民泊やAirbnbなど、少額で始められる宿泊業の体系が生まれたことで、旅館業法に該当する事業の間口が年々広がってきています。
しかし、旅館業では特に、第三者を建物に宿泊させるという業態の性質上、他業種と比べて賠償責任が発生しやすい事業であることも事実です。
旅館業を営む上で、賠償責任が発生するようなトラブルの対策をすることは必要不可欠なこととなっています。
そこで今回は、旅館業の必要な保険について紹介していきます。
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私たちは、お客様のお金の問題を解決し、将来の安心を確保する方法を追求する集団です。メンバーは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持っており、いずれも現場を3年以上経験している者のみで運営しています。
1.旅館業で起こりうるトラブルに対応した保険
旅館業は不特定多数の第三者を1つの建物内で関わることになる関係上、賠償責任が発生するようなトラブルが発生しやすい業種です。
まずは、旅館業で発生しやすいトラブルとそれに備えることができる保険について紹介していきます。
1.1.提供物に関するトラブルにはPL保険
旅館業では、業務として宿泊客への食事の提供や衣服の貸与などを行うことになります。
もし、提供した食事で宿泊客が食中毒になったり、貸与したものが原因で宿泊客がケガをしてしまったりした場合、損害賠償責任が発生するのです。
それらのリスクにはPL保険(生産物賠償責任保険)で備えることができます。
PL保険は、提供物やサービスが原因で発生したトラブルで賠償責任が発生した場合、損害賠償金を補償してくれる保険です。
旅館業では提供するモノやサービスが原因のトラブルが起こる可能性が高いため、入っておくべき保険です。
詳しくは「PL保険とは?基本の補償内容と組み方のポイント」をご覧ください。
1.2.施設の欠陥に備えられる施設賠償責任保険
旅館業では、施設の欠陥や不備などによって発生するトラブルにも目を向ける必要があります。
例えば、建物の老朽化が原因で床が抜けて宿泊客がケガをしてしまった場合や、棚が破損してものが落ちて宿泊客の所有物を破損させてしまった場合などが考えられます。
このような建物や備品の欠陥によっても、賠償責任が発生するトラブルが発生する可能性はあります。
旅館業に従事するのであれば、人為的なトラブルだけでなく、施設によるトラブルにも備えなければならないのです。
そのような施設に関連するトラブルについては施設賠償責任保険で対応することができます。
施設賠償責任保険は、施設の欠陥等によって顧客にケガをさせてしまったり、顧客の所有物に損害を与えてしまったりした際に、損害賠償金を補償してくれる保険です。
第三者が多数出入りする旅館業では、いくら経営側が注意していても、施設の欠陥によるトラブルを完全に防ぐことは困難となります。
安心して旅館業を経営するためにも、施設賠償責任保険は必要不可欠な保険と言えます。
詳しくは「施設賠償責任保険とは?意外に知らない補償内容と必要性」をご覧ください。
2.旅館賠償責任保険ならトラブルに包括的に備えることが可能
旅館賠償責任保険は、旅館業における賠償責任が発生するトラブルに特化した保険で、PL保険、施設賠償責任保険に加え、受託者賠償責任保険の補償内容もセットになった補償内容となっています。
特に受託者賠償責任保険と同じ補償を受けられるのが最大のポイントです。
受託者賠償責任保険は、顧客から預かったモノが紛失したり、破損・汚損したり、盗難されたりした場合に発生する損害賠償責任をカバーしてくれる保険です。
旅館業では、宿泊客の荷物などを預かる機会も多いため、是非とも加入しておきたい保険なのですが、旅館業は補償の対象外となっており、加入することができません。
旅館賠償責任保険に入っておけば、そんな受託物賠償責任保険とほぼ同様の補償を受けることが可能です。
PL保険や施設賠償責任保険など、重要な保険もパッケージングされているため、旅館賠償責任保険に加入することで、旅館業で発生する可能性のある賠償責任が発生するトラブルにはおおむね対応することができます。
旅館業における賠償責任トラブルの対応策として、加入を検討することをおすすめします。
3.旅館の評判を守れる旅館宿泊者賠償責任保険
旅館業をしていると発生する可能性があるのが、「宿泊客が引き起こした賠償責任のあるトラブル」です。
具体的には以下のようなものがあります。
- 宿泊客が階段で別の宿泊客にぶつかってしまい、相手をケガさせてしまった
- 宿泊客の子どもが障子に穴を開けてしまった
- 宿泊客がレストランで飲み物をこぼしてしまい、別の宿泊客の服を汚してしまった
これらのトラブルは正直なところ、旅館側には関係のない、宿泊客が引き起こしたトラブルです。
合理的に見ると、トラブルを起こした宿泊客が、その人の自動車保険や火災保険に付いている個人賠償責任特約などを活用して損害賠償金を支払うべきものです。しかし、世の中とは世知辛いもので、ここで旅館側が何もしないと、トラブルを引き起こした宿泊客の口コミによって、旅館の評判が落ちてしまったりすることがあります。
旅館宿泊者賠償責任保険は、簡単に言うと旅館にいる人全員を補償してくれる保険です。
宿泊客が引き起こしたトラブルの損害賠償も補償してくれます。つまり、宿泊客に損害賠償金を払わせずに済むのです。
宿泊客側からすると、もしもの時に旅館が守ってくれるわけで、実際にトラブルを起こしてしまった宿泊客や被害にあった宿泊客に対して安心感を与えることができます。
結果として、信頼できる旅館として評価されることになる可能性があるということです。
また、宿泊客に損害賠償金を支払わせないことで、トラブルを長引かせることなく、短期で解決することができます。
4.民泊向けに作られた保険もある
一般的な賃貸物件を宿泊施設として人に貸し出す「民泊」には、一般的な旅館業にはないリスクがあります。
それは、一般的な火災保険が適用されない可能性があるというものです。
民泊として利用する目的で借りた賃貸物件の場合、民泊の宿泊客が引き起こした火災などに対しては一般的な火災保険(借家人賠償責任保険)が適用されない可能性があります。
これは、あくまで賃貸物件の借主であるオーナーが補償の対象者であり、宿泊客については補償の対象外であるからです。
なので、もし民泊として貸し出している物件が集合住宅の1部屋で、宿泊客が火災を発生させてしまった場合、借家人賠償責任保険が適用されず、原状回復のための費用を全額、民泊のオーナーが負担することになってしまいます。
そこで作られたのが民泊保険です。
民泊保険では、最低限度の火災保険としての補償の他、宿泊客が引き起こした火災や爆発などについての借家人賠償責任特約や、宿泊客が民泊内でケガをしたり、宿泊者の所有物を損壊したりした場合の賠償責任に備えられる賠償責任補償特約など、民泊の運営上で発生する可能性があるトラブルに対して備えることができる補償が用意されています。
民泊の運営を考えている人は、トラブルに備えるためにも、加入を検討してみると良いでしょう。
まとめ
旅館業では、第三者と接触する機会が多い分、賠償責任が発生するようなトラブルが発生することが多々あります。
そのようなトラブルに備え、賠償責任保険に加入することは必須であると言えます。
また、民泊では一般的な火災保険では対応できない問題が発生することがあります。そんな事態に備え、近年では民泊保険というものも誕生しています。
旅館業をはじめ、サービス業では信頼が命です。トラブルを最小限の損失で、スムーズに解決できるよう、保険でしっかりと備えておくことをおすすめします。