必要性はそれほど大きくありません。
また、自分の自動車が壊れた場合は車両保険の対象です。
車両保険・対人賠償責任保険・対物賠償保険を使うと、等級がダウンしてしまいます。これに対し、人身傷害保険等を使った場合は、等級に変化はありません。




