土木工事保険とは?意外に知らない補償内容と使い分け方法

公開 2017年3月9日更新 2021年5月20日
土木工事保険とは?意外に知らない補償内容と使い分け方法
土木工事保険とは?意外に知らない補償内容と使い分け方法

土木工事を行う事業者の方は、必ず土木工事保険に加入することと思います。しかし、補償内容についてあまり理解させていらっしゃらないのではないでしょうか。

土木工事保険は、土木工事の最中に、自然災害や不測の事故、施工ミス等により、工事の対象物や資材などの「モノ」に発生した損害をカバーする保険です。

工事の目的物や工事用資材等の損害を幅広くカバーするものですが、工事に関係する全ての損害をカバーしきれるわけではありません。たとえば、工事中に作業員の方が怪我を負った場合等はカバーされません。

したがって、土木工事保険は補償内容をしっかり理解した上で加入していただく必要があります。そして、その上で必要に応じて別途、他の保険をプラスする必要があります。

この記事では、土木工事保険がどんなものかという補償内容に関することと、他の保険との役割分担等、土木工事保険に加入する前にかならず知っておきたい最低限の知識について、分かりやすくお伝えします。

1. 土木工事保険の対象となる工事・モノ

1.1. 対象となる工事

土木工事保険は、土木工事現場で起こった事故で、工事中の施設や工事用の設備等に発生した損害をカバーする保険です。

土木工事保険の対象は、ありとあらゆる土木工事です。大きく分けると以下のようになります。

  • 土地の造成工事
  • 交通機関の敷設等:道路、橋、鉄道、地下鉄、トンネル
  • 土地に密着した建物以外の施設の工事:(例)駐車場、地下街
  • ライフラインの設置工事:(例)水道管の埋設
  • 河川・ダム・港湾等の整備工事

ただし、注意が必要なのは、土木工事保険の対象は土木工事がメインの場合だけです。建物の建設がメインの場合は土木工事保険ではなく建設工事保険の対象となります。たとえば、駐車場工事をする場合でも、その駐車場がこれから建設する店舗等の建物の利用者のためのものであれば、建設工事保険の対象となります。

建設工事保険については、『建設工事保険とは?カバーする範囲に関する基礎知識』をご覧ください。

1.2. 対象となるモノ

土木工事の対象となるモノは以下の通りです。

  • 工事の対象となっている施設・モノ
  • 仮工事の対象
  • 現場事務所・宿舎等のプレハブ建物とその内部の備品
  • 工事用資材・仮設材

このように、土木工事の目的となっているモノと工事用に建てたモノ・持ち込んだ備品が対象となります。

一方、以下のモノは対象とならないので注意が必要です。

  • 工事用機械
  • 自動車等の車両
  • 工事事務所内にある現金等

なぜならば、工事用機械は機械保険の対象、自動車等の車両は自動車保険の対象だからです。現金等については、土木工事事務所にまとまった額の現金等を置いておくことは常識的には想定されていないので、対象外です。

2. 損害の原因となる事故は「予測できない」「偶然の」もの

土木工事保険の対象となる損害は、「不測かつ突発的な」事故です。つまり予測できず、偶然発生してしまうものです。

以下の表をご覧ください。地震以外の自然災害、施工ミスまで幅広くカバーされます。

土木工事の対象事故

3. 対象となる損害の額と、実際に支払われる保険金の額

土木工事保険は、対象となる損害の額と、実際に支払われる保険金の額が微妙に違います。必ずしもイコールではありません。

まず、どこまでの額が対象となるかを確定します。そして次に、そのうち、予め加入時に限度額を決め、その範囲内で保険金を受け取れます。

3.1. 土木工事の対象となる損害の額

土木工事の対象となる損害の額は、損害が発生した状態から元の状態に戻すのにかかった費用です。それ以外は基本的には含まれません。

したがって、元々の状態よりも価値の高いモノを作った場合の価値増加分や、損害防止・軽減にかかった費用はカバーされません。ご注意ください。

3.2. カバーされる額の限度|「支払限度額」を設定すると保険料が安くなる

土木工事保険の保険金の額には限度があり、次の2種類です。

  • 保険金額
  • 支払限度額

簡単に言うと、「保険金額」は請負金額全額を限度とするもの、支払限度額は、そのうち一部を限度とするものです。

まず「保険金額」は、基本的には請け負った工事の代金の額(請負金額)です。ただし、注文者から材料が支給されている場合はその分の金額は差し引かれます。

次に、「支払限度額」は、保険金額のうち、「ここまでの金額をカバーしますよ」という限度額を決めておくものです。

なぜこんなしくみがあるかというと、実際には、土木工事中に請負金額全額にわたってしまうような損害が発生することはきわめて稀でしょう。また、「全部を補償してもらわなくても大丈夫だから保険料を安くしてほしい」というニーズもあります。そのため、このような「支払限度額」を決められるようになっているのです。

「支払限度額」を設定するメリットは、保険料が安くなり経費の節約につながるということです。実際に土木工事保険に加入される業者様は、多くの場合、この「支払限度額」を設定しています。

3.3. 自己負担の額がある

また、「免責」と言って、「●万円」等の一定額までの軽い損害については自己負担にしておくことが多くなっています。この場合は、損害額が免責金額以下だと保険金が支払われません。

4. 土木工事保険がカバーする期間

土木工事保険がカバーする期間は、基本的には1つの工事の期間中、着工から引き渡しまでの間です。しかし、1年間に請け負う全ての工事を包括して補償する「年間包括契約」もあります。

年間包括契約の場合、保険会社によっては、過去に事故がないと保険料が割引してもらえることもあります。

5. 従業員の怪我や他人に損害を与えた場合は別の保険でカバーする

「1.土木工事保険の対象となる工事・モノ」でお伝えしたように、土木工事保険は、あくまでも工事中の施設や工事用の設備等に発生した損害をカバーする保険です。したがって、従業員が作業中に怪我をした場合や、通行人等の他人に怪我をさせてしまった場合については、別の保険の対象となります。以下、それぞれについてお伝えします。

5.1. 作業員の怪我については労災保険・労働災害総合保険等の対象

まず、作業員が怪我した場合については、国の制度である労災保険でカバーされます。ただし、これはあくまで最低限の補償ですので、会社で独自に上乗せの補償として別途「労働災害総合保険」等に加入しておくことが有効です。

5.2. 損害賠償責任のリスクには「請負業者賠償責任保険」等をプラスする

土木工事保険は、工事によって他の人に怪我を負わせたり、他人のモノを壊したり傷つけたりして損害賠償責任を負うことになった場合はカバーしていません。

しかし、土木工事は危険を伴うので、それに備えて、必ず「請負業者賠償責任保険」に加入していただきたいと思います。請負業者賠償責任保険については詳しくは『請負業者賠償責任保険とは?必ず知っておきたい基礎知識』をご覧ください。

まとめ

土木工事保険に関して、基本的な補償内容と、他の保険との役割分担について説明してきました。

土木工事保険は工事中の施設や工事用の設備等に発生した損害を幅広くカバーする保険です。ただし、実際の損害の額と、支払われる保険金の額は必ずしもイコールではありませんので注意が必要です。

また、作業員の怪我や、他者の身体・生命や財産に損害を与えてしまった場合はカバーしていませんので、別途、労働災害総合保険や請負業者損害賠償責任保険等でカバーする必要があります。

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